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「律葉と秋葉と潤と響」16

2018年12月25日 | T.B.2024年

その日、狩りを終えても
律葉達はそのまま広場に残り続ける。

「結構冷えてきたね」
「秋葉、大丈夫?
 こっちにおいでよ」

律葉はたき火の側に
秋葉を呼ぶ。

「今日はもう一枚上着が必要だったなぁ」
「ねえ」

さむさむ、と言いながら
響も帰ってくる。

「報告ありがとう」
「もうそろそろ
 全員揃うみたいだよ」

最後の班が帰ってくるまで。

他の皆もどこか落ち着かないように
そわそわとしている。

その最後の班も
狩りを無事に終え、
進行役に今日の成果を報告する。

「よし」

記録を付けた進行役は
冊子を閉じると
広場に集まった皆を見渡す。

「今年の狩りはこれで終了。
 みんなお疲れ様」

わぁ、と
広場に安堵の声が小さく広がる。

冷え込む時期になると
獲物である動物達は
山奥に籠もってしまう。

それに併せて
狩りもしばらくお休みとなる。

その日だけ準備されるスープを
皆で飲みながら
一年の狩りの成果をねぎらう。

「昔はこう言うの無かったんだって」
「そうなの?」
「北一族から入って来た
 行事だろうって父さんが」

言うこといちいち古くさいのよ、と
律葉は困った様に言う。

ふふふ、と笑いながら
秋葉は続ける。

「でも、こういう行事なら
 どんどんやって欲しいよね」
「十年後ぐらいには
 もっと盛大なイベントになっていたりして」

感謝祭とか言って、
みんなでケーキ食べたり、
チキン食べたり。

「なにそれ響。
 それじゃあ年越しも近いのに
 何度もごちそうになるじゃない」
「お祝いは何回あっても
 いいと思うけどな」

そうだ、と秋葉は2人へと向き直す。

「律葉、響」
「うん?」
「なあに?」

温かくなるまで
暫く狩りは行われないが、

「時々、遊びに行ってもいいかな?」

「もちろん」
「ウチにも遊びに来てね」

「俺は秋葉の家、結構入り浸ると思うけどな。
 律葉もおいでよ」

兄さんの家だし、と響が律葉を誘う。

「そうね、折角だから。
 私達だけでお疲れ様会をしない?
 さっき響が言っていた様に食べ物を持ち寄って」
「わぁすてき。
 わたし、なにを準備しよう!!」
「それなら、我が家でしてもいいわね。
 私、ベーコンポテトとか作るわよ」
「律葉の家!?
 行きたい!!!」
「年明けたら、
 潤も帰ってくるよ」
「そうなの!?」

「お疲れ様会と
 おかえりなさい会だね」

不思議だな、と律葉は思う。

班が同じで無ければ
彼らと話すことも無かっただろう。

それがこうやって
狩り以外の時でも
会おうと約束をしている。

班の采配なんて、
偶然の巡り合わせ。

でも。

「秋葉と響と、潤と
 皆と同じ班で良かったわ」

また、会うのだろうけど
一つの区切りとして
律葉は2人に声をかける。

「今年はお疲れ様。
 来年も、よろしくね」


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