東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2017年03月25日 | Weblog

 詩人・高階杞一(たかしなきいち)さんに、「春のスイッチ」という詩がある。<春になったら/花が/いっせいにひらく/どこかで/誰かが ポンと/スイッチを入れたみたいに/ぼくにも/こんなスイッチ あるのかなあ>▼どうも鳥には、そんなスイッチがあるらしい。春、つまり恋の季節の訪れは、日照時間が長くなることで分かる。「光の変化を感じ取るのは、目」と思っていたが、鳥たちは、脳の中に「第二の目」を持っているというのだ▼名古屋大学の吉村崇(たかし)教授の研究によると、鳥の脳の奥にあって食や睡眠を司(つかさど)る視床下部に、「オプシン5」という光に反応するタンパク質がある。これが日が長くなったことを感じ取ると、「恋のホルモン」の分泌が始まる。そうすれば、ウグイスならホーホケキョと鳴き始めるというから、まさに「春のスイッチ」ではないか▼オプシン5は、人間の目では見ることができない紫外線を、よく感知するそうだ。このタンパク質は、我々の目の中にもあるそうだから、目には見えない春の訪れを、きちんと感じ取れる「春のスイッチ」が、私たちにもあるのだろうか▼高階さんの詩は、こう結ばれている。<長い冬が過ぎ/いっせいに/ぼくのひらくような日が/いつか/ぼくにも/くるのかなあ>▼うつむかず、青空に向かって目を閉じれば、春のスイッチがそっと入る音が聞こえるかもしれない。


今日の筆洗

2017年03月24日 | Weblog

 ファーストレディーとは、どれほど重い立場か。ニクソン米大統領のパット夫人は「ファーストレディーとは、世界で最もきつい、無給の仕事です」と語った▼フランクリン・ルーズベルト大統領のエレノア夫人は「私自身の外側に、大統領夫人という別の誰かがいる感覚、“私”というものをどこかに失ってしまったような感覚を、ホワイトハウスを去る時まで覚え続けました」と打ち明けたという。「私」を抑えて「公」の立場に徹する。ファーストレディーとは、それほど厳しく自らを律せねばならぬ立場なのだろう▼今、わが国で問われているのは、首相夫人の公と私である。政府は先週「(首相夫人は)公人ではなく私人であると認識している」という閣議決定をした▼だが本当に「私人」なのか。きのう国会であった森友学園理事長の証人喚問で浮かび上がったのは、そんな疑問である▼理事長らが、国有地の利用について首相夫人付きの官僚に聞くと、財務省に問い合わせ、夫人にも説明した上で、丁寧に回答していた。国有地問題とは関係のない夫人付き官僚がなぜかお門違いの申し入れに応対し、「公」の話を「私人」であるはずの夫人に報告した。これはどういうことか▼あいまいな「私」に搦(から)め捕られ、「公」というものがどこかに失われてしまっていたのではないか。今、覚えるのは、そういう感覚である。