TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「成院とあの人」2

2014年05月20日 | T.B.1999年

成院(せいいん)は森を抜ける。
西一族の村は、北一族の村から案外近い。
正式な道を辿ればもっと早いのかも知れない。

狩りの一族というから、物々しい所を想像していたが
血の匂いがするわけでもない。
小さいけれども畑も点々とある。
思っていたよりも静かな所だった。

人の姿は見えない。

それでも成院は茂みに身を隠す。

成院は東一族で
敵対する西一族に見つかったら、どうなるかは分からない。

「動くなら、暗くなってから」

上手くいく保証は何も無いが
夜になれば少しは動きやすくなるだろう。

「……喉が渇いたな」

日が落ちるまで、まだ時間はかかる。
成院は水辺に降りる。
村の外れなのだろう、一軒だけぽつりと家がある。
そこから成院の場所は見えにくいだろうが、
気をつけるに越したことはない。

家がある方に注意を向けながら手早く水を飲む。

そのまま水辺を立ち去ろうとして
成院は動きを止める。

住人が窓から顔を出したからだ。
幸い成院には気付いていない。

けれども、成院は動けない。

見えたのは、黒い髪に、瞳。
西一族とは違う、成院と同じ東一族の特徴。


「……どうして、ここに」


NEXT

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。