魔法少女地獄 (講談社ラノベ文庫) | |
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講談社 |
「魔法少女地獄」安藤白悧
三田村黒犬・15歳。魔法少女という存在が公認化された世界の中で、自然と「ワルモノ」を引き寄せてしまう彼の体質は貴重だった。存在価値という意味において。
彼は助けられる側だった。男なのにヒロインだった。
面白くなかった。自分がヒーローだとうぬぼれているわけではない。無力な一高校生だという自覚はあった。
でも、だって。
女の子に助けられてへらへらありがたがっている男は、それは男じゃない。
僕は……僕は……。
心の叫びに押しつぶされそうになっていた彼の前に、ある日先輩は現れた。古き「魔女」の血を引くという彼女は、彼にこうもちかけた「魔法少女絶滅計画」に乗らないかと……。
タイトルとあらすじを見て気になっていた人は多いんじゃないでしょうか、この作品。
「魔法少女」を「絶滅」するっていうことは、「悪役に敗北する魔法少女」をたくさん見ることができるっていうことですから。その手の男衆にはたまらないシチュエーションであります。
僕自身がどうかというと、そこは想像にお任せしますが……まあ、嫌いではないです。
というか、正直いって大好物です。
だからこそ、この作品にはがっかりさせられました。
最初の格闘少女を屈服させる先輩の手練手管は良かった。激闘に打ち勝ち、プライドをへし折り、屈辱の一言を吐かせるまでは最高だったんですが、そのあとが良くない。
当の格闘少女と同じクラスに所属しているくせに、互いに存在を認知しているくせに、なんの追い打ちもフォローもない。それじゃダメだろう。なんのために堕としたんだ(血涙)!
……いや、そんな目的じゃないのはわかってるんですけどね。読者視点からするとってことですよ。
そこからちょっとおかしいなと思い始めて、その違和感は最後まで消えませんでした。
次々と現れるはいいが長編物アニメの総集編のようになぎ倒されていくだけで、味もそっけもない魔法少女群。脈絡もなく姿を現したラスボス。基本的に考えなしな先輩の行動。どうでも良かった黒犬の出自。解決方法も大味で、かなーり評価を下げました。
設定だけは良かったので、1話完結じゃなく、長編物にして、1話につき一人堕とす形にしてくれれば神シリーズになったんでしょうが……。うーん、返す返すも残念。同氏の次回作に期待しておきましょう。設定だけはいいんですよ。設定だけは……。