「私の故郷は花咲く山里…」
福井県の高浜町に、韓国の童謡『故郷の春』のぎこちない歌声が響き渡ると、その場にいた韓国人と日本人の観衆はみな涙を流した。
今月1日、忠清南道保寧市に拠点を置く、韓国中部発電の社員たちによるブラスバンドが、友好都市の高浜町を訪問しコンサートを開催した。保寧市と高浜町は2007年秋に友好都市の提携を結び、中部発電のブラスバンドの訪日は昨年に続き2回目となる。
2004年、保寧市の泥祭りに高浜町のオーケストラが招待され、コンサートを開催したのをきっかけに、両市町の音楽関係者たちの交流が始まった。その後友好都市提携へと発展し、最近ではホームステイなどの民間交流も活発に行われている。
この日のコンサートでは、高浜町の小学生や韓国語講座の受講生など55人が、ブラスバンドの演奏に合わせて韓国語で『故郷の春』などを合唱した。合唱団のメンバーたちは、この日のために40日以上にわたり練習を重ねてきたという。
高浜小学校に5年間留学している韓国人のク・ダヨンさん(6年生)は「日本の友だちと一緒に『故郷の春』の練習をするたび、保寧に住む家族のことが思い出された。歌がみんなを感動させた」と涙を見せた。また、高浜町民の広瀬トシ子さん(65)は「国境を越え、心から心へと伝わる感動を味わった。きょうのコンサートに参加した子どもたちは今後、日韓両国の間でどんなことがあろうとも、両国の友好のために力になるだろう」と話した。
中部発電のブラスバンドのメンバー12人は、開天節(韓国の建国記念日、10月3日)の連休(今月1‐3日)に合わせ、会社の支援を受けず、自費で日本を訪れた。実力は専門の音楽家たちと比べ物にならないが、韓日両国や保寧市と高浜町の交流に貢献しようという自信がみなぎっていた。彼らを出迎えた人口1万4000人の高浜町もまた、町全体がお祭りムードに包まれた。コンサートが開催された日の朝には、約300人が参加して「健康ウォーキング大会」が行われ、町民とブラスバンドのメンバーたちが一緒に8キロの道のりを歩いた。
ブラスバンドのメンバーたちは、高浜町の合唱団が『故郷の春』を歌ったお返しに、日本の童謡『夕焼け小焼け』を日本語で披露し、約200人の観衆から拍手喝采を浴びた。高浜町教育委員会の江藤カズオ教育長は「ここは小さな町だが、昔ながらの日本的な真心が生きているところだ。今後もずっとこの日のことを記憶にとどめてほしい」とあいさつした。これに対し、中部発電保寧火力本部のアン・ギョンチェ部長(ブラスバンド団長)も「日本と日本人の真の姿に接することができた。次の機会にも必ず訪れたい」と答えた。