空に唄う (河出文庫) | |
クリエーター情報なし | |
河出書房新社 |
「空に唄う」白岩玄
新米僧侶の海生は、碕沢さんという同い年の女性の幽霊と知り合いになった。物に触れても硬くて動かせず、熱さも寒さも感じず、誰の声も聞こえないという不便な彼女。でも、海生だけは違った。海生とだけは波長が合うのか、触れ合うことも話をすることもできた。
碕沢さんと、ちょっとおかしな共同生活をおくる中、海生は徐々に彼女にひかれていく自分に気付く。これはただの同情か? それとも本当の恋なのか?
しかし生来の押しの弱さと気ぃ遣いのせいで、もう一歩が踏み出せない海生。2人の関係は生者と死者のまま、プライヴェートな部分に触れることもできぬまま、無情にも時は過ぎ、そして……。
以下ネタバレ注意。
いまさらか?
「野ブタをプロデュース」の堀北は可愛かったなあ、ぐらいの気持ちで手に取ったら、あらすじが面白そうなのでそのまま購入。
軽くてふわっとして読みやすい海生の一人称と、気の弱さ、碕沢さんの存在のあやふやさがマッチしていて、抜群ではないけども独特の雰囲気のある作品に仕上がっていた。面白かった。
最後まで碕沢さんの本当の気持ちやプライヴェート部分が謎のままだったのは寂しかった。それが良さではあるんだろうけどねえ。でもねえ。これって、最悪の場合を考えるとものすごい切ないわけですよ。それはつまり、碕沢さんが成仏したのではなく現世にとどまったまま、単に海生に見えなくなっただけかもしれないと考えると……。
ね? やだよね。そんなの。
だから考えたくはないんだけど、考えないわけにもいかなくて、だから海生は、「空に唄う」のではないかなーと考えました。
もう自分の手には届かない、おそらくは声も聞こえない。それでもなんとか、うまくいっていてほしい。それは切なる願いだったのだと。
こういうことを考えると、人間同士の相互理解って難しいなと思うよね。自分がわかっているつもりでも、向こうがそう思っているかどうかはわからない。ただひたすらに願うのみ。それでもそうせざるをえないのが人間。人間って馬鹿だよね。そこが可愛いいとこでもあるんだけど。そんなメッセージがこめられているように感じました。この人、けっこう面白いな。他のも読んでみるか。
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