東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2024年06月15日 | Weblog
 『尾州不二見原』は浮世絵師葛飾北斎の『富嶽(ふがく)三十六景』の一つ。桶(おけ)を作る職人を手前に描き、背景に富士を配す▼場所は尾張国の富士見原で今の名古屋市中区富士見町周辺。富士見という地名だが、実際に富士は見えない▼岩波文庫の『北斎富嶽三十六景』で日野原健司さんが書いた解説によると、富士見原の名の通り富士が見えたとの記録が残るが、南アルプスの聖岳を富士と誤ったもの。見えぬ山だが、恐らく北斎は富士見原という地名から富士を描く着想を得たと推測する▼見えなくても富士見と名乗る例があるほど富士を敬う日本人。実際に見える東京都国立市の富士見通り沿いで、完成間近だった10階建て分譲マンションの解体が決まった。「富士が見えなくなる」という周辺住民の声に業者が配慮したという。引き渡し予定は7月。土壇場での転換に驚く▼工事が進むに連れ、富士が隠れたと怒る声がインターネット上に拡散した。以前にもマンションの高層階撤去を求める訴訟が起き、景観への意識が高い国立。「富士の眺望を奪った」と言われイメージが悪化するのを業者は恐れたのかもしれない▼北斎の尾州不二見原は手前の桶が巨大で、背景の富士は小さく目立たぬ構図。北斎の狙いは、鑑賞者に富士を発見させることにあったと日野原さんはみる。見つけたら「富士だ」とうれしくなる山。やはり特別である。
 
 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿