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今日の筆洗

2021年09月06日 | Weblog

「過ぎにし方、恋しき物、枯れたる葵(あおい)」と、「枕草子」にある。葵とは葵祭の時に部屋の御簾(みす)などに飾る葵の葉。祭りが終わり、この葉がいつの間にか枯れてしまっていることが時間の経過を感じさせ、恋しいと言っている▼にぎやかな祭りが終わった後の寂しさのようなものを枯れた葵に覚えたか。「徒然草」の吉田兼好にも同じ感覚があったようだ。葵祭が終わった直後に御簾の葵をさっさと取り去ってしまうことに「色もなく覚え」(情緒がないと感じる)と書いている▼パラリンピックも閉会し、これで一カ月あまりにわたる一連の東京五輪・パラリンピックの日程がすべて終わった。大きな祭りが幕を閉じた。選手、大会関係者、ボランティアをねぎらう。きょうからは葵の片付けに追われる東京である▼寂しさがないわけでもない。が、それよりも先に来るのは大きな事故もなく、終えたという安堵(あんど)と、少々の徒労感だろうか▼コロナ禍の開催には賛否が分かれた。大会前の混乱や問題。選手には申し訳ないが、五輪・パラリンピックがなんだか重い荷物のように思えたところもある。戦後日本の成長を見せるのだと熱を上げ、取り組んだ一九六四年の東京大会ではなかった▼日本で今度いつ、五輪があるだろう。五輪の規模や形が変わらぬ以上、日本人は数十年はその重い荷物に苦笑いで、後ずさりするかもしれない。