シャープが台湾の企業に買収される。100年ほどまえにシャープペンシルをつくりだした会社だ。100年まえといえば松下幸之助がせっせと二股ソケットをつくっていたころだろうか。会社名を早川電機にしたころは家電メーカーだった。テレビコマーシャルのせいで記憶に残っている。
そして書院というワープロ専用機を売り出したときから私はシャープファンになった。箱形のワードプロセッサーで印刷機と一体になった画期的な文房具だった。文章を書き、その推敲が自由自在にできて、いつでも清書した形で印刷できる。ノートや原稿用紙に下書きする手間を省けるのだから時間の節約にもなった。箱形からノートパソコンに近い平置き型に変わってからも、機能が日進月歩していたので2年ごとに新機種に買いかえたが、東芝やNECなど競合他社の機種には目もくれず、一貫してシャープの書院を使いつづけた。
そのうちの2台がいまも私の手元に残っている。1997年にパソコンを買うまでずっと使っていたもので、2台とも電源を入れればいまでも正常に作動する。いまは看板作製用の文字を出すのに使う。垂れ幕作成という機能をもち、B4のロールペーパーに大きな文字を無制限の長さで出すことができる。
文房具メーカー、家電メーカーだったシャープはその後、液晶画面に力を入れ、テレビの亀山モデルや電子辞書販売に乗り出す。電子辞書は私には仕事上、必要なものだが、リーダーズ英和辞典が入っている他社のものを選んだ。ハードに入れるソフトウェアの選択が私の必要性を満たさなかった。
ともあれ、私にとってワープロの代名詞ともいうべき存在だったシャープが外国企業に買収されるのは悲しいことだ。シャープはいったい何をつくることを主眼にしてきたのだろう。そしてシャープはこれから何をつくる会社になるのだろう。