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今日の筆洗

2021年09月29日 | Weblog
<流れくる障子洗ひのたはしかな>。吉岡禅寺洞(ぜんじどう)の句だが、さて季語は何か。今の生活様式からは分かりにくいか。「障子洗う」がそうで、仲秋の季語である▼ややこしいが「障子」は冬の季語だそうだ。障子を季節によって片付けるお宅は今はなかろうが、かつて障子は冬のもの。春から夏は取り外していた。それを冬が来る前に洗い、はり直すので「障子洗う」や「障子貼る」は秋の季語となる。いずれも、夏井いつきさんの「絶滅寸前季語辞典」(ちくま文庫)に入っていた▼十九都道府県に発令されていた新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が三十日で解除される。東京に四度目の宣言が出たのは七月十二日。長かった。解除にほっとするが、忘れてならぬのは感染拡大の次の大波をにらんだ「障子洗う」の用意だろう▼縁起でもないと叱られるか。なれど規模はともかく、第六波は避けられまい。とすれば今を第五波が通り過ぎた時期ではなく第六波が来る前のつかの間の時期と考えるべきなのかもしれぬ▼経済も大切だが、宣言解除に浮足立ち、さっそく酒宴だ、旅行だというわけにもいくまい。あわててかつての日常を取り戻そうとすれば、第六波の襲来は早まるだろう▼行政においては十分でないことがはっきりした医療提供体制を急ぎ見直して次の波に備えたい。障子が必要となる「冬」は存外と近くにいる。