「術の、解除……?」
「くっ!!」
司祭がよろける。
地に倒れる。
「あいつめ! しくじったな!」
アキラとトーマは、あたりを見る。
今まで洞窟を覆っていた力は、もはやない。
「どう云う、ことだ?」
「術者に何かが?」
いや、
「誰かが外で、相殺の紋章術を使った」
アキラが放った鳥が、山一族を呼んだのだろう。
少なくとも、ハラ家が近くまで来てくれたのだ。
術は解けた。
多少の傷を負ってはいるが、まだ動ける。
「司祭、様」
トーマが呼びかける。
「もう、あなたになす術はない。……あきらめてくれませんか?」
「何を云う!」
司祭は立ち上がろうとする。
「あきらめる気はない! 何度でも私はやる!」
「司祭様」
「術は解除されたが、それだけだ! 娘はまだ眠っている!」
司祭が指差す方向に、マユリ。
この騒ぎでも目覚めることなく、眠り続けている。
おそらく、
別の場所にいるカオリも。
「復活の術だけであれば、私ひとりでもやれる」
ふらつきながらも、司祭は立ち上がる。
「こうなれば、この娘の命だけでもやるだけだ」
よろよろと、祭壇へと向かおうとする。
アキラは首を振る。
思った以上に、司祭は力を使い果たしている。
それでも、まだ、
「トーマ」
アキラは云う。
「終わらせよう」
「ああ」
ふたりは動く。
トーマは司祭を追う。
アキラは、司祭の恋人だったもの、へと。
「何を!!」
司祭は、アキラの動きに気付く。
「やめろ!!」
司祭は、このものに手を出されることを警戒していた。
大切な人であるから。
そして
この儀式には、そもそも、その身体が必要。
司祭は呪文を唱える。
「!!?」
アキラは振り返る。
と、
「ぐっ!!」
「司祭様、すまない」
トーマが、司祭のわきに飛び込む。
その胸に
短剣を突き立てる。
アキラは再度、司祭の恋人だったものに、向かう。
それが横たわる場所が光る。
アキラの紋章術。
「どうか、静かに眠ってくれ」
冷え切った石座の上に炎が立つ。
それを包み込む。
「 !!」
倒れこみながら、
司祭は手を伸ばす。
「チハル……」
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