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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「涼と誠治」9

2016年09月23日 | T.B.2019年

 久しぶりの晴れ間。

 涼と誠治は狩りへと向かう。

 山を登りながら、誠治が云う。

「せっかくの晴れ間なのに、何やってるんだよ」
「…………」
「狩りの好機を逃すなよ」
「悪い」
「狩りをするために、罰を後回しにしてもらってるんだろ」

 晴れ間は、数日続いている。
 が
 涼は、しばらく、狩りへと出向かなかった。

 誠治はそのことを咎めている。

 涼は何も云わない。

「ほかの班は、ずいぶんと獲物を仕留めたみたいだな」
 誠治が云う。
「この調子なら、俺たちも」

 誠治は、足早に山を登る。
 涼もそのあとを続く。

「おい」

 しばらくして、誠治が立ち止まる。
 涼も立ち止まる。
 誠治は声を落として、云う。

「獲物がいるぞ」

 涼と誠治の少し先に、獲物がいる。

 鹿。

 誠治は茂みから覗く。
「獲るか」
 云うと、誠治は刃物を取り出す。
 涼は、弓を構える。
 誠治は、獲物を見ながら云う。
「急所を狙えるか?」

 涼は頷く。

 矢を放つ。

 獲物は驚く、

 が

 すでに、矢が当たっている。

 誠治は茂みから飛び出す。

 持っていた刃物を握りなおす。
 とどめを、刺す。

 獲物は声を上げ

 そのまま、倒れる。

「上出来!」

 誠治は嬉しそうに、獲物を見る。

 涼も、茂みから姿を出す。

 誠治は早速、獲物を運ぶ準備をする。

「おい、涼。そっちを、」

 獲物の横に坐り込んでいる誠治は、涼を見上げる。

 涼は、

 手を合わせている。

 手を合わせている、と云っても、よくやる祈りとは違う。
 片手は開き、片手は閉じている。

「お前、……たまにやるそれ、何だよ」
「別に」
「…………」
「…………」
「ひょっとして、祈ってる?」

 涼は答えない。

「そんなのいいから、運ぶ準備しろよ」

 涼は動かない。
 あたりを見る。

「どうした?」

 誠治は首傾げる、が
 すぐに、何かの気配に気付く。

「何だ?」
「これは、」

 足音。

 大きな、足音。

「お前ら、何者だ!」

 誠治は驚き、声の主を見る。

 その声は、ふたりの上から投げかけられる。

 そこに

 馬に乗る、ひとりの男性。

 西一族とは違う、顔立ちと装いの

 ――山一族。



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