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今日の筆洗

2022年02月24日 | Weblog

ドイツのまちハダマーの施設ではナチス時代、多くの障害者が殺された。「秀でた者の遺伝子を保護し、劣る者のそれを排除する」という優生思想に基づく政策だった▼障害者団体幹部の藤井克徳氏の著書『わたしで最後にして ナチスの障害者虐殺と優生思想』によると、ガス室跡のある建物が保存されている。殺害された障害のある人は国全体で二十万人超ともいわれ、ユダヤ人大量虐殺より先に始まった。殺されなくとも、断種すなわち不妊手術を強いられた人も多かった▼断種には他国も手を染めたが、日本もその一つ。障害があり、不妊手術を強いられた人たちが起こした訴訟で先日、判決が言い渡された▼大阪高裁は手術強制の根拠となる旧優生保護法(一九四八〜九六年)を「極めて非人道的、差別的」と断罪し、違憲と判断。同様の訴訟で初めて国に賠償を命じた。一審は「手術から二十年過ぎ、賠償請求権は消滅した」と判断したが、高裁はこれを「著しく正義、公平の理念に反する」と覆した。司法の良心だろう▼非人道的な法が九〇年代まで存在したことにあらためて、暗然とした気分になる。相模原の施設で「重度障害者は不要」と男が凶行に及んだように、社会に差別感情は根強い▼ハダマーの施設の碑にはドイツ語でこう記される。「人間よ、人間を敬いなさい」。心に刻むべきはドイツ人に限らない。