TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「辰樹と天樹」13

2016年02月19日 | T.B.2016年

 冷たい風が吹く。

 辰樹と天樹は、東一族の村からほど近い砂漠へと出る。

「寒っ……」

 辰樹は呟く。

 まだ、日が沈む時間ではない。
 けれども、雲が出ているせいか、あたりは薄暗い。

「辰樹、はぐれるなよ」
「判ってる」

 天樹が指を差す。

「そこに地点だ」
「解除するか?」
「いや」

 天樹は首を振る。

「こちらの居場所がばれる」

 辰樹と天樹は砂漠を進む。

 冷たい風。

 あたりを見る。
 一面の砂。

「天樹、」
「…………」

 辰樹は緊張する。

 何かが近くにいる。

 そんな気がする。

「多いな」

 天樹が呟く。

「多い?」
 辰樹も小さな声で返す。
「多いって、何が?」
「砂の数だよ」
 天樹が云う。
「思っていたより、多い」
「まさか」

 辰樹は、刀を持つ。

「辰樹」

 天樹が云う。

「俺が、非常時の転送術を準備しておくから」

 天樹は持っている弓で、足下の砂をなぞる。
 そこに、法則を持った紋章を描く。

 東一族の紋章術。

「何かあれば、ここに来い」

 天樹が云う。

「東に転送されるようにしておく」

「判った」

「砂をよく見て」

 天樹が云う。

「浄化方法を知っている砂一族を洗え」
「判った」

 …………。

「……??」

 …………。

「でも自身を守るのが、一番だ」
「……おう」

 答えながらも、辰樹はあたりを見る。

 …………。

 何かの

「音が、」
「!!」

 突然の砂嵐。

「辰樹!」

 天樹が叫ぶ。

「砂だ。天樹!!」

 舞い上がった砂に、目がくらむ。

「…………っ!」

「東だ」

 ふたり以外の声。

「やっと来たか」
「遅かったねー」
「待ってたし」



NEXT

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。