はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

魔法少女地獄

2012-10-06 22:04:57 | 小説
魔法少女地獄 (講談社ラノベ文庫)
クリエーター情報なし
講談社


「魔法少女地獄」安藤白悧

 三田村黒犬・15歳。魔法少女という存在が公認化された世界の中で、自然と「ワルモノ」を引き寄せてしまう彼の体質は貴重だった。存在価値という意味において。
 彼は助けられる側だった。男なのにヒロインだった。
 面白くなかった。自分がヒーローだとうぬぼれているわけではない。無力な一高校生だという自覚はあった。
 でも、だって。
 女の子に助けられてへらへらありがたがっている男は、それは男じゃない。
 僕は……僕は……。
 心の叫びに押しつぶされそうになっていた彼の前に、ある日先輩は現れた。古き「魔女」の血を引くという彼女は、彼にこうもちかけた「魔法少女絶滅計画」に乗らないかと……。

 タイトルとあらすじを見て気になっていた人は多いんじゃないでしょうか、この作品。
「魔法少女」を「絶滅」するっていうことは、「悪役に敗北する魔法少女」をたくさん見ることができるっていうことですから。その手の男衆にはたまらないシチュエーションであります。
 僕自身がどうかというと、そこは想像にお任せしますが……まあ、嫌いではないです。
 というか、正直いって大好物です。
 だからこそ、この作品にはがっかりさせられました。
 最初の格闘少女を屈服させる先輩の手練手管は良かった。激闘に打ち勝ち、プライドをへし折り、屈辱の一言を吐かせるまでは最高だったんですが、そのあとが良くない。
 当の格闘少女と同じクラスに所属しているくせに、互いに存在を認知しているくせに、なんの追い打ちもフォローもない。それじゃダメだろう。なんのために堕としたんだ(血涙)!
 ……いや、そんな目的じゃないのはわかってるんですけどね。読者視点からするとってことですよ。
 そこからちょっとおかしいなと思い始めて、その違和感は最後まで消えませんでした。
 次々と現れるはいいが長編物アニメの総集編のようになぎ倒されていくだけで、味もそっけもない魔法少女群。脈絡もなく姿を現したラスボス。基本的に考えなしな先輩の行動。どうでも良かった黒犬の出自。解決方法も大味で、かなーり評価を下げました。
 設定だけは良かったので、1話完結じゃなく、長編物にして、1話につき一人堕とす形にしてくれれば神シリーズになったんでしょうが……。うーん、返す返すも残念。同氏の次回作に期待しておきましょう。設定だけはいいんですよ。設定だけは……。

マグダラで眠れ

2012-09-23 11:13:54 | 小説
マグダラで眠れ (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキーメディアワークス


「マグダラで眠れ」支倉凍砂

 人々が新たな技術を求め、富を求め、異教徒の領土へと侵攻する時代。錬金術師の青年クースラは、研究過程で教会の教理に背く行動をとった罪で、最前線の街・グルベッティの工房へと飛ばされる。昔なじみの問題児・ウェランドと共に訪れたそこは、前任者トーマスが何者かに「暗殺」され無人になったといういわくつきの工房だった。
 情報や物資の供給が豊か、工房自体の設備も整っている。でもトーマスの絡みもあるし、教会側からは監視者としてフェネシスという名の少女も出張ってくるしで、なんともいわく言い難い落ち着かなさが漂う中、2人はトーマスの成果……偉業に触れることになる。それは……。

「狼と香辛料」のあの人です。前回は交易、今回は錬金ってところですか。さすがにマイナーな分野をついてきます。あ、ちなみに、鉛を金に変える、とかではなく、科学の元型である、現実的なほうの錬金術です。両手をパンと合わせても何も出てきません。
 資料を読み込んでいるのでしょう。錬金知識が文章のはしばしに感じられ、安心して読むことができました。このへんの安定感も相変わらず。
 騎士団と教会の対立。マグダラを求める(ここでは錬金術師の追い求める境地、抱えるカルマそのもの、といった意味)錬金術師たちの情熱。彼らを渦巻く陰謀。トーマスの秘密。構成も重厚で読みごたえがあります。
 とくに、人に騙され利用されやすい哀れな少女フェネシスの存在感が抜群で、物語に重い緊迫感を与えています。人としての倫理など持ち合わせていないウェランドの、性行為まで辞さない暴力。ウェランドから彼女を守りながら、同時に騙し利用する方法を模索するクースラ。2人のキャラの立て方も素晴らしいの一言。
 駆け引きや人情の機微が「大人ー」な感じで、だからというか、ライトノベルのファン層的にどうなのかという気もするのですが、僕の感性にはびびっときました。今後に注目のシリーズです。

ブラパ THE BLACK PARADE(1)

2012-09-08 22:29:52 | マンガ
ブラパ THE BLACK PARADE(1) (ヤングガンガンコミックス)
クリエーター情報なし
スクウェア・エニックス


「ブラパ THE BLACK PARADE(1)」緑のルーペ

 河野留美(男)は、変わり映えしない日々にいら立っていた。自分が何をしようが、何をしまいが、現実は変わらない。変えられないことも、変えられない自分も気に食わなくて、日々腐っていた。そんな留美の唯一の楽しみは、どこか遠くへいくことだった。といって、そんな遠くへ行くわけじゃない。自分の生活範囲からそれほど逸脱することなく、ほんのちょっとした小旅行を楽しむ。あの山を越えたら、あの川の上流には……そんな些細な逃避行の先に、その場所はあった。とあるトンネルをくぐると、そこには打ち捨てられた廃工場があった。高い煙突と、用途の想像もできない様々の設備、路面電車と思われるものまで。
 フジノという名の少女との出会いは、唐突に起こった。いきなり向こうからつっかけてきて、間接を極められ、鼻血を出させられ、一方的な決闘を申し込まれた。
 怒る気にはなれなかった。エキセントリックで、暴力的で、どこまでも理不尽で、でも彼女は美しかった。わくわくした。自分にはない何かを持っていた。だから、留美は彼女と共にあることにした。
 フジノは、廃工場の各所に様々な名前をつけた。路面電車にはブラックパレード、工房跡にはククルカン……まるで昔のRPGの冒険を地で行くように、各地を旅した。食料を携え、火を起こして煮炊きをし、路面電車に寝泊まりし、不良軍団をも撃退する。
 そんな無敵な彼女にも、弱点はあった。なんといっても彼女は女の子で、暗闇や人間関係を恐れた。留美はそんな様々な彼女の表情にいつの間にか惹かれていた……。

 僕も、小学生の頃には近くの駅舎の片隅に新聞広告や割り箸なんかで構築した貧弱な秘密基地を作って遊んでいた口なので、2人の行動指針には大いにうなずけました。高校生にして「まだ」そんなことやってんのか、という冷静な意見はあるかもしれないけど、だからこそ2人が羨ましく感じました。それぐらいの年齢で、しかも男女の垣根を越えて大真面目な妄想を共にしてくれる友達なんていないです。絶対に。男じゃだめなんです。女の子だからこそいいんです。
 とまあ鼻息荒く語ってしまいましたが、いま僕が語ったようなフレーズがちょっとでもひっかかった人は迷わず買うべき。
 ちなみにこの作者さんはエロマンガ畑の人なんですが、そんなことをまったく感じさせないようなストーリーテリングのうまさでした。次巻にも期待です。

のれんをくぐりましょ。

2012-08-17 22:34:20 | マンガ
のれんをくぐりましょ。
クリエーター情報なし
イースト・プレス


「のれんをくぐりましょ。」竹ノ内ひとみ

 呑むことが好きで、食べることが好きで、それが高じて小料理屋のバイトになり、最終的には漫画家になった筆者による小料理屋本。
 なのでまあ、漫画としての面白さとか起承転結などというものは一切ありません。ただひたすらに、小料理屋の四季やハウツーを描き切った作品です。
 面白いかどうかは読み手次第。
 
 僕としてはかなり楽しめました。小料理屋という独特な業態には昔から興味があって。でも間口の狭さや情報の少なさから二の足を踏んでいたのですが、この本を読んで、意外な気安さや入りやすさに驚かされました。
 要は家庭料理に特化した居酒屋なんですな。居酒屋ほどに全方向に向いてなくて、人を選んで、あげく情報を発信してないもんだから一見さんお断りの雰囲気を作っていると。
 ネット全盛のこのご時世、なんの情報もなしに新規店舗を開拓するのは怖い部分もあって、だからこそよりマイナーな雰囲気を醸成していると。
 入るのに必要なのは、暖簾をくぐる勇気だけ。
 もちろん当たり外れはありますけれど、得られるものはそれ以上に多いかもしれません。
 一人で入るのが怖ければ、友達でも誘ってみては?
「自分達だけの隠れ家的な店」は、座していては手に入りません。
 
 

ギフテッドII

2012-08-08 11:37:51 | 小説
ギフテッドII (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキー・メディアワークス


「ギフテッドII」二丸修一

 天子峰の幹部候補生となった綾芽、弥助、エルの3人は、それぞれ上中下級の役職についていた。初仕事は綾芽に与えられたもので、彼女はパートナーに弥助とエルを選んだ。ちょうど1巻のラストとつながるところかね。
 んで、肝心要の任務の内容は、まさかの大統領選挙。内乱と外圧で揺れるナバサ共和国の大統領を3人の候補者の中から選び、勝たせること。敵は、同じく天子峰の上級幹部ケネス・ムビタと敵対企業連合体からの刺客・長良喜平。権謀術数に加えて純粋なる暴力まで駆使しなければならない真剣勝負に、果たして新米幹部の弥助たちは勝利できるのか……?
 
 まさか選挙でくるとは思わなかった。新鮮でいいけど、大丈夫かね? という不安も強かった。題材として難しいからね。
 金に汚い大富豪に、前大統領の道楽息子に、強硬派の堅物将軍。3者3様の立場や個性の違いが際立っていた良かった。戦い方に関しては、ディティールの甘さ、行間の狭さ、説明不足が目立った。やはり、この作者にはまだ早かったと思う。
 経験不足のせいか、綾芽はあまり活躍できなかった。エルはまあ平常運転。弥助への恋心に気付いた下りは○。今後に期待。
 で、弥助はというと、敵対相手やナバサ共和国の人々との関わりの中で急激に成長した。人間味が増すことは弱くなるということでもあると思うので手放しに賞賛はできないが、面白いキャラになりそうな感じ。ちょっとあっさりすぎるというか、本来なら何巻もかけてやることを1巻で一気にやってしまったのが不満ではある。シリーズ構成どう考えてるんだろうね? いきなり3巻で終了、打ち切りとかはないと思いたいけども。

人類は衰退しました のんびりした報告

2012-08-03 15:27:33 | マンガ
人類は衰退しました のんびりした報告 (IKKI COMIX)
クリエーター情報なし
小学館


「人類は衰退しました のんびりした報告」原作:田中ロミオ 漫画:見富拓哉

 最近放送中のアニメを面白く拝見しているので購入。
 設定準拠のオリジナル話のようで、原作既読の方でも楽しめるのではないでしょうか。ちなみに僕は原作未見。
 国連の回し者で、妖精さんと交流することがお仕事の、調停官の「わたし」がちっちゃな妖精さんたちと過ごす日々は、終始のんびりと穏やか。もう鳴らせないCDを鳴らそうと奮闘したり、不完全なレシピからマロングラッセを作ろうと試行錯誤を繰り返したり、ギャンブルにはまったり……常にべったりというわけではないけれど、「わたし」からそう遠くない位置に妖精さんがいて、彼ら(彼女ら?)との稚拙で素朴なコミュニケーションになごむ「わたし」になごむ、という図式がなかなかいい味出してました。
 アニメの「わたし」のような毒舌はないし、考えて見れば見た目もかなり違うので、あの「わたし」とは違う「わたし」なのかもしれませんが、これはこれでありかなと思います。
 個人的には、上手いとか下手とかいう次元を超越した独特の味のある絵のタッチが好きですね。水没した街とか、崩れたビルとか、意味をなさない電化製品の山とか、アニメでは表現しきれていない「衰退した」空気感を描ける見富さんに漫画を任せたのは正解だったと思います。大江千里とか森高千里とかシベリヤとか、時折挟む小ネタに同世代の匂いを感じたりもしますし……。

丘ルトロジック4 風景男のデカダンス

2012-07-29 10:37:35 | 小説
丘ルトロジック4 風景男のデカダンス (角川スニーカー文庫)
クリエーター情報なし
角川書店(角川グループパブリッシング)


「丘ルトロジック4 風景男のデカダンス」耳目口司

 最終巻……だと?
 作者の卒業(大学生だったようで)に合わせてキリのいいところで打ち切りってあたりが真相だと思うんだけどどうだろう。読み手を選ぶもんね、この作品。
 
 今まで謎ばかりだった沈丁花の目的は、彼女の愛した神秘世界や奇跡やそれによって引き起こされる感動を衆目に知らしめることだったのだ! どどん!
 いやまあそれはいいんですけど、そのための手段がちょっと……ねえなにこれ。ただのテロ……いや集団自殺か?
 とにかくすさまじく斜め上をいってた。世に未曾有のカオスを巻き起こし、そこに神秘やらなんやらいう怪しげな要素をぶち込んでかきまわして煽ってクラッシュさせた。沈丁花の子供じみた妄想のせいで、けが人だけでなくリアルに死人まで出てた。咲丘たちも殺されかけた。
 フォローしようがないほどにひどかった。ラノベだってやっていいことと悪いことがあるんじゃないだろうか。これにノレってのは無理がある。僕らは戦争を知らない子ども達かもしれないけど、でも9.11は知ってるんだぜ? フィクションの世界に道理常識を持ち込んでもしょうがないとはいっても、これはさすがに誰の共感も得られないだろ……。
 これでは咲丘がかわいそう。彼の沈丁花への想いはたった数日にして木端微塵に打ち砕かれてしまった。好きになった人がこんな化け物だったなんて、ねえ。咲丘自身も変態だけど、にしてもなあ……。
 江西陀さんが救いの愛の手を差し伸べてくれてよかった。エピローグでほっとできた。この作品の良さは、やはり最初から最後まで江西陀さんだった。彼女と咲丘との掛け合いがあったからこそ読みきれた。
 日常パートのお話は大好きなので、次回作があるとしたら、頼むからもうすこしおとなしめなのにしてください。

風の日にララバイ

2012-07-26 11:16:07 | 小説
風の日にララバイ (ハルキ文庫)
クリエーター情報なし
角川春樹事務所


「風の日にララバイ」樋口有介

 有名宝石店の美人社長が何者かに殺された。彼女は5年前に分かれた元妻だった。
 とある理由から大学を辞め、絶賛無職中の佐原は、お手伝いのお松さんや娘の亜由子に自堕落な生活態度を呆れられながら、いつもの日常を送っていたのだが、元妻の死に感じるところがあって、事件の真相を探ることにする。
 元同級生で刑事、元同級生で妻の親友だった老舗宝石店の女社長、退職した汚職警官など、ひとくせもふたくせもある連中と渡り合いながら佐原は徐々に真相へと迫る。
 妻よ、どうして君は、殺されねばならなかったのだ……?
 切なる声が、真実の深い闇へと光をもたらす。
 
 まあ、いつもの樋口節です。柚木草平と佐原を入れ替えてもまったく問題なく話が通じる、というくらいキャラも似てます。マンネリ? うん。でもこれがいいんだよね。樋口ファンってみんなそうでしょ?
 ヒロインは、大学で彫金を学ぶ萌。ポニーテールに少林寺拳法に明るい性格、という、樋口作品にしては珍しいタイプ。少年漫画にでも出てきそう、という意味で。
 とめどもなく流れる時間と、それぞれの人間関係の中に降り積もった澱と、倦怠感の間で揺れ動く佐原を軽やかに爽やかに癒し、ついでに心までも融かしていく様は、微笑ましく愛らしく、描写が少ない割には印象深かった。
 佐原の研究家としての側面や、大学辞めた設定などがなにひとつ生きていないのは残念だけど、ところどころに光るコミカルな要素(お松さんとか)や素敵な未来予想図のおかげで、最後まできちっと楽しめました。
 願わくば続編やスピンオフを、といいたいところだけど無理ですかね。なにせ15年前の作品だし。佐原・萌コンビ好きなんですがね。この2人とお松さんと亜由子も含めた絡みを見て見たい。

空に唄う

2012-07-21 21:53:18 | 小説
空に唄う (河出文庫)
クリエーター情報なし
河出書房新社


「空に唄う」白岩玄

 新米僧侶の海生は、碕沢さんという同い年の女性の幽霊と知り合いになった。物に触れても硬くて動かせず、熱さも寒さも感じず、誰の声も聞こえないという不便な彼女。でも、海生だけは違った。海生とだけは波長が合うのか、触れ合うことも話をすることもできた。
 碕沢さんと、ちょっとおかしな共同生活をおくる中、海生は徐々に彼女にひかれていく自分に気付く。これはただの同情か? それとも本当の恋なのか?
 しかし生来の押しの弱さと気ぃ遣いのせいで、もう一歩が踏み出せない海生。2人の関係は生者と死者のまま、プライヴェートな部分に触れることもできぬまま、無情にも時は過ぎ、そして……。
 
 以下ネタバレ注意。
 いまさらか?






 








「野ブタをプロデュース」の堀北は可愛かったなあ、ぐらいの気持ちで手に取ったら、あらすじが面白そうなのでそのまま購入。
 軽くてふわっとして読みやすい海生の一人称と、気の弱さ、碕沢さんの存在のあやふやさがマッチしていて、抜群ではないけども独特の雰囲気のある作品に仕上がっていた。面白かった。
 最後まで碕沢さんの本当の気持ちやプライヴェート部分が謎のままだったのは寂しかった。それが良さではあるんだろうけどねえ。でもねえ。これって、最悪の場合を考えるとものすごい切ないわけですよ。それはつまり、碕沢さんが成仏したのではなく現世にとどまったまま、単に海生に見えなくなっただけかもしれないと考えると……。
 ね? やだよね。そんなの。
 だから考えたくはないんだけど、考えないわけにもいかなくて、だから海生は、「空に唄う」のではないかなーと考えました。
 もう自分の手には届かない、おそらくは声も聞こえない。それでもなんとか、うまくいっていてほしい。それは切なる願いだったのだと。
 こういうことを考えると、人間同士の相互理解って難しいなと思うよね。自分がわかっているつもりでも、向こうがそう思っているかどうかはわからない。ただひたすらに願うのみ。それでもそうせざるをえないのが人間。人間って馬鹿だよね。そこが可愛いいとこでもあるんだけど。そんなメッセージがこめられているように感じました。この人、けっこう面白いな。他のも読んでみるか。

六花の勇者(2)

2012-07-16 15:07:25 | 小説
六花の勇者 2 (六花の勇者シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
クリエーター情報なし
集英社


「六花の勇者(2)」山形石雄

 魔神を倒すべく選ばれた6人には、それぞれの体に6枚の花弁が、勇者の証が現れるという。
「7人」揃ってしまった勇者一行の中に、誰か1人、裏切り者がいる……。
 自称・地上最強の男・アドレットは、疑心暗鬼に陥った7人の中、自身が最有力候補として何度も殺されかけながら知略智謀を張り巡らせて裏切り者をいぶり出すことに成功した。殺すことはできず、追い払うだけだったが、なんとか魔神との戦いに集中できるようになった。
 ……のだが、アドレットたちの前に、「もう1人」の勇者が現れた。彼女の名はロロニア。山の聖者モーラが認め、アドレット自身にとってもなじみ深い少女だった。
 前回の戦いでアドレットに信を抱き始めた一行は、彼の頭脳に期待を寄せる。今度もまた、見事に事態を解決してくれるのではないかと。
 が、そううまくは運ばない。時同じくして一行の前に現れた凶魔テグネアは奸智に長け、一行との死闘の最中にも巧みに裏切り者の存在を匂わせる。焦りと不安から行動がバラバラになり始めた一行は、さらなる窮地へと追い込まれていき……。

 練り込まれたミステリパートは好評だった前作と比べてもなんら遜色のない出来。ストーリーテリングも相変わらずの絶妙な力加減で、最後まで安心してジェットコースターに乗れた。
 とくに良かったのは人間関係。アドレットのことをすっかり意識するようになり、なんと嫉妬までみせるようになったフレミーや、わがままな中にも落ち着きを見せるようになったチャモ。ワンアクションでアドレットと絶妙のコンビネーションを見せるようになったハンスなど、それぞれの個性に合わせた距離の詰まり方が愛おしかった。
 まだまだ伏線もあり、疑問も多い一行が、敵地まっただ中で今後どのような戦いを繰り広げていくか、楽しみでならない。