![]() | 永遠も半ばを過ぎて (文春文庫)中島 らも文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
「永遠も半ばを過ぎて」中島らも
……うーん、やっぱこの人は天才だね。亡くなったのがとても悔やまれる。1冊読み進めるたびにそう思う。今回は、ドラッグやらアルコールに依存する人たちがみんなで詐欺をしようって話。
毎度毎度のことなんだけど、これはこの人一流の芸だね。これってのはもちろん酒と薬物。フィクションとは思えぬリアルな造形が、登場人物に芳醇な味付けを施していて、いちいち言動が面白い。作品全体の方向性も、ちょっと他に類を見ないほどにぶっとんでいて痛快だ。
老舗の家具屋を手形詐欺に騙されて潰された相川、写植屋一筋の職人・波多野、アル中予備軍の女編集者・美咲。世を拗ねたひねくれ者たちが、電算写植機一休が勝手に生み出す物語「永遠も半ばを過ぎて」に無理矢理な来歴をくっつけて出版しようともくろむ。しかもこの人たち、30~40くらいのこてこてな中年だから、明かされる人生遍歴ひとつとったって一筋縄ではいかない。そんな人たちが、医者や編集長や町工場の社長や新進の芸術家や、果ては出版業界全体をだまくらかそうってんだから、これはもう面白くないわけがない。是非ご一読を。
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