人が三人集まれば…、生まれるのは、文殊の知恵とは限らない。「二つの派閥ができる」。大平正芳元首相の言葉が残っている。派閥が今とは比べものにならない力を持ち、自民党を強力な派閥の連合体と見ることもできた時代の言葉である▼政治の世界から派閥がなくなることなどはない、功も大きいのが派閥であって…。功罪の功を開き直って主張するかのような響きが、大平さんの言葉にはあろうか▼金権政治の温床などと批判された派閥は、その後の改革を経て、かつての力を手放していく。そんな派閥をめぐる動きは、昨日告示された自民党総裁選の大きな特徴だろう。四人の候補者のだれを推すのか、党内七派閥のうち六派閥が自主投票などで一本化せずに臨んだ。異例である▼党の国会議員が、それぞれに総裁候補の資質を見極めようとしているのならば、いいだろう。迫る衆院選でだれが「顔」ならば、自分が勝てるか、だれに恩を売れば、新政権で恵まれるか。勝ち馬を見極めようとする面があるようだ。昨年、菅さんが勝ち馬と分かると、こぞって乗ったのと同じ人たちである▼勝たせたい人を選ぶのと勝ちそうな人を選ぶのは違う。異なる結果も出よう。資質を問うてほしいコロナ禍の中の選挙で、大丈夫か▼かつての派閥は一枚岩で推すための立派なリーダーを育てようとしていた。つい罪を忘れて、思う。