仲の悪い者同士であっても、そこに乗り合わせれば、力を合わせる場になる。古代中国の舟には、そんなイメージがあったのだろう▼「同舟共済」「同舟相救(あいすく)う」といった言葉が、今に伝わっている。反目する春秋戦国時代の呉、越の国の人が助け合うのを例えて、有名な「呉越同舟」の語になった。楚の国も入れて「楚越同舟」というのもあるらしい▼そんな舟が今もあればいいが、目の前にあるのは助け合いを想像するのが難しそうな「同舟」である。仲が良くないはずの中国と台湾が同時期に乗りたいと声を上げたのが、日本などが参加する環太平洋連携協定。TPPという名の大きな船である。「中台同舟」の実現は遠そうに思えるが、ことはどうも荒れ模様だ▼米国の不参加を見て、加盟を申請した中国の一手が呼んだ波乱である。中国包囲網を意識したはずの協定に、もし中国が加わって、主導的な役割を演じることになれば、TPPの性格はもくろみから大きく変わってしまう▼さまざまな流儀が異なる国でもある。とはいえ世界で二番目の経済大国の加盟に期待する声が高まる可能性もあろう。遅れまいと申請を急いだ台湾に対し、中国はすかさず反対の姿勢を示した。対立の場になっているようだ▼米国を呼び戻すのがいいように思えるが、うまくいくだろうか。穏やかでない、相救うはずの協定の行く手である。