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「海一族と山一族」25

2017年09月19日 | T.B.1998年

落ち着いて見てみれば
彼らは海一族になりすました
侵入者。

けれども、
そこはさすが裏というべきか
場を混乱させる事に長けている。

「見てくれ、この怪我。
 あの山一族にやられたんだ!!」

「……本当だ、山、一族??」
「なぜこんな所に」
「まさか、この火事もあいつが??」

ざわざわ、と
集まった海一族の視線が
アキラに集まっていく。

「みんな、待っ」

違うんだ、と言いかけたトーマを
アキラが遮る。

「トーマ、俺を養護するな」

「だが」

アキラは背を向けたまま言う。

「今、俺を庇っても
 事態が混乱するだけだ」
「……アキラ」

分かった、とトーマは小さく頷く。
裏一族の目的は
この場をかき混ぜる事。
そうなる事で
動きやすくなるのは裏の方だ。

けれど、この状況は
アキラにとっても良い物ではない。
海一族達がじわじわと周りを囲んでいく。

「武器を棄てろ山一族」

だが、アキラは近寄る彼らに構うことなく
裏一族に矢を放つ。

「ひっ!!」

矢は、裏一族をかすめる。
元から中てるつもりはない。

「動くな、【海一族】!!」

怯んで倒れた彼らに
アキラは走り迫り
眼前に矢尻を向ける。

「お前達が侵入者だとばれるのも
 時間の問題だぞ」

アキラの脅しに怯みながらも、
裏一族はどこか余裕を見せる。

「俺達の仕事は
 あぶり出す事、だからな」

「あぶり、出す?」

その会話は
近くに居るトーマの所にも届く。

「予定が変わった。
 生け贄が急ぎ必要になったが
 山一族の村から失踪したそうじゃないか」

生け贄、という言葉に
2人は目を見開く。

そして、なぜ 
生け贄が失踪した事を
裏一族が知っているのか。

「まさか、この火事は
 そのために?」

トーマの言葉に
裏一族は笑う。

正解、という事。


「兄様!!」


声が響く。
カオリが、そこにいる。

あちこちで火事が起こる中、
長らく帰ってこないアキラとトーマを
探しに来たのだろう。

そして、海一族に囲まれたアキラに
驚いて、飛び出した。

「山一族、の、女の子?」
「仲間が居るのか!?」

もう1人現れた山一族に
海一族の皆が動揺する。

裏一族は笑う。


「ほら、出てきた」


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