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「東一族と裏一族」6

2018年07月27日 | T.B.2017年

 さあ

 彼は、この務めで、どのような情報を集めてきたのか。

 大将は、人を呼ぼうとする。

 が

「大将」
「何だ」
「皆に報告出来ることなのか、まずは訊いていただけますか」

 満樹の言葉に、大将は持っていた筆を置く。
 満樹を見る。

 これはおそらく、

「何かしら情報があったのか」
「…………」
「満樹?」
「はい……」
「お前、いったいどこまで行ってきたんだ?」

 満樹はうつむく。
 大将が云う。

「南に、その先。海もか?」
「あと、山一族の方にも」
「山へ?」
「はい」
「……そうか」

 思った以上に、満樹は遠出をしたようだ。

 大将は、息を吐く。

「西の近くにもか?」
「西は経由していません」
「当たり前だ」

 まあいい、と、大将は満樹を見る。

「では、先に私が報告を聞こう」

 満樹は頷き、話し出す。

「南一族、山一族。ここでは失踪した者がいました」
「2一族で?」
「それと、聞いた情報としては、西一族でも」
「西でも?」
「おそらく、」
 満樹は云う。
「裏一族が絡んでいるのかと」

「裏一族、か」

「はい」

 大将は満樹を見る。
 何か他にもあるだろう、と。

 満樹は云うのをためらっている。

「満樹」
「…………」
「お前の務めの成果だろう?」
「……はい」
「裏一族に、」
「…………」
「接触したんだな?」

 その言葉に、満樹は目を見開く。

「各一族で失踪した者たちの共通点は?」
「それは、何も……」
「何も?」
 大将は目を細める。
「裏一族が絡んでいるのなら、誰これ失踪したわけではないだろう?」
「でも、今のところは判りません」
「…………」
「以上です」
「…………」
「…………」
「そう、か」

 云いながらも、大将は思う。

 満樹はまだ何か、情報を得ているのだ。
 けれども、それを伝えようとしない。

 息を吐き、大将は頷く。
 満樹と目が合う。

「実はな、満樹」

 大将が云う。

「ここ数日、北一族の商人とやらが頻繁に出入りしている」
「北の商人?」

 大将の言葉に、満樹は首を傾げる。
 商人の出入りは、けして珍しいことではない。

「その商人と接触した者が多い」
「何をしに東へ?」
「外の品物を、配って回っていると」
「外の品物?」

 もちろん、それも普通のこと。
 商人は、商売に来ているのだから。

「でも、目的は売買ではない」
「…………?」
「東一族の中で、誰かを探している」
「誰か?」
「南、山、西の失踪者。先ほど、お前が云った通り」
「まさ、か」
「東一族で同じ共通点がある者を探していると云うことだ」

 つまり

「相手は、北一族のふりをした裏一族だ」



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