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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「海一族と山一族」26

2017年09月26日 | T.B.1998年

「カオリ!!」

アキラが叫ぶ。

「逃げろ。
 狙いはお前だ!!」
「え?」

今まで矢を受けて倒れていた
もう1人の裏一族が
急に立ち上がり、カオリに駆け寄る。

「いやっ!!」

一瞬の事。

裏一族はカオリを攫うと
山に向かい駆け出す。

「待て!!」
「カオリ!!」

思わず矢を逸らしたアキラに
残された裏一族がナイフを投げる。

「ぐっ」

アキラはすんでの所で避けるが
ここぞとばかりに
攻撃を仕掛けてくる。

「アキラ!!」

トーマも駆け寄り参戦する。
二対一となれば
裏一族も、さすがに取り押さえられる。

「……カオリは」

アキラが辺りを見回すが
もう、その姿が見えない。

「トーマ、
 何がどうなっているんだ?」
「ミナト!!」

トーマは見知った顔に安堵する。

「ちょうど良かった。
 さっきの奴を追ってくれ。深追いはするな。
 俺もすぐに後を追う」
「待ってくれ。
 何が起きているのかさっぱりで」

トーマは、取り押さえている
裏一族の顔を皆に見せる。
集まった皆は、
それが見知らぬ顔だという事に気づく。

「裏が、一族のふりをして侵入している」
「……マジか。
 じゃあ、こいつは」

と、横目でアキラを見る。

「山一族だが、敵じゃない。
 今は時間が無いから
 後で説明する」
「……分かった」

頷くと、ミナトはすぐに山へ向かう。
トーマとアキラは
裏一族を引き渡した後、それに続く。

「行こう、アキラ」
「ああ!!」

向かいかけて、アキラは止まり、
裏一族に問いかける。

「カオリが山一族の村に居ないと
 知っていたなら、
 なぜ、山に火をつけた?」

単純な事だ、と
裏一族は答える。

「山一族は予備を用意していたんだろう。
 俺達は生け贄であれば
 どちらでも構わない」
「なんだと」

取り押さえられて
身動きがとれなくなりながらも
笑いながら、裏一族は言う。

「案外あちらの生け贄も
 もう手に入れている頃かもな」


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