「おい! どういう状況だ」
今回の狩りの進行役が、戻ってきた四人を見つけ、駆け寄る。
狩りに出た班の中で、唯一戻っていなかった班。
丸一日、雨が降ったため、四人は、それからの下山となった。
みんな血だらけだったが、
怪我をしているのは、ひとりだけのようだ。
「悠也が怪我してるの!」
先頭を歩いてきた、紅葉が云う。
誠治が、悠也の肩をとり、歩いている。
悠也の意識はある。
「獲物にやられたのか?」
「ああ」
「悠也、痛みは?」
「大丈夫だ」
進行役が怪我を見る。
悠也には、応急処置が施されている。
「お前らがやったのか?」
紅葉が、涼を見る。
「涼が……」
「そうか」
進行役は、誠治を見る。
「とにかく、病院へ向かえ」
「わかった」
誠治は頷き、後ろにいた涼を、一瞥する。
病院へと、向かう。
狩りの進行役は、涼と紅葉を見る。
「何があったんだ?」
紅葉が答える。
「獲物……、熊二匹に当たってしまったの」
「本当か!」
「でも、二匹とも仕留めてある」
「それは……」
進行役は、ため息をつき、ちらりと涼を見る。
「無茶したな……」
涼は、目を合わせない。
「詳しくは、あとで聞こう。怪我人も出たからな」
進行役が云う。
「ふたりとも、一度、家に戻って指示を待て」
「はい」
「仕留めた獲物も、あとで、運びに出るだろうから」
紅葉は頷き、涼を見る。
涼は、歩き出す。
やがて、姿が見えなくなる。
広場に、紅葉と進行役が、残される。
進行役が、紅葉を見る。
云う。
「あいつが、何かしたのか?」
「え?」
「悠也の怪我の原因だよ」
紅葉は首を振る。
「……違う、けど」
「そうか」
「涼は、」
「まあ、でも」
進行役は息を吐く。
「あいつが、運悪くも同じ班だったんだ」
紅葉は、その言葉に、進行役を見る。
「どういうこと?」
「あることないこと、云われるんだよ」
「涼が?」
進行役は答えない。
紅葉は、眉をひそめる。
「そんなの、……ひどい」
「仕方ない」
「涼は、私たちを、……助けてくれたのに」
進行役は首を振る。
「あいつは、同じ西一族でも、違う存在だ。だろ?」
「それは、……」
「西一族ではあり得ない黒髪」
進行役が云う。
「それだけの理由で、十分なんだ」
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