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「成院と晴子」5

2016年06月28日 | T.B.2003年

成院は東一族の墓地を訪れる。

沢山の墓石が並ぶ中
彼はただ一つを目指す。

もう、四年前の事。

彼の兄弟が眠る場所。

「生まれたよ。
 女の子だ」

今までもそうだった。
何かあれば必ずここに報告に来ていた。

同じ病で倒れた2人。
助かったのは1人だけ。

もしかしたら、
ここに立っていたのは
自分ではなかったかもしれないと思いながら。

「俺に似ているって
 晴子が言うんだ」

自分に似ていると言うことは
死んだ兄弟にも似ているという事だろうか。

「俺達双子だったからな」

彼は、持ってきた花を捧げる。
柄じゃないと笑われるだろう。

「お前を辿りながら
 生きているって言ったら大げさだけど」

死んだ兄弟の
代わりに。

替わりに。

どちらか分からない、と
言われるぐらいに。

「でもなぁ、
 そんなヒマも無くなるだろうから」

結婚して、子供が生まれて
家族が増えた。

自分ばかりが幸せになって
恨むだろうか、と
彼は墓石を見つめる。

「それでも俺は、少しだけ
 自分を許していこうと思う」

兄弟に恨み言を向けるようなやつじゃないと
ずっと分かってはいたけれど。

「今度は2人を連れてくるよ」

彼は静かに墓地を離れる。


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