このほど歌手イ・ジャンヒ、ソ・ユソク、『昭陽江の少女』の作曲家イ・ホ氏(故人)の親族らが相次いで著作権料請求訴訟を起こしたのをきっかけに、歌謡著作権問題に注目が集まっている。こうした人々は音楽著作権協会会長やレコード・CD制作会社などを相手取り、それぞれ数千万-数億ウォン(1000万ウォン=約72万円)の著作権料返還を求める訴訟を起こした。音楽著作権協会も通信事業者や宗教団体などを対象に著作権料の支払いを求める訴訟を進めている。
そこで著作権料の額はどのくらいで、これを算定・分配する仕組みはどのようになっているのか調べてみた。
■年間1000億ウォン以上の市場
音楽著作権協会によると、昨年末現在でポップスなど大衆歌謡を中心とした音楽著作権使用料収入は1000億ウォン(約72億円)を上回った。2000年代初めまでは年間200億ウォン(約14億円)程度だったので、10年たたないうちに約5倍に膨らんだことになる。放送・公演・CDショップなどの音源使用市場はますます拡大しており、著作権使用料の額はさらに増える見通しだ。
著作権料は、文化体育観光部(省に相当)の管理・監督を受けている音楽著作権協会が著作権者の委託を受けて徴収した後、5-20%の手数料を差し引いて分配するというのが一般的だ。現在、同団体に著作権料の徴収を委任している作曲家・作詞家・歌手らは1万2000人余り。著作権料分配の割合は作詞者・作曲者・編曲者がいる場合は5対5対2、作詞者と作曲者だけの場合は6対6だ。
例えば、歌手シン・スンフン自ら作詞・作曲した「その後ずっと」がKBSラジオで放送されたとしたら、使用料は通常1回当たり1万ウォン(約720円)。このうち、協会手数料(12.5%)を除くと、著作権者であるシン・スンフンに渡る額は8750ウォン(約630円)になるはずだ。ところが、この曲は編曲者がいるため、作詞・作曲したシン・スンフンが手にする額は7290ウォン(約525円)ほどだという。
作曲・作詞をせず、歌だけを歌っている歌手には著作権料がない。例えば、「国民的歌謡曲」と言われているキム・スヒのヒット曲「愛慕」の著作権料は作詞者・作曲者・編曲者だけに分配される。
著作権料でないが、歌手やバンドなどは歌のヒットに寄与した貢献度に応じ「著作隣接権」が認められている。それでも徴収額は著作権料を大きく下回る年間100億ウォン(約7億2000万円)程度だ。
■透明性に対する疑問が訴訟に発展
著作権料を最も多く稼ぐ分野はインターネットや携帯電話などの音楽配信サービスで、年間300億ウォン(約21億6000万円)を超える。
次いで居酒屋・高級クラブ・ディスコ・カラオケなどの遊興飲食店6万カ所で270-280億ウォン(約19-20億円)程度。遊興飲食店の著作権料は毎月一定額を決めて受け取る月額方式で、業態の規模により異なる。高級クラブやディスコは月2万7000ウォン-25万ウォン(約1900円-1万8000円)、居酒屋は月2万4000ウォン-20万ウォン(約1700円-1万4000円)、居酒屋は月2万ウォン-15万ウォン(約1400円-1万1000円)、カラオケは1個室当たり月4500ウォン-7500ウォン(約320円-540円)などだ。
このように徴収された著作権料は作品ごとに歌われた回数が計算され、著作権者に配られる。歌われた回数はインターネット集計システムや一部企業に設置されている標準集計システムなどで算定される。
地上波・ケーブルテレビチャンネルを含む放送は170億-180億ウォン(約12億2000-12億9000万円)の著作権料を稼ぎ出す。協会は各放送局の前年度売上高を基準に計算した1年間の使用料を四半期ごとに受け取り、放送回数などを反映させ同じく四半期ごとに著作権者に分配する。放送回数は各放送局の番組選曲表と照らし合わせ計算する。
このように、一応規制システムが整えられているのにもかかわらず、トラブルが増えている理由は何だろうか。歌謡界の関係者や専門家は「著作権料徴収の権限が1カ所に集中していることで協会の権限は大きくなったが、透明性も同様に強化されているかどうかは疑問だ。また、著作権に対する歌謡界関係者の権利意識が高まったことも一因」と指摘している。このため、「著作権料徴収・分配の独占構図を打ち破り、けん制とバランス原理が機能するようにしなければならない」という意見が多い。