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「東一族と裏一族」7

2018年08月03日 | T.B.1997年

 東一族を探っていた者。
 それは、
 いくつかの情報を合わせても、裏一族で間違いない。

 そして、

 北一族の商人のふりをして、ついに入り込んできた。
 何かしら、裏一族に必要である者を探している、のだ。

 連れ去るつもりなのか。
 それとも、裏一族に引き入れるつもりなのか。

 満樹は首を振る。

「なら、包囲網を」
「その商人は入れ代わり立ち代わり、何人かいる」

 大将が目を細める。

「無関係の北一族の商人と、間違えるわけにはいかない」
「……裏一族はいったい誰を探して、」
「それは、満樹が掴んできたのだろう」

 一瞬、満樹の口元が動く。
 大将は、それを見逃さない。

「東側からの裏切りや、ただの諜報員と云うわけではなさそうだ」

 大将の目は、まっすぐ満樹を見ている

「いったい、うちの一族の誰を探している」

「それは、……」
「…………」

 満樹は首を振る。

「判りません」

「満樹」

 満樹は何も云わない。
 目をそらす。

「…………」
「満樹」
「俺は、何も……」

「そう、か」

 大将は息を吐く。

「判ったよ、満樹」
 云う。
「また、何か情報が入ったら報告を」
「はい」
「裏一族の動きには気を付けるように」
「判りました」
「商人は、女たちに声をかけていると云うことだ」
 大将は云う。
「特に、気を付けてやってくれ」
「はい」

 満樹は礼をし、この場をあとにする。

 その背中を

 先ほどの蒼子と同じように、

 大将は見送る。

「……さて」

 再度、ひとりになった大将が口を開く。

「見えてきたな」
「はい」

 誰かの声。

「満樹の今後の務めはどうなっている?」

 その声に応えるように、どこからともなく人が現れる。

「今夜の務めは、砂漠の見回りに」
「相方は誰だ?」
「俊樹(としき)になっています」
「判った」

 大将は頷く。

「満樹には、次の日も同じ務めを入れておくように」

 誰かは首を傾げる。

「村の外だと、裏に接触する可能性が高くなるのでは」
「接触したとしても、一族の者がいれば大丈夫だろう」

 大将は続ける。

「皆に伝えろ。包囲網を張っておけ」
「判りました」
「……佳院(かいん)」

 大将は云う。
 確認するように。

「判っているな」
「はい」

「裏一族は、満樹を探していると云うことだ」

 佳院は頷く。

「おそらく、満樹本人も気付いているな」
「はい」
「でも、なぜ自分なのか、までは、たどり着いていないようだ」

 大将は息を吐く。

 ――なぜ満樹なのか。

 先ほどの蒼子の言葉からでも、十分な情報があった。

 ……これは東一族でも知られていないこと。

 満樹は、父親である安樹

 の、

 子ではない、と云う。



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