自動販売機

前の会社に勤務していた頃の話である。

エレベーターホールには飲み物の自動販売機があり、その時私は缶コーヒーか
何かを買ってエレベーターを待っていた。

横に新入社員の女性が二人いた。二人は私の課員ではなかったが、
同じフロアだったので、面識はあった。面識はあったが、その時はその二人と話を
するわけでもなく、ちょっと離れた位置に私は立っていた。

ひとりが「私さあ、最近　男と別れたんだよね」と言った。
もうひとりは特に驚く様子もなく「ふーん」と相槌を打っていた。

横に面識ある私がいるのに、そんなプライベートなことを話してもいいのか、と
驚いた。

話は進み「で、どうなの」的な話になっていった。

エレベーターには私ひとりが乗った。

彼女たちにとって、私は自動販売機みたいなものなんだな、とやっとわかった。


新年から、こんな話ですみません。
今年もよろしくお願い申し上げます。