TOBA-BLOG 別館

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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「山一族と海一族」27

2017年09月08日 | T.B.1998年

 アキラは海に出る。

 海を、見たのははじめてだ。
 けれども、これが海だと、アキラは理解する。

 港。

 何層もの舟が停泊している。
 これで、海一族は漁へと出るのだろう。

 アキラは肩で息をしながら、あたりを見る。
 鳥の鳴き声に、再度、走り出す。

 さらに、先の方に、海鳥とアキラの鳥。

 そして

 不自然な火。

「…………?」

 アキラは弓を握る。

「トーマ……?」

 舟が燃えている。
 その横に、トーマがいる。
 別の海一族も、いる。

 アキラは立ち止まる。
 簡単に姿を見せることが出来る立場ではない。

 様子がおかしい。

 なぜ
 海一族同士、燃える舟の横で云い争っているのか。

 ――お前は誰だ。

 ――見れば判るだろう。

 ――いや、海一族じゃないな!?

「!!」

 トーマが倒れる。

 海一族がトーマに拳を振り下ろしている。
 剣を取り出す。

「まさか」

 アキラは迷わず、矢を放つ。

「っぅう!?」

 海一族が声を上げる。

 アキラの矢は、剣を持つ者の手に刺さっている。
 剣が落ちる。

「誰だ!?」

 相手はふたり。

「ぐっ!!」

 アキラはさらに矢を放ち、相手の動きを止める。

「トーマ!」

 アキラは、トーマに駆け寄る。

「アキラ……!?」

 トーマと、ほかの海一族の間にアキラは立つ。

 意識がもうろうとしてるのか。
 アキラはトーマを見る。

「大丈夫か?」
「すまない。助かった」
「気にするな」

 トーマが立ち上がろうとする。

「待て」

 アキラはそれを制止する。
 弓を握る。

「無理をするな」
「アキラ」
「何だ」
「こいつらは、海一族じゃない」
「…………?」
「裏一族だ」
「裏、一族?」

 トーマが頷く。

 アキラが云う。

「殺しはしない」

 直感。

「すべて、吐いてもらうぞ」

 おそらく、山一族のことにも関わっている者たち、だと。



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