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「辰樹と天樹」15

2016年03月04日 | T.B.2016年

 何人かの砂一族が倒れている。

 けれども、砂一族は笑う。

「浄化薬持っているの」
「だーれだ」
「誰かなー」

 おもしろそうに。

「東の畑の毒」
「広がっていくねー」
「大変だねー」

 辰樹は天樹を見る。

「どうする?」

 天樹は、砂一族を見回す。

 ふと

 ひとりの砂一族を指差す。

「あいつだ!」

 それを合図に、辰樹が走る。

「げっ」
「ばれた!」
「ばれた!!」

 その砂一族に、辰樹が追い付く。

「浄化薬を出せ!」

「ひっ!」

 辰樹は、砂一族の懐に手を入れる。

「お前っ!」

 別の砂一族が、辰樹に手を伸ばす。
 が
 すぐに倒れる。

 天樹の矢が、当たっている。

「これだ!」

 辰樹は紙を掴む。

 浄化薬ではない。
 けれども、浄化薬の作り方が記された、紙。

「おいっ!」
「返せ!」
「もう一度、魔法だ!」

 辰樹は、後ろに飛ぶ。

 走る。

「これ以上は不要だ!」

 天樹が叫ぶ。

「撤収するぞ!」
「判った!」

 と

 答えた辰樹が、ふらつく。

「!!?」

 慌てて、天樹が辰樹に駆け寄る。

「どうした?」

 天樹は、辰樹の腕を見る。
 血が、ほんの少し流れている。

「大丈夫、たいしたことない」
「いや、これは、」

 血が流れている。
 つまり、
 その傷から、毒が入っていると云うことだ。

「辰樹、急げ!」

 天樹は辰樹を立ち上がらせる。

 最初に準備しておいた、転送術の場所へ。

「走れ!」
「…………?」
「辰樹?」
「…………」
「おい、しっかりしろ!」
「…………」
「しびれるか!?」

 辰樹は目を閉じている。
 天樹は、辰樹を抱え、走る。

「待て、東一族!」
「帰すんじゃないぞ!」
「動くな!」

 砂一族の魔法が作動する。

 天樹も、紋章術を作動させる。

 が、間に合わない。

 砂埃。

 勢いで、天樹は倒れる。
 刀を落とす。
 すぐに顔を上げ、辰樹を見る。

 その先に倒れた辰樹がいる。

 ちょうど、転送術の上に。

「辰樹!」

「…………」

「辰樹! 聞こえるか?」
 天樹が云う。
「その紙を持って、先に帰れ!」
「…………!?」

「行くぞ! 東一族村内へ!」

 発光。

「うっ!」
「!!?」
「なんだ、なんだ!?」

 すぐに、暗闇。

「何が起きた!?」

 砂一族の声が響く。
 そこには、誰もいない。

「……いないじゃん」
「なーんだ」
「東に逃げ帰ったか?」

 静まりかえった砂漠に、散り乱れた砂一族が姿を現す。

「お前、逃げ帰ったんじゃないだろ!」
「結局、浄化薬の作り方、盗まれたじゃん」
「あーあ」

 そして

 その砂一族たちは、順番に姿を消していく。

「結果、砂の負け、だし」

「見張りを固めろよ」

「次は何の毒を作ろうかなー」

 …………

 …………

 再度、静寂。



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