新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

「関ヶ原」の決算書

2020年06月19日 | 日記

 関ヶ原の戦いにおいて、薩摩の島津家が西軍について闘ったにもかかわらず、戦後、家康から領地を没収されるとか、減らされるなどの制裁を免れたのはなぜか。著者は主としてそれを研究し、書きたかった。そこへ出版社側から、タイトルに「決算書」を入れたいとの申し出を受け、急いで序章と終章を書き加え、体裁を整えたというところだろう。新聞の書評や経済アナリストによる紹介ではそこまで書いていないが、私はそのように読みとった。「武士の家計簿」が緻密な論考だったのに比べれば、この本はどんぶり勘定であることを否めない。NHKテレビ「突撃! カネオくん」など経済ものが受ける時代に合わせた出版社側の販売戦略を責めることはできないだろう。
 大名、武将たちの財政事情を計算する基本を米に置いている。兵を集めるときに必要な食糧を、1人1日あたり米5合としている。よく食べるものだ。おかずはほとんどないだろう。おにぎりを1日2回かき込む。米1合は現代のお金に換算すると80円相当になる。10合が1升、10升が1斗、10斗が1石になるので、1石は8万円だ。10万石の大名はさしずめ年収80億円の社長というところだろう。ただ石高10万石の大名といえども、領民たちが食べる分、代官の手数料、年貢の運送料などを差し引くと実質は3割ぐらいしか自分のもとに残らない。24億円ほどだ。戦国大名の懐事情が垣間見えて興味をかき立てられる。