「韓国で制作した韓流番組を中国のテレビで放送し、世界に発信」
「韓流」を世界に広めるために中国のテレビを利用する? 一見、荒唐無稽(むけい)に思えるが、英語専門チャンネル「アリランテレビ」はこれを積極的に推し進め、数多くの目に見える成果を挙げている。その先頭に立つのは、2カ月前に就任したアリランテレビのソン・ジエ社長(48)。アリランテレビは韓国国際放送交流財団が運営するテレビ局だ。
24日に中国・広州を訪れたソン社長は、アリランテレビが制作する韓国の芸能情報番組『ショービズ・コリア』を来月から広東テレビ国際チャンネルを通じ全世界に放送する、という契約を広東テレビと結んだ。広東テレビ国際チャンネルは、広東省当局が運営する広東テレビが全世界に向け放送している英語放送だ。広州で本紙記者と会ったソン社長は「10月にスタートするK-POP歌手たちのライブ番組『ウェーブK』を、中国中央テレビの『風雲音楽チャンネル』(ケーブル)や広東テレビに供給する案も進めている」と語った。この案件はどちらも「韓国で制作した韓流番組を中国のテレビで放送し、全世界に配信する」ものだ。アリランテレビはさらに、中国中央テレビ・蘇州テレビ・天津テレビ・敦煌テレビなどとも同様の交流拡大を推進する方針だ。
ソン社長はニューヨーク・タイムズ紙ソウル特派員、CNN特派員とソウル支局長を務めた元ジャーナリスト。昨年、18年間の外国メディア記者生活にピリオドを打ち、ソウルで行われた主要20カ国・地域(G20)首脳会議の準備委員会スポークスマンや大統領府海外広報秘書官などを経て、8月にアリランテレビの社長に就任した。
「海外メディアもアリランテレビも韓国のことを海外に伝えるのは同じですが、海外メディアのニュース判断基準で見ると、韓国発のニュースはほとんどが核問題や6カ国協議、金正日(キム・ジョンイル)総書記の健康状態といった北朝鮮関連のニュースに限られ、息苦しさを感じていました。ところが、アリランテレビでは韓国経済・文化・社会などさまざまな側面を伝えることが可能で、視野が大きく広がった。海外メディアの記者時代に(報道)したくてもできなかったことを、今は全てできるようになりました。真の『韓国人ソン・ジエ』に戻ったような気がします」
ソン社長はCNN記者時代、ソウル発のニュースの生中継を数多くこなし、「英語の達人」として有名になった。小学校2年生から4年間、駐米韓国大使館に勤務していた父親と共にワシントン生活し、英語を習得したという。「英語を母国語としない国でも、英語で24時間、海外の衛星放送を流している国がかなり増えています。フランスのFrance24、中国中央テレビニュース、日本のNHKワールドなどがありますが、どれも自分たちの文化や発展の姿、国際問題に対する自国の見解を伝えるのが目的です。アリランテレビは今後、受信している世界188カ国9190万世帯を2013年までに1億世帯にまで増やすつもりです」
ソン社長は、その経歴から「キャリアウーマン」の代表格として注目されている。しかし、「記者生活で最もやりがいを感じたことは?」と聞くと、「今3歳になった娘を出産し、母乳で育てたこと」と答えた。現在、しゅうとめと同居しているソン社長は「後輩の女性記者たちには『つらくても子育てや家事をきちんとこなすことが自分のキャリアにも役立つ』とよく話しています」と笑った。