子どものころに映画やテレビで見た「宇宙人」は分かりやすく、日本語をしゃべっていた。「ワレワレハウチュウジンダ」−。おなじみのせりふである。一説では一九五〇年代の東宝SF映画あたりに由来するらしいが詳しいことは分からぬ▼高度成長期に子ども時代を過ごした方なら、まねをした経験があるか。抑揚を付けずに発声する。胸をたたきながらだと、その振動でより「宇宙人」っぽくなる。一番、効果的なのは扇風機。回転している羽根に向かって…失礼、つまらぬことを長々書いた▼「ワレワレハ」ではなく「ワレワレモ」あるいは「ワレワレガ」とあのせりふを言い直したくなるか。小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った砂や石。分析の結果、複数のアミノ酸が検出されたそうだ▼生命の材料として欠かせぬアミノ酸が「はやぶさ2」のお土産の中に見つかったということは「ワレワレ」の命の源は宇宙からやって来たという説を後押しすることになる▼過去にも地球に落下した隕石(いんせき)からアミノ酸が検出されているが、地上で混入した可能性も否定しきれなかったそうだ。「はやぶさ2」は小惑星から直接採取し持ち帰っており、地球外にアミノ酸が存在することを「まじりっけなし」に教えてくる▼地球に生命が誕生する前、生命の材料を乗せた隕石が地球に落下し…。星空がなんとなく懐かしく見えてくる。