東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2017年03月02日 | Weblog

 昆虫記で名高いアンリ・ファーブルが学校教諭を辞めて、昆虫の研究に専念したのは四十八歳の時だそうだ。貧しい生活の中で研究を続け、昆虫記の第一巻を出したのが一八七九年。ファーブルは五十六歳である▼五十前後といえば、定年退職や老後もそろそろ視野に入ってくる時期だろう。なんとなく、その後の人生も見えてしまい「まあ、こんなもんなんだろうな」と己を納得させる年ごろかもしれぬ。夢も冒険もないが、居心地は悪くない。その「いい年」で職を捨て、「まだまだだ」と自分の新たな可能性を信じ、腕まくりした、昆虫研究の父の決意がまぶしくもある▼ファーブルなら、エントリーシートを取り寄せるか。森下仁丹がよその会社で経験を積んだ四十、五十代の人材を幹部候補生として新たに採用するという。触れ込みは「オッサンも変わる。ニッポンも変わる」▼性別、年齢は不問。必要な資格は挑戦し続ける心があるか。「思い出してみませんか。初めてスーツに袖を通した、あの感覚を。熱意にあふれていた、あの自分を」。そのうたい文句が胸に響く方もいるだろう▼「オッサン」と呼ばれる世代もその気さえあれば、新たな道や夢を描ける。「まだまだだ」を応援する時代の変化と受け止める▼ファーブルはあの時代にしては長寿で、九十一歳まで生きた。挑戦し続けた人へのご褒美なのだろう。