東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2023年05月27日 | Weblog
「兎(うさぎ)追いしかの山 小鮒(こぶな)釣りしかの川…」。よく知られた唱歌『故郷(ふるさと)』は、明治時代に今の長野県中野市に生まれた国文学者、高野辰之が詞を作った▼上京後、三十代で郷里を思い、書いたという。「かの山」は幼きころに眺めた故郷の大平山などの里山、「かの川」は里を潤す千曲川の支流、斑(はん)川のことだと伝えられている。自然豊かな信州の里が、日本人の琴線に触れる曲を生んだのだろう▼のどかな中野市には、何とも似つかわしくない殺人事件が起きた。高野の故郷の集落からは離れているが、やはり田畑が広がる地域が現場。猟銃や刃物が凶器らしく、現場に駆けつけた警察官二人、高齢女性二人が死亡し、地元在住の市議会議長の長男(31)が逮捕された▼凶器を手にした容疑者は一晩、自宅に立てこもり、周辺の住民は避難を強いられた。人々の恐怖はいかばかりだったか▼現場付近にいた記者によると、緊迫の夜、耳をつんざいたのは水田にいるらしいカエルたちの鳴き声だったという。平和なのかと錯覚させる、その合唱。事件発生をいまだに信じられぬ住民も多かろう▼『故郷』の詞は「如何(いか)にいます父母(ちちはは)」と親の無事を願う。地元の高野辰之記念館によると、高野はこの詞を書く少し前に母親を亡くした。肉親を喪(うしな)う悲しみを知るゆえ、生まれた曲でもあるのか。事件で突然、愛する家族を喪った人の悲嘆を思う。
 
 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿