周りにいる海一族は、動きを止める。
「動くな」
アキラは弓を構えたまま。
地に倒れている裏一族は顔を上げ、アキラを見る。
「はっ。どうする、山一族」
「黙れ」
アキラが云う。
「お前たちが侵入者だと判るのも、時間の問題だ」
「だろうな」
「いったい、お前たちの目的は何だ」
裏一族が余裕の笑みを浮かべる。
「俺たちの仕事はあぶり出すこと、だからな」
「あぶり出す?」
アキラはその言葉を繰り返す。
「何の話だ」
「山一族と海一族の生け贄だよ」
裏一族が云う。
「我々は、その生け贄を手に入れるために来た」
「何?」
「だが、失踪したそうじゃないか」
アキラは目を見開く。
「なぜ、そのことを」
「我々の情報網を見くびるな」
アキラは、はっとする。
トーマを見る。
トーマにも、この話は聞こえている。
「まさか。この火事は、そのために?」
裏一族は笑う。
ふと、視線が動く。
アキラとトーマは、その視線を追う。
「兄、様っ……!」
「カオリ!?」
声が響く。
「ほら、出てきた」
カオリが、そこにいる。
長らく帰ってこないアキラとトーマを探しに来たのか。
そして、
海一族に囲まれたアキラに驚き、この場に飛び出した。
「山一族、の、女の子?」
「仲間がいるのか!?」
まずい……
アキラの額に汗が流れる。
さらに現れた山一族に、海一族が動揺する。
裏一族が笑う。
「カオリ!!」
アキラが叫ぶ。
「逃げろ!!」
「え?」
と、
はじめにアキラの矢を受け、倒れていた裏一族が
突然、動く。
カオリの方へ。
「――っ!?」
一瞬のこと。
裏一族はカオリを抱き上げ、走り去る。
「待て!」
「カオリ!!」
「油断したな!」
「!!?」
短刀。
アキラは反射的に、それを避ける。
「アキラ!!」
トーマが裏一族を取り押さえる。
「おい、動くな!!」
「くっ……、まあ、いい」
「……カオリは」
アキラはあたりを見る。
が、その姿はもうない。
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