はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

K-1 WORLD GP 開幕戦inKOREA

2007-09-30 14:41:37 | 格闘技
K-1 WORLD GP 開幕戦inKOREA

 12月の決勝トーナメントに向けた初戦。

○セーム・シュルトVSポール・スロウィンスキー× 1R2:12KO
ホースト直伝のコンビネーションで攻め立てるスロウィンスキー。ブレギーを倒すなど成長著しい彼だが、今回は相手が悪かった。
 ロー、前蹴り、ミドル、膝etc……足技の弾幕に阻まれ前進の止まったスロウィンスキーを、シュルトの岩のような左ジャブが痛めつける。とどめは間合いを詰めての左膝。危なげなくつまらない圧勝。

○グラウベ・フェイトーザVSハリッド・ディ・ファウスト× 判定3-0
 極真戦士対道楽ファイター。グラウベの完勝かと思いきや、ファウスト善戦。今日一の良い試合となった。
 ファウスト足技はほぼないものの、パンチがいい。フックにストレートを混ぜ、連打連打でグラウベを追い詰める。藤本なんかと違って狙いが的確で、ぶん回してる感がないのも好印象。
 対するグラウベも悪くはない。ガード一辺倒に追い込まれる危険な局面は何度もあったが、一発の膝で流れを取り戻すことができるのが強み。1Rで2度奪ったダウンは、カウンターの膝とガード状態から最短距離を走る正拳突きによるもの。空手が見に染み付いた彼らしいアドバンテージ。
 2R。劣勢も、離れれば地獄が待っていることを知るファウストは下がらずインファイト。ダメージの名残も見せず元気に殴りまくる。会場からも拍手。アッパーやボディなど打ち分けが欲しいところ。
 グラウベはガードを固めてミドル、ハイ、ブラジリアンキックに膝。意外とよいのが顎を狙う右の蹴り上げで、この速さにはファウストも面食らっていた。
 3R。明らかに有効打を被弾しているのに倒れないファウスト。あげくパンチを返したりする様に会場熱狂。判定グラウベ勝利は順当だが、ファウストの株は下がらなかった。

○レミー・ボンヤスキーVSステファン・ブリッツ・レコ× 1R2:39KO
因縁の対決は、開始から火花がバチバチ飛び散るような熱戦。ストレート系のパンチで押すレコを迎え撃つレミーは、フック系のパンチや回し蹴りを多様する。流れの中から例の飛び膝が出る展開が、調子のよさを物語る。
 互いにテクニシャン同士プライドの高い者同士だからさぞや面白い試合になるだろうと思いきや、最後は寒い終わり方。レミーの飛び膝でダウンを喫したレコが、10カウント以内にファイティングポーズをとらなかったとしてレミーの勝利。俺も含めて多くの人間には間に合ったように見えた。それは場内一斉のブーイングからも明らか。しかしジャッジは覆らず、谷川EP必死のフォローも空転。藤原紀香も思わずびっくり。

○ジェロム・レ・バンナVSパク・ヨンス× 1R0:41KO
交通事故で欠場したカラエフの代打は韓国のテコンドーチャンプ。
 距離をとって蹴りたいパクだが、尋常でないバンナのプレッシャーに圧され、いいところが出せない。ガードが下がり気味でこれは危ないな……と思っていたら、案の定の右フック一閃。公開処刑。

○バダ・ハリVSダグ・ウィニー× 2R1:23KO
 ダグ・ウィニーはニュージーランドのボクシング元五輪代表だとか。なるほどパンチがいい。出入りも激しくバダ・ハリやりにくそう。しかしキックのほうはいまいちで、2R早々飛ばしたローにカウンターのストレートを合わせられKO。まだまだ青い。

○澤屋敷純一VS藤本祐介× 3R1:30KO
日本人プロテクト、なんて騒いでる人も多いけど、みんな見たくないのか? 日本最強に魅せられた人間と、そんなもの屁とも思ってない人間のプライドを賭けた試合だぞ、めちゃめちゃ面白いじゃないか。負けたほうは恥ずかしくて表歩けないんだぞ。
 1R。ロー主体の藤本の攻勢。適当に捌くも、澤屋敷動きがぎこちない。1分経過したところでアクシデント。藤本の頭突きをもらった澤屋敷が鼻が折れてるんじゃないかってほどの大流血。呼吸も苦しそうだが、さすが冷静。セコンド前田憲作の声もしっかり聞こえ、藤本のストレートにミドルを合わせる余裕がある。
 2R。盛んに打ち合う両者。一進一退の攻防のさ中、澤屋敷の膝が突破口を切り開く。ダウンを奪い、右目蓋をカットさせ……なにより藤本の足腰から粘りを奪った。この後もう一度ダウンを奪い最終ラウンドへ。
 3R。相変わらずぶんぶかパンチを振り回す藤本。だが軸足が安定せず体が流れ、何度もスリップを繰り返す。七転八倒の醜態。その後も澤屋敷の攻撃が当たるたびにころころ倒れ、結局このラウンド3回のダウンを奪われ敗北。

○ピーター・アーツVSレイ・セフォー× 1RTKO
 K-1レジェンド同士の対戦も、セフォーの体の締りがやたらと悪い。ぶくぶく太って動きも鈍く防戦一方。1Rで2度のダウンを奪われ、2R以降続行不可能でセコンド陣からタオル投入。病気か?

○チェ・ホンマンVSマイティ・モー× 3R判定2-1
モーのインファイトを恐れたホンマン、前蹴りで間合いをとり膝で迎え撃つ、正解だけどクソつまらない戦法。凡戦の中、飛び込んでのフック連打で何度か場を盛り上げるモーだが、ローブローをダウンと見なすミスジャッジのせいでやる気を喪失。そりゃああのまま延長してもホンマンの勝ちだとは思うけど……。

神様のパズル

2007-09-28 17:31:45 | 小説
 目を開けた先生は、僕を見上げ、「君、彼女はいる?」と、たずねた。
 思いがけない質問だったのでちょっと面食らったが、僕は「いいえ」と答えた。
 すると先生は微笑みながら、「紹介してあげましょうか」と言った……。

「神様のパズル」機本伸司
 
 留年寸前の僕こと綿貫は、現代物理学の初歩すら満足に理解してないダメ学生。卒業そして就職の迫った大事な時期に、何もわざわざ難関・鳩村ゼミを選ぶこともないだろうに、片思いの彼女・保積の尻を追う形で選択してしまった。しかし決めてしまったからにはやり抜くしかない。人生のかかった一年に全力を尽くすべく、ラブラブライフにちょっぴり期待もしつつ気合いを入れているところへ、鳩村教授からあるミッションを託される。スーパーIQの天才児・穂瑞の面倒を見てほしいという。
 穂瑞はいわゆる試験管ベイビーで、優良遺伝子のかけ合わせのもと誕生した人工の天才である。その行動は常に世間から注目され、是非の天秤にかけられた。科学数学の分野にずば抜けた才能を発揮し、飛び級で大学へ進学したまではよかったが、そこでつまずいてしまった。発想の閃きがないと切り捨てられ、以来あまり人前に姿を現さなくなった。ひきこもりとまではいわないまでも、キャンパスで見かけることはほとんどない。見た目は中学生みたいでかわいいが、気難しい変人ということで、大学側も取り扱いに苦慮している。
 後がない綿貫は、否やもなく穂瑞の家を訪ねることとなった。人格を見抜かれ弄ばれる最悪の出会いにもめげずに彼女の興味を外の世界に向けようと粘った結果、なんとか研究室へ連れ出すところまで成功する。しかし彼女はそこでとんでもないことを口走ったのだ……。
「宇宙の作り方」
 究極の疑問に取り組むことになったゼミ員は、綿貫と穂瑞、それ以外というチームに別れ、ディベート形式で研究することとなった。ディベートに負けたチームはこの件に関する一切の加点をしないというハードな条件のもとに。
 綿貫は、穂瑞にインスピレーションを与えるというおんぶにだっこな役割を仰せつかる。だが、お粗末な現代物理学の知識しか持ち合わせていないうえに、バイトや保積のことに頭の大部分を占拠されている彼ではその役割を果たせず、ディベートでも常に劣勢、いよいよ卒業もやばいという状況。だがある日、怪我の功名から穂瑞に神のささやきが降りてきて……。

 実体のない情報の塊をこねくり回し、ただひとり真理を見つめようとする孤高の存在。その後ろ姿を眺めることしかできない綿貫の立場のもどかしさがとても目新しい。寂しそうだかわいそうだと思っているのに、好きなわけじゃないからどうすることもできない。気がきいたセリフも浮かばないからうまく休ませてあげることもできない。見ていて本当にじれったかった。だけどそれだけにリアルだった。近づきすぎない二人の関係。それでいて徐々に深まる互いの理解。凡百のツンデレ小説に迎合しない距離感が素晴らしい。
 理論や薀蓄の比率は当然多い。多いが、ダメ学生・綿貫が穂瑞先生に聞くという形式をとったのが正解で、理解はしやすい。何より究極の疑問の吸引力が強く魅力的なので、最後までつまることなく一気に読んでしまった。

レモネードBOOKS(3)

2007-09-27 21:14:26 | マンガ
 自分の趣味に理解のある彼女って、けっこう得がたいものだ。趣味がマニアックであればあるほど、ハマリ方が重度であればあるほど、その存在は稀有なものになっていく。
 だからこそ、出会った時の感動は大きい。自分が好きなように振舞っても問題なくついてきてくれる彼女と愛し合える満足感。あれは何物にも変えがたい。
 でもちょっと待って。おんぶにだっこしてるだけじゃ、本当の幸せはやってこない。譲歩と忍耐も忘れずに。

「レモネードBOOKS(3)」山名沢湖

 本バカ岩田くんと、岩田くんに振り回される森沢さんの物語最終巻。
 本屋でのデート(?)中にほっぽっとかれたりと相変わらずな扱いの森沢さん。いちいち腹を立てたりということは少なくなったけど、最近悩みがひとつできた。岩田くんの部屋で見つけた高校時代の集合写真から始まった昔話。当時の岩田くんが付き合っていたという彼女の存在を知って以来、心のざわつきがおさまらない。もうなんとも思っていないのだとしても、今さらいったってどうにもならないことなのだとしても、森沢さんはなんだか許せないと感じてしまう。彼が暮らしていたところ、彼が過ごしていた時間のことを思って、仲間はずれにされたような疎外感を感じてしまう。もやもやを解消するために、森沢さんは旅に出た。ひとりきり。ポストには探さないでの書置きひとつ。
 朝霞ちゃんは元彼に告白され、司書嬢は彼に求婚され、センセイは中学へ入学して筆を折り、と森沢さんの周囲もにわかに急展開を迎えている。といってもこの漫画のことだから、「えっ」とか「あっ」という驚きは少ない。それぞれのキャラがそれぞれの立場なりに、ゆっくりと丁寧に適切な距離をとるよう努力していく。岩田くんと森沢さんに関してもそれは同様で……。
 最後に森沢さんの下す決断と、その有り様がほのぼのと味わい深い。全3巻というまとめ方は冗長でなく潔いが、できることならばこの先も読んでいたいような、そんな寂しい気持ちにさせられた。恋愛漫画特有のべたつきのない、爽やかな漫画であった。次回作に期待したい。

Q.E.D.26

2007-09-26 15:55:16 | マンガ
 子供の頃、スイミングスクールに通っていた。親が決めたことで、あまり乗り気ではなかった。義務的に何度か通って……いつ辞めたのかは覚えていない。毎度帰りのバスで食べた自販機のハンバーガーの安っぽい味と、一番最初にスクールを訪れた時の体験は、不思議と心に残っている。
 大層シャイな少年だったから、行ったことのない場所へいくのは苦手だった。人でごったがえすスクールのホールで、どこへ行ったらいいのかわからず途方に暮れていると、人の流れが一定方向へ向かっていることに気がついた。
 これについていけばいいのかしら、とすがりつくようについていくと、着いた先は大きな畳張りの集会場で、たくさんの子供と父兄が思い思いに座っていた。どこかの子供会だろうか。自分の間違いに気づきはしたものの言い出す勇気もなく、流されるままに体育座りしていた。
 その後どういった経過を経てそうなったのかはわからない。大きなビート板に乗ったり、水をかけ合ってはしゃいだり、そうして群れ遊ぶ子供会の中に俺もいた。見知らぬ子供が混じっていることで騒がれることもなく、名を聞かれることもなかった。
 帰り、迎えにきた母の車に乗り込むと、スクールは楽しかった聞かれた。多少の罪悪感はあったけど、とても楽しかった。

「Q.E.D.26」

 エラリー・クイーンの決め台詞「Q.E.D.」をモチーフにした推理漫画。「金田一少年の事件簿」のような劇場型犯罪ではなく、もっと卑近な、日常に基づいた事件を取り扱っている。主人公の燈馬君はスーパーIQの天才で、MITを優秀な成績で卒業。就職せずに日本の高校生になっているという設定。本作は「夏のタイムカプセル」と「共犯者」の二編収録。
「夏のタイムカプセル」
 工事現場から、ヒロイン水原可奈が子供の頃に埋めたタイムカプセルが掘り出された。彼女が小3の頃に埋めたもので、中に入っていたのはビー玉・薄汚れた人形数体・男性アイドルのブロマイド・ゲームソフト・友達と撮った集合写真・野球の硬球など脈絡のない宝物ばかりだった。
 硬球と、誰も覚えていない集合写真の中の一人の男の子の存在から、話は膨らむ。この硬球は誰のものなのか、この男の子は誰なのか。写真の中のその他の人物や当時の学校の先生なども交え、謎解きは結末を迎える。
 自身の思い出から、印象深い作品となった。あの時一緒に遊んだ子供らは、俺のことを覚えているだろうか。もしかしたらあの時の写真が残っていて、頭を悩ませているのではないだろうか。誰も知らない謎の少年、とまでいってしまうと自意識過剰だろうか。ラストシーンの水原可奈の涙を見つめながら、そんなことを思った。

退職刑事

2007-09-26 15:12:32 | 小説
「退職刑事」都筑道夫

 定年退職を迎え、生き甲斐であった刑事職から離れた父が、想い断ち難く現職刑事の息子の五郎の家を訪れては手がけている事件の話をせがみ、その場で解決に導くミステリ。
「安楽椅子探偵(アームチェアデティクティブ)」ものの典型。場面は団地の一室から一歩たりとも動くことなく、登場人物は探偵役の父と、息子の五郎、その妻・美恵の3人のみ。美恵は給仕役以外の登場がほとんどないため、主に父と息子の二人のみでストーリーは進められる。与えられた情報を分析して推理するわけだから、トリックの類はない。完全にロジックのみ。
 マンネリの極地という構成は人を選ぶし、個人的にあまり好きな部類でもない。ただ、父のキャラが立っているのが美点。息子の嫁と一緒に、大好物の事件の話を携えて帰る息子を心待ちに待つ父の姿を想像すると、心和む。

Q.E.D(28)&C.M.B(6)

2007-09-23 21:16:05 | マンガ
「Q.E.D.(28)&C.M.B.(6)」加藤元浩

「Q.E.D.」
 エラリー・クイーンの決め台詞「Q.E.D.」をモチーフにした推理漫画。「金田一少年の事件簿」のような劇場型犯罪ではなく、もっと卑近な、日常に基づいた事件を取り扱っている。主人公の燈馬君はスーパーIQの天才で、MITを優秀な成績で卒業。就職せずに日本の高校生になっているという設定。数学科学を得意とし、論理的視点でずばりと切り込む犯人当ては、他の推理漫画にはない斬新さがある。
「C.M.B.」
 町の外れの林の中で森羅博物館という怪しげな博物館を経営する榊森羅が主人公の冒険漫画。両親を早くに亡くし、大英博物館の伝説の3賢者に引き取られて英才教育を施された森羅は、3賢者の知識と権威のこめられたC.M.B.の指輪を持つ。見た目も精神年齢もまだまだ子供だが、歴史や博物学、考古学などのずば抜けた知識を武器に、様々な事件に挑んでいく。
 
 主人公がイトコ同士の二つの漫画がコラボする最新刊が同時発売された。新発見の王墓の発掘中に不運な事故に見舞われたMIT時代の同級生の頼みを断りきれずにルクソールへ飛んだ燈馬君。考古学博物館で起こった殺人事件の騒動で破壊された、母が寄贈したアクセサリーの仇をとるためカイロへ飛んだ森羅。二人の変人がエジプトの地で再会する。ということはもちろん彼女らの邂逅もあるわけで……。
 燈馬の同級生水原可奈と森羅の同級生七瀬立樹。元気印で運動神経抜群。姉御肌で面倒見がよく、沈思黙考よりも走り跳ぶ直感系。性格から立ち位置までもろかぶりの二人が打ち解けるシーンは、類は友を呼ぶとか同病相哀れむといった風情が漂っていて面白い。タッグを組んでの大立ち回りや、互いのパートナーへの理解の増進も含めて、ファンの期待を裏切るようなことは一切ない。
 また、初見の人にもお薦めできるのが特徴の両シリーズ。ピラミッドの謎に関する洞察や薀蓄、ロマンなど、他の漫画では味わえない知的興奮も保証する。

古武術で毎日がラクラク!

2007-09-22 18:41:59 | 小説
「古武術で毎日がラクラク!」師匠:甲野善紀 弟子:荻野アンナ
 
 人間は楽をしたい生き物だ。楽をしたいために努力し、楽をしたいために勉強する。本末転倒との境の中で、いかに効率よく楽をするか、それってとても難しいことで、なかなか思い通りにはいかない。
 本書は、日本古武術のとっつきにくく難しいというイメージを一変させる一冊だ。いわゆるハウツー本の類だが、わかりやすく実践しやすく、しかも即効果があるといいとこづくめ。目から鱗の古武術活用法には一見の価値ありだ。
 イラスト付きで読みやすい、というのはこういった本の最低条件だからあえて触れない。問題はバランス。日常生活のどういった場面で使えるか、そしてそういった場面は実際どの程度の頻度で訪れるのか。このふたつのバランスが非常にいい。使う機会があるかどうかわからない護身術の割合は少なく、荷物の持ち方や階段の登り方などの毎日の動き、肩こり解消のための運動、要介護者を抱えている人のための介護の中での動きなど、応用がきき実際に使える身体運用法が多く分量をとっている。体調に悩みを抱えている人もそうでない人にも、是非読んで欲しい一冊だ。

ブラッディ・マンデイ

2007-09-21 18:54:20 | マンガ
「ブラッディ・マンデイ」龍門諒×恵広史
 
 某年4月、日本。
 私立弥代学院高等部の掲示板に一枚の告知がされた。屋上でキスしているところを教師に発見された二名の生徒が停学処分を受け、女生徒が自殺を図った。
 生徒を減点制の校則で縛る学年主任の日景のやり方に憤りを覚えた新聞部は、隠された日景の悪事を暴き、吊るし上げ糾弾することを議決した。燃え上がる新聞部員の輪に加わらず一人仮病で早退した高木藤丸は、妹の遥にエロ動画のダウンロードをするから部屋に入るなと言い捨て、PCに向かった。ハンドルネーム・ファルコン。かつて政府機関の機密に触れ逮捕された、伝説のハッカーである。
 逮捕当時中学生だった藤丸は、今は当の政府機関・公安調査庁調査部第3課「THIRD-i」に監視される身だ。父親の竜之介が同組織の副長であるため、協力という形で能力を活用する機会が何度かあり、おかげで腕は錆び付いていない。日景の家のPCにトロイの木馬を送ってコントロールを奪うと、過去の悪行を暴いて容易く退職に追い込んだ。
 そんな藤丸の生活に、にわかに暗雲が立ち込める。竜之介からの電話だ。自分が帰れなくなったことを告げると、彼は押し殺した声で続けた。家中の盗聴器の有無、暗号解読を頼んでおいたファイルの処分、ブラッディ・マンデイという謎の言葉を残して電話を切った。その直後、全国ニュースで竜之介の名前が取り上げられる。同僚を射殺して逃亡、指名手配……。
 殺人犯の息子としていきなり白眼視され孤立無援の藤丸に、新聞部の仲間が手を差し伸べた。超絶記憶力の部長・九条、幼馴染の空手少女・朝田、噂話の宝庫・英、ファルコンに憧れる少女・安斎、怪しげな色香を漂わせる新任女教師・マヤと個性豊かな面々が、それぞれの能力を駆使して「事件」に挑む。だがその背景には、彼らの想像を絶する事態が待ち受けていて……。
 ハッカーを題材にした珍しい漫画。格闘美少女と仲間たち、AV女優みたいな女教師、政府の秘密機関に細菌兵器と、絵にしやすいギミックをばらまいている。懸念されたPC周りも、トロイの木馬やRSA暗号、分散コンピューティングに画像音声解析と、猿でもわかる易しさに仕上がっているのがいいところ。個人的に物足りなさはあるものの、こういったとっつきにくい分野の漫画は少ないので是非成功してほしい。

9/17 HERO'S

2007-09-19 00:40:19 | 格闘技
 9/17 HERO'S

 PRIDEのテレビ放映が無くなって以降唯一といっていい総合の全国放送HERO'S。パチンコメーカー・オリンピアの名前を冠した生々しい開催となった。

○桜庭和志VS柴田勝頼× 1R6:20腕ひしぎ逆十字
 対話型の煽りVTRでは感情捨てるといっていたくせに、花道を全力疾走で入場する柴田。対する桜庭はいつもの派手派手しい演出もなくおとなしい雰囲気。
 桜庭も柴田も好きじゃないけど、共にプロレスをベースにする者同士が総合のリング場で相見えるというのはなかなかに感慨深い。ホームグラウンドを失った者同士が総合のリングでどのように生きてきたのか、生きていくのか、生き様のぶつかり合う激しいバトル……にはむろんならない。
 序盤静かなジャブの応酬から桜庭誘いの大振りフックに乗った柴田。見事片足タックルを成功させた桜庭は、柴田の下からのテンプルパンチを散々浴びながらも耐えに耐えてサイドをとる。パウンドを落としながら地味に腕ひしぎを極めた桜庭は、しかしパンチをくらいすぎではないだろうか。パンチドランク街道一直線の彼の行く末に一抹の不安が残った。

○メルヴィン・マヌーフVSファビオ・シウバ× 1R1:00TKO
 ストライカー同士の息詰まる熱戦……になる暇もなかった。立ち上がり互いの距離が掴めずに、しかし戦意だけは旺盛でクリンチの応酬をしていた両者。ローブローでのインターバル後、怒ったマヌーフのフックが往復でヒット。1分ジャストの電撃的勝利だった。

○ミノワマンVSケビン・ケーシー× 2R 0:43TKO
 怪獣狩りに明け暮れていた超人ミノワマン。ひさしぶりの人間は、グレイシーを学んだ本格派。
 本当にこの人にこんな普通の相手を当てていいのか……? と独特のミスマッチ感に悩んでいると、試合も相応に地味なものになってしまった。
 膝キックからテイクダウン→グラウンド。
 スタンドでの差し合いから足をとってのテイクダウン→グラウンド。
 地味かつ芸のない、そのくせ適度にこなれたグレイシー的攻めを延々と繰り返すケビン。対するはノゲイラらとグラウンドの技術を磨きあったこともあるうえに身体の強いミノワマン。いつ終わるともしれない体力の削りあいは、唐突に訪れた。
 2R開始直後、焦れたケビンがいきなり殴り合いを挑むと、ミノワマンは応戦。右フックを当ててあっさりと勝利をものにした。

○山本"KID"徳郁VSビビアーノ・フェルナンデス× 3R判定3-0
 解説陣のホメ殺しは差し引いても、たしかにレスリングで身体が強靭に鍛え上げられている山本KID。なんだかよくわからない相手とのイージーな復活戦、かと思いきや、これが意外なことにビビアーノはかなりの実力者。当初の予想より面白い試合になった。
 引き込み、飛びつき、タックルと多彩なテイクダウンの技に加え、グラウンドでの執拗さと技のキレ、それなりの打撃をも兼ね備えた強豪ビビアーノ。1Rから2R中盤にかけて何度も決定的な場面を作った。
 対する山本KIDも負けてはいない。2R後半から完全に間合いを掴み、3Rにはタックルをほぼ切れるようになった。加えてインローや嫌らしいタイミングのボディで点数を稼ぎ、判定勝利。3-0というのは疑わしいが、ホームタウンデシジョンも考えれば妥当な結末か。

○J.Z.カルヴァンVSビトー・シャオリン・ヒベイロ× 1R0:35TKO
 猛獣対柔術皇帝。ミドル級最高の実力者同士の激突。事実上の決勝戦ともいわれていた戦いは、当初シャオリンの勝利が有力視されていた。機動力と勢いを備えたカルヴァンでも打倒は難しい。それほどに彼の柔術の実力は圧倒的であった。
 1R開始早々、会場にどよめきが起こった。取っ組み合いからシャオリンを投げ捨てたカルヴァンが、パウンドの嵐で一気にこれを制圧したのだ。防御も何もあったものではない。完全なる暴力が、技術と経験をねじ伏せた。
 
○アンドレ・ジダVS宇野薫× 2R判定3-0
 ブラック・マンバの代打はシュートボクセアカデミーの殴り屋ジダ。立ち上がり早々アッパーや膝を宇野に当て、速攻を仕掛ける。あまりの勢いに、宇野持ち前のディフェンス能力……ではなんともならない。左目カットのインターバルでなんとか体勢を建て直したが、トーナメント唯一の日本人は早くも形勢悪し。
 2Rに入ってなんとかペースを掴んだ宇野。グラウンドに引き込みたいが、ジダの腰が強くてなかなかうまくいかない。執念でテイクダウンし、マウントをとるも逃がしてしまいジ・エンド。終盤2度目のテイクダウンをとるも時間が足りない。打撃の有効点を取り戻すには至らなかった。

○J.Z.カルヴァンVSアンドレ・ジダ× 1R4:49腕ひしぎ逆十字
 アメリカントップチーム対シュートボクセアカデミー。しかし実力には差のある両者。下馬評は圧倒的にカルヴァン優勢。
 リーチの長さを生かしたジャブや、カウンターの右でぐらつかせるなどいいところを見せるジダ。だがこれがかえって悪かった。
 冷静になったカルヴァンに穴はない。慎重にタイミングを計り、右ストレートに合わせてタックル。テイクダウン後もじわじわと良いポジションをとり、肩固めで一本を狙うがだめ。それなら、とマウントをとり、腕ひしぎ逆十字に切って落として再びの王座に輝いた。

極道放浪記②~相棒(バディ)への鎮魂歌~

2007-09-17 16:48:27 | 小説
「極道放浪記②~相棒(バディ)への鎮魂歌~」浅田次郎

「鉄道員」、「地下鉄に乗って」など涙涙の感動作を描く一方で、「プリズンホテル」など爆笑腸捻転必死のコメディをも書くことのできる不思議な作家、浅田次郎の素顔に迫るエッセイ本。其の二。
 執行猶予の話、ブタ箱見取り図、対抗するヤクザの親分同士で囲んだ雀卓、学生運動闘士との友情、悪党だらけの同窓会、Mr.レディとの純愛etc……とにかくユニークなエピソードが尽きない浅田次郎の昔語りは、面白すぎて疑わしい。アウトローな武勇伝やバカ話の「膨らんだ部分」というのはイコール語り手のサービス精神だが、浅田次郎のそれは一般ピーポーとレベルが違う。違いすぎて逆に嘘と本当の境目がわからなくなるほど。だが眉に唾つけず、小難しいことを考えずに笑かせよう精神の波に身を委ねれば、これほど楽しい一冊もない。にやにや笑いが止まらないひと時となるだろうから、決してバスや電車での通勤中には読まぬように。