東京大学運動会ヨット部

東大ヨット部の現役部員によるブログです。練習の様子、レース結果、部員の主張から日記まで。

キールボートに魅せられて

2015年12月03日 14時09分58秒 | Weblog

お疲れ様です。家にてんとう虫が大量発生しております、2年の山本です。先の全日本キャンペーンの振り返りと感想をば

このキャンペーンの機会を頂いたことで、得たものに所感を交えて感謝の意とさせていただきたく思います。
本当はこの文章をブログには投稿するつもりはなかったのですが、見えない力が働いたので恐れ多くも投下させて頂きます。


僕は入部して半年をスナイプのクルー、その後ちょうど1年をスナイプの舵を握って過ごしました。そして秋イン後から去る11/24まで、Jのマストを握っていました。

恥ずかしい話なのですが、しっかり前を見て走るという、こんな単純なことを忘れていました。
海面を見て、テルテールを合わせて、メインのリーチを見て、他艇を確認して、また海面を見て……の早いスパンの繰り返しをしながら走ろうと決めて練習していたこの半年間。
この方針自体は間違ってはいないと思います。しかし、一度に全てのことをやろうとするとどれも中途半端になり、なかなか上手くいかず思うように成長できない自分でありました。

今回、短い間ですがJ24に乗せていただいて、風を読むこと、ただそれだけに集中する機会をいただきました。
正確には走りに集中しない機会を頂いたと考えています。こう書くと、ボートスピードやセールへの意識のない糞クルーのように思われてしまうかもしれません。実際、そうです…一ヶ月の短い期間、自分の動作で手一杯で、後ろの二人に対してフィードバックできることはほとんどありませんでした。これは、カリキュラム、人選的に仕方なかったと思いますが…今キャンペーンは、僕にとって得たものはあれど、後ろに返せたものは少なく、申し訳なく思っております。仰秀チームとしての今キャンペーンは成功とは言えないかもしれませんが、僕が得たものは大きいということで、少しでも今キャンペーンの意義を示せたらなあ思います。

まず、走りというものに対し意識しないでヨットに乗ることで、逆に走りに対し視野を広げることができました。
久しぶりに先週スナイプに乗った感想も交えて書きます。まず、前方海面を見て船を操作できるようになりました。というのも、前方の風に合わせて小さな角度の調整、セールの調整の意識が強まりました。恥ずかしい話、以前まではテルテールとジブの裏の他艇くらいしか意識できていませんでした。テルテールも、乱れてから舵を動かして角度を合わせる次元でした。戻ってからは、前方海面を見て、強風ではブローに入る直前にメインを出し、ブローに入ってから引き込んでいく、突発的なスポットへの対処が早くなる、微風でシフティな風に対してはヘダーに入る前に少し角度を落としてジブに裏風を入れない、など前方海面から判断してセールを合わせる意識が生まれました。これは、仰秀でひたすら風を読み、自分の目への自信が生まれたことからできるようになったことでした。先週の久しぶりのスナイプ、操船技術が雑で船を止めてしまうことがありましたが、ブローを見るコツを掴んだことで自分に可能性が見えてきました。こう書くと大袈裟っぽくなりますが、ヨットに乗った時の見える世界が以前と違いました。前を見て、走れるようになりました。

また、ヨットというものの構造についての造形が深まりました。僕がいじるのはバングとジブハリのスピンロックくらいでしたが、一部を見ることで全体が見えてくるような気がします。これについては言語化が上手くできないのでこの辺にしておきます。

次に、タクティクスについて。中田や海野さんの横でタクティクスに雑に口出しすることで、今まで意識の低かったタクティクスに対して生きた経験が生まれました。ブローに突っ込んで奥に伸ばす、もしくはブローに入ったところで返す、艇団に寄せる…など、今までなかなか操船に手一杯で意識が回らなくクルーに任せがちだった基本的なタクティクスの選択肢を身を以て体験しました。議論は楽しく、どんどんコース自分でも弾きたくなり、クルーの楽しさを感じました。ディンギーのクルーでもレースに出てコースを引いてみたいとも思います。

次に、動作へのこだわりについて。
またしても恥ずかしい話ですが、僕は無意識のうちに動作を軽視していました。タックなんて1レグで多くとも10回くらい、大した差にはならんだろう、どうせ一年生と乗ってるんだしちゃんとした動作はできないかな、のような甘い意識に気づかされました。ギリギリまで上して風位を稼ぐ仰秀チームのタックを経験して、動作への強いこだわりを感じました。また、先の早稲田合同練で、ボートスピードで及ばないのに動作ですら及ばなくてはコースで当てたところで決して勝てるはずはない。当たり前の話で、わかっていたはずなのにいつのまにか無意識に忘れていた話でした。

次に、松山さんの貪欲な走りの追求、月光チームや上手い人に対して積極的に聞いていく姿勢に悔しさを覚えました。これに対しては以上です。

あと、楽しくヨットに乗ったのは久しぶりだなあと。今まで変に気負っていた感じがありました。肩の力は抜いていきます。

動作を覚えて楽しくなってきたなあと思ったところで、もうJに乗らないのは一抹の寂しさを覚えます。前に海野さんがいて、後ろに中田と笠原のいるフォアデッキが楽しかったです。みんなで一つの船に乗れることは素敵なことですね。
そして、厳しくやることはもちろん必須ですが、仲良くやることも大事だなあと思いました。また、全日本選手権の最後には役割分担が上手くいってて勿体無く感じられました。この状態で全日本を始めたかったです。おそらく、ワールドのメンバーは、ワールドが終わるときにはこれよりもっと上手くいってて、その状態でワールドを1レース目から始めたかった、もしくは全日本に挑んでみたかっただろうなあと察されます。

以上をまとめて、J24に乗ることで、無意識のうちに凝り固まっていた自分の意識がほぐされ、視野が広がりました。

短いながらたくさんのことを頂きました。八景や葉山は辛いことだらけだし小網代にずっと居たいなと思ってました。しかし、僕はポンコツなのでより優秀な人間を仰秀チームに入れたほうが今後の発展が望めると思うのと、久しぶりに八景の練習に参加して思ったことで
全日本インカレを直に見据えて、今のチームを厳しくかつ仲良く、かつ目標に向かって一つにするために潤滑油的に働きつつ、自分の走りを追求することが僕に出来る1番のことなんじゃないかと思いました。また、今回の経験、特にブローを見ることについて、積極的に一年生に指導していけると思うので、そちらに還元していきたいと思っています。

キールボートは最高ですね。
もしこの先仰秀チームでたまたま三人しかいないなどで練習が成り立たない時は呼んで頂ければ飛んでいきます。

今キャンペーンにおいてもLBの皆様からの支援のおかげで無事に終えることができました。この場を借りて感謝の意を示させて頂きます。また、三崎でも和歌山でもお世話になりました社会人チームの皆様、僕達がいないことで迷惑をかけた八景の皆様、いつも支えてくれる両親にも同様に深く感謝しております。ありがとうございます。

また、後ろのお二人には迷惑をお掛けしたことと、改めて感謝の念を示させていただきます。

 

今後も頑張ります。

2年 山本圭祐


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4 コメント

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マッチではバウやってるよ (某チームヘルム)
2015-12-03 14:52:08
山本さん

ブログ、大変面白く読ませていただきました。
短い間でしたが、色々とありがとうございました。
まだキールボートに全く不慣れなうちから、色んなチームに派遣されたりして、とても大変そうでしたが、よく頑張ってくれたと思います。
ディンギーに戻ってしまうのはすこし悲しいですが、君はたくさんのことを学んだんだから胸を張ってスナイプに乗ってください。

某チームヘルムスマン
返信する
Unknown (Unknown)
2015-12-04 07:01:13
山本さん

大変おもしろく読ませてもらいました。
短い期間で多くのものを得られたようで、
意識・吸収力に感心しました。

J/24はまだまだディンギーに近いので、
ぜひもっと大きな船にも乗ってください。
ぼくも2~3年生の頃はいろんな船に
乗りに行くようにしていました。

うちの40ftではスピンだけでも4枚使い分けています。走りたい角度に合わせて使い分けますが、そのポイントを知っていれば同じセールでも張り方が変わると思います(ラフのテンションやリーチの開き方etc.)

また同じJ/24でも、他のチームに乗せてもらうとコースの引き方が違ったりしておもしろいです。タクティクス/ストラテジーのプライオリティが違うという意味です。

H19卒仰秀 平出
返信する
ヘルムス様 (某チームマストハンド)
2015-12-07 13:48:38
短い間でしたが、色々なチームに乗れて楽しかったです
悔やまれるのは仰秀そのものに乗った回数が少ないことですね…
あと、5273は素数ですね、素敵です
キールボートの世界は素敵です。身体が二つあったらよいのですが。
がんばります

某チームマストハンド
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平出様 (山本)
2015-12-07 13:58:32
読んでいただきありがとうございました。
東北大戦などがありましてコメント返しが遅れてしまいました。

実はY30に乗れそうな機会があったのですが、叶わず残念に感じております。
色々な船に乗りたいと思います。東大ヨット部は、そういった機会に多く巡り会える素敵な場所だと思っております。そのチャンスを逃さず飛びついていこうと思います。

和歌山のクリニックで、月光様の船に乗せていただいたのですが、特有のコース引きを実際に体感させていただきました。他チームに分乗してそのチームの技術やテクニック、思考を盗むことは、実際に共に乗ってみることで可能となることも多いと思いました。ディンギーではなかなか難しく、クルーザーチームの良さだと感じました。
この一ヶ月間でJ24のフォアデッキの基本的な動作を覚えたことと、他チームの方とそれなりにお知り合えたことで、これからもお会いした時に積極的に行動して、また分乗させていただく機会を自分で作れるとヨットの世界を自ら広げられると思いました。
コメントありがとうございました。

2年 山本圭祐
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