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「律葉と秋葉と潤と響」9

2018年11月06日 | T.B.2024年

「………」

律葉はぼうっと、窓の外を眺める。

狩りから戻って数日。

帰って来たその日は、バタバタして大変だった。
秋葉はすぐに病院に向かい、
潤と響は狩りの世話役に
なにがあったのか説明に追われていた。

律葉も病院にと言われたが
ただの打ち身だから、と
そのまま家に帰ったのだ。

「2人に任せっぱなしにしちゃったな」

雨に打たれたことで疲れが出たのか
そのまま次の日は寝込んでしまった。

どうやらその間に
潤と響が尋ねてきたらしいが
律葉が眠っていると聞くとそのまま帰って行ったらしい。

それを聞いて、
悪かったなと思うと同時にほっとした。

まだ少し
潤と顔を合わせるのが気まずい。

「……秋葉の所に行こう」

律葉は身支度を整えて
家を出る。

何かお見舞いに
お菓子でも買っていこうかと
店に立ち寄ったのが悪かった。

「よう、律葉」

声をかけてきた彼らは
先日の別の場所で狩りを行っていた班だ。

「この前は下手打ったな。
 もうケガは大丈夫なのか!?」

そう言ってゲラゲラと笑う。

一族内の認識では、
狩りで怪我をするのは腕が悪い、
狩りが下手だという事になる。

でも。

あれは場所が悪かった。
だれも腕の悪い人なんて居なかったのに。

「ええ。もう大丈夫よ」

言い返したら負けだと、
なるべく冷静に返事をして
律葉は彼らの横を通り過ぎる。

確かに狩りで怪我をしたが、
それでもあの日の狩りで
成果を上げたのは律葉達の班だけだ。

「俺達心配しているんだぜ。
 ―――親無しと一緒は大変だろ」

「…………っつ!!」

「なんだよ?」
「あ、ほら、津葉もお母さんが」
「おっと、違うぞ!!
 律葉の事じゃなくてさ、あいつの」

「余計なお世話!!」

無性に悔しくなって、
律葉は店に寄らずにその場を離れる。

「律葉、まだ今なら
 俺達の班に入れてやるよ」

「…………」

答えない。
相手にしたらいけない、と
聞こえないふりをして
律葉は進む。

「どうせ、お前たちの班は
 解散するんだから」
「なにを適当な事を!?」

言いがかりもいい加減にしてほしい、と
振り返る。

だが、彼らはなにか別の情報があるらしい。
知らないのか、と
律葉に言う。

「だって、潤。
 班長辞めるらしいぜ」


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