東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2017年03月29日 | Weblog

 旅先でのハプニングは心細いもので、言葉が通じにくい異国となればなおさらである。女優の吉行和子さんがこんな体験を書いている。妹で作家の吉行理恵さんと旅行したサンフランシスコでの出来事。お気の毒にも、帰りの航空券を紛失してしまったそうだ▼空港でその航空会社のカウンターを探し回ったが、見つからない。相談できそうな日本人もいない。疲れ果て、公園で休んでいると、一人の東洋人が読んでいた雑誌が目に入った。「文芸春秋」。この日本人のおかげで帰国できたそうだ▼異国の地で途方にくれ、「文芸春秋」を探す方が出てこないかと心配する。旅行会社「てるみくらぶ」の破産である▼同社から航空券などを購入して、海外に出国したツアー客は約二千五百人。予約したホテルに宿泊できないおそれなど、不便が出ている。さぞやお困りだろう▼楽しみにしていた旅行が台無しである。問題は航空券代や宿泊代ばかりではない。その会社を利用しようと言いだしたのは誰かなど、旅の仲間や家族の間にもさざ波が立つかもしれぬ。なんでも、理恵さんはあの一件にこりたせいか、和子さんと二度と旅行をしなかったという▼社名の「てるみ」の英語表記は「TELL ME」だそうだ。日本語にすれば「教えてください」の意味だが、帰国方法や返金方法を「教えてください」ではしゃれにもなるまい。