はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

ガラス張りの誘拐

2008-10-29 21:11:53 | 小説
ガラス張りの誘拐 (講談社文庫)
歌野 晶午
講談社

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「ガラス張りの誘拐」歌野晶午

 王子警察署刑事課の佐原真一は、人の良さが災いして犯人や容疑者、被害者と向き合うことができない。どうしても相手のことを思ってしまって刑事的質問ができないのだ。そのため面倒な仕事があると逃げ出し、仕事中にサウナで時間を潰す悪癖があった。
 そんな佐原の前に、2つの事件が発生する。1つは連続婦人殺人魔、もう1つは我が娘の誘拐身代金要求事件。保健室のおばさん(お姉さん)梨花の手伝いのもと、佐原は手に余る2つの謎に迫るのだが、そこには驚天動地の結末が待っていた……。

「葉桜の季節に君を想うということ」や「密室殺人ゲーム王手飛車取り」で満天下に実力を知らしめた歌野晶午の、しかしデビュー後間もない作品というだけあって荒い作り。「長い家の殺人」などのなんとか探偵シリーズ(もはや覚えていない)でも目立った人物造形の適当さが悪目立ちして、作品に集中できない。犯人の動機も解法も分かりやすすぎてカタルシスがない。ダメ刑事をカウンセリングしてくれる保健室のおばさん(お姉さん)という佐原と梨花の関係が目新しく興味深かっただけに、ちょっと残念な作品になってしまった。

スレイヤーズ~完全無欠版~

2008-10-27 20:04:26 | 映画
スレイヤーズ~完全無欠版~【劇場版】

バンダイビジュアル

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「スレイヤーズ~完全無欠版~」監督:わたなべひろし 原作:神坂一

 盗賊殺し、ドラゴンもまたいで通ると悪名ばかりが名高い天才魔道士リナ・インバース。リナのライバル(勝手に)サーペントのナーガ。ひょんなことから「約束の島」ミプロス島の高級温泉招待券を手に入れた2人は、バカンス気分に浮かれて海を渡った。しかしたどり着いた先ではタコに操られた男達の襲撃を受け、夢ではラウディ・ガブリエフという謎の老人の囁きに悩まされ、あげくは魔族ジョイロックに負傷を負わされる。謎に肉薄する2人(主にリナ)。一連の事件の根底には、悲しき末路を辿ったエルフの一族の怨念が横たわっていて……。
 
 ひさしぶりの視聴。原作第一作の発売から実に19年もの月日が経過しているが、まったく色あせていない。リナは相変わらずパワフルで傍若無人で、酒と食い物とお宝に目がなくて、ナーガはまあ……いつものナーガだ。すぺしゃる版の延長線上ということでガウリィの出番はないが、血脈と思われるラウディ・ガブリエフが登場していて、本編ファンへの配慮も充分。
 劇場版スレイヤーズの中でも白眉といわれるこの完全無欠版。さすがに出来がいい。画質やキャストはもちろん、タイムスリップを使った泣かせどころもあり(ただしツッコまないこと)、なんとも楽しい。
 中でも一番は食事風景。貝のバター焼きやご当地料理の数々、酒をたらふく流し込むリナの姿が爽快。お酒を美味しそうに呑む女の子ってのは可愛いもんだけど、まったく、カクテル一口飲んで「赤くなっちゃった~」なんぞとほざく女どもに見せ付けてやりたい。

涼宮ハルヒの憂鬱(1)

2008-10-26 13:41:33 | マンガ
涼宮ハルヒの憂鬱 1 通常版

角川書店

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「涼宮ハルヒの憂鬱(1)」谷川流

 いまさらなんだけど、見てますハルヒ。アニメ、ラブコメ、学園物、と三拍子そろってかなりハードル高かったのですが、意外と見れます。いや、気恥ずかしいのに変わりはないのですけれども。
 宇宙人地底人なんでもウェルカムな面白いもの好き女子高生(宇宙人?)・涼宮ハルヒに出会い、振り回され行く主人公・キョンの賑やかな日々を描く本作。原作のほうは文体と設定についていけずにリタイヤ。アニメのほうは映像なので大丈夫なのか(小説では光の剣の振り合いに辟易だが、映像なら見れる理論)、いまのとこすいすい進んでいます。映像のクオリティが高く、キョンの延々続くモノローグも笑えるし、何よりハルヒ率いるSOS団の日常が楽しげです。
 んでですね、
究極超人あ~る (1) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)
ゆうき まさみ
小学館

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 なぜだかこれを思い出しました。主人公の人造人間R君を取り巻く、鳥坂部長を始めとする光画部のゆかいな仲間達、終わらない日常、永遠のモラトリアム……。
 どこか共通点があるような気がします。青春への郷愁とか、日常的非日常への憧憬とか。スタッフにそういった意図があって作られているような。
 ハルヒは、R君プラス鳥坂部長プラスさんごなわけです。トラブルメイカーでリーダーでヒロインで。それら全部の要素をひっくるめて極上スマイルと萌えで修飾するあたりが現代風。
 だからというか、逆説的に、ハルヒには日常的非日常の積み重ねが必要なわけです。あとで振り返った時に、なんて楽しい、きらきらと輝くような日々だったのだろう。宇宙人も地底人もいなくたって(いや、出てくるんですけど)、素晴らしい日々だったではないか。憂鬱? 退屈? とんでもない。
 そして当然のごとく訪れる別れの日。ここ大事ですね。これがあるからR君は名作になり得たわけで。形あるものいつかは壊れ去り行く。だからこそ美しい。まだハルヒのほうは全巻見てないんですが、そもそも現在継続しているものかすら知らないんですが、その辺のカタルシスを上手いこと処理してくれるよう願います。
 ところで、今の若者に光画部時間なんていって通じるんでしょうかね? 「やぁ」とか、外道照身霊波光線とか。通じるといいなあ。面白かったなあR。って論点がずれてますけども。

Q.E.D.-証明終了(31)

2008-10-24 17:15:54 | マンガ
Q.E.D.-証明終了- 31 (31) (月刊マガジンコミックス)
加藤 元浩
講談社

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 彼は結果を求められた。
 科学者は常に新しい新しい発見、新しい技術を求められる。そしてそれは直接出世や給与に結びつく。
 人より早く結果を出さなければ! 自分の理論が正しいことを証明しないと……。
 そんなとき、眼の中に悪魔が入る。そいつは見たいと願うものを現実にあるかのように見せてくれる……。

「Q.E.D.-証明終了(31)」加藤元浩

 ドラマ化の決定した傑作ミステリマンガの最新巻は、「眼の中の悪魔」と「約束」の2本立て。
 感心するほどネタの尽きない本作だが、それ故にというか、質の面で落差が激しい。面白い話とそうでない話がはっきりしている。「おまえそれは無茶だろ」なんて話も正直多い。でも、天才数学者の主人公・燈馬くんと超絶運動神経の水原さんが奏でるストーリーには安定した面白みがあるし、「当たり」を引いた時は本気で面白いので、毎度毎度、油断ができない。
 本巻でいうと、「約束」は「無茶だろ」で、「眼の中の悪魔」は「当たり」。メンデルや野口英世の「本当の」功績(僕も知らなかった)。や、科学者を悩ます悪魔の影について触れる下りは、熱すぎてぞくぞくさせられた。いや、燈馬くんはいつもの淡々とした語り口なんだけどね。
 ところで、燈馬くんと水原さんの仲がまったく深まりません。ベタベタしない安定した関係性、というのもこの2人の魅力のひとつだとは思うけど、以前はそれなりに描写があったのに、最近、まったくないのがちと寂しい……。ドラマのほうではどう描かれるのかな?

神のみぞ知るセカイ(2)

2008-10-22 10:56:21 | マンガ
神のみぞ知るセカイ 2 (2) (少年サンデーコミックス)
若木 民喜
小学館

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「神のみぞ知るセカイ(2)」若木民喜

 なんの因果か生身の女の子を落とすハメになってしまった恋愛ゲームの神・桂木桂馬。あんまり役に立たない悪魔の助手・エリーを従えて、狙うは現役アイドル女子高生と図書委員のハート。
 スタンガンを携帯し、親しくなればメール爆弾を送ってくるようなヤンデレと(ツンデレの病んでるバージョンなんだと思うが、初めて見た)、日常会話すら自分のうちに封じ込めてしまうような内気な女の子。1巻よりも複雑な攻略が必要になる中、やはり今回も桂馬の推理は冴え渡る。

 面白い。様々なギャルゲー的アクシデントを、頭ひとつで切り抜ける桂馬が格好いい。
 事件後、女の子が桂馬とのことを忘れているというのも、実は密かにポイント高い。たとえひと時でも心交わした相手に忘れられるのは辛いだろうに、桂馬は、だからどうした、とつっぱねる。その姿が男の子していて良いのだ。やはり男の子は意地を張らねば。
 歪んだ設定と対照的な、作者によるあとがきも良い。冷静で優しさに満ちたキャラ分析が、作品全体に落ち着いた雰囲気をもたらしている。最後はきちんとした落としどころに落としてくれるという安心感がある。

チョコレートコスモス

2008-10-19 08:54:44 | 小説
チョコレートコスモス
恩田 陸
毎日新聞社

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「チョコレートコスモス」恩田陸

「六番目の小夜子」、「ドミノ」、「Q&A」、「PUZZLE」、「不安な童話」、「ネバーランド」、「常野物語」、「三月は深き紅の淵を」、「夜のピクニック」など、軽く並べただけでもこの作家は凄いということがわかる。何がって、ひとつとして同じ作風の作品がないこと。売れっ子作家の座に胡坐をかかず、常に研究し、思考錯誤を繰り返して実験的作品を量産し、時に名作を生み出している。個人的には「六番目の小夜子」がデビュー作にして最高傑作で、群像劇のお手本「ドミノ」が二番手。あとは好みが合わず、「夜のピクニック」もいまいちぴんとこなかった。じゃあ恩田嫌いなのかというとそうではない。この人の場合、他の作家と違ってあまりにも変幻自在であるために特定のファン層を持てないのだ。
 本書、「チョコレートコスモス」もまた、見事な変化球だ。切れ味鋭いスライダーで、ボールかストライクかの判別が難しい。劇中劇好きであり、序盤のもたつきが許せる僕には大傑作といえる作品だった。
 劇中劇というとミステリベースの作品が多いのだが、この作品は劇そのものがメインだ。ミステリ要素はまったくない。佐々木飛鳥という1人の天才少女が演劇と出会い、その魅力にとりつかれていく様を克明に描写している。
 幼少より空手を学んでいた飛鳥。型に習熟し、人を倒す術の研究に余念がなく、ために無類の強さを発揮していた彼女が演劇に目覚め、W大の演劇サークル「ゼロ」に参加した。人を緻密に観察すること、その動きを巧妙にトレースする独特のスタイルで、瞬く間に実力を開花させる。
 時を同じくして、女優2人が主演の舞台の、大掛かりなオーディションが開かれた。その方法がまた風変わりなもので、ほとんどの者が1次で振るい落とされる。生き残ったのは往年の名女優や実力派の現役アイドル、演劇一族の直系、そして佐々木飛鳥……。
 他人を驚愕させる演技プランともの凄まじい成りきりようで、会場中の耳目を釘付けにした飛鳥。女優陣の羨望と嫉妬の的になった飛鳥。プロデューサー芹澤は、だが彼女には自分がないという。非常に優秀な機械みたいなもので、そこには個人のエゴが存在しない。
 でもなぜ、それではだめなのか。自分が本当にやりたいことは、あの舞台の上で何が見えるのか。飛鳥は考える。悩みながらも歩みを止めることはできない。舞台の上の何かが彼女を呼ぶ。誰も訪れたことのない未知の領域へと誘う。
 今まで、数多くの作家が「天才」を書くことに挑戦した。自分たちにないものを描き、愛でるために。なりきる気持ちよさに浸るために。それは多くの場合科学者であったり軍人であった。描きやすいからだ。科学者は頭の良さで、軍人はその戦果で、では演技者はどうすればいい? 演技で魅せるしかない。読者の頭の中にある架空の舞台でいかに名演を見せるか。繰り返し登場する劇の台詞の行間に何を詰め込めるのか。とてつもなく困難なことを、恩田陸はやってのけた。どれだけの苦心があったのかは知らない。たやすかったのかもしれない。だけど、僕たちにはわかる。今そこに、「天才」が現出したのだと。

前日に続いて

2008-10-18 22:23:49 | マンガ
 昨日に続いて「トクボウ朝倉草平」について、 ちょっと淡白すぎたので捕捉する(眠かったのだ)。
現代の仕事人・朝倉草平が挑む事件は、食品の産地偽装、売春組織、ねずみ講など、ワイドショーや週刊誌の紙面のような時事ネタばかり。現実にはなかなか裁けない悪党どもを、有無を言わさず一刀両断な痛快さが売り……なはずのだが、実際には主人公の朝倉草平が、変態丸出しの理不尽さで相棒(被害者?)の辻刑事を振り回すだけの単調な作品になってしまった。僕自身がこの手のニュースに食傷気味で新鮮味を感じないからということもあるのだろうけど、実際問題として、解決方法が強引すぎてつまらんからしょうがない。これがもし、法的根拠のある公平な断罪だったら納得なのだが。もっともその場合は話の本筋が変わってしまうのだけど。
ともあれ序盤から中盤までのひねりのない展開に難があるので、おすすめとは言いがたい。叶、由美子が出てくる後半には「お、これは」と思わせる「とっかかり」がたしかにあり、そこからなら間違いなく面白いといえる。

トクボウ朝倉草平(1)

2008-10-17 08:30:03 | マンガ
トクボウ朝倉草平 1 (1) (ジャンプコミックスデラックス)
高橋 秀武
集英社

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「トクボウ朝倉草平(1)」高橋秀武

 この世は害虫で満ちあふれている……
 口を開けば「死にたい」を連呼しているダウナー系の主人公・朝倉草平は、警察庁生活安全局特殊防犯課指導係の警視である。なんの証拠もない犯人を、盗撮盗聴拘束折檻……あらゆる違法捜査を駆使して追い詰め、「行政指導」する。
 ツンデレ上司の叶、ライバルで警視庁の伊達警視、大臣の娘で朝倉に「行政指導」されて以来すっかりM属性に目覚めてしまった由美子。濃ゆい面子が活躍し出すのが1巻も終わりに差し掛かってからなのが残念。
 暴虐仕事人のお話として、これから先が気になる1作だ。

ぼくらの(1)

2008-10-16 17:11:00 | マンガ
ぼくらの 1 (1) (IKKI COMICS)
鬼頭 莫宏
小学館

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「あたしあのマンガ読んだ。最後まで」
「……どうだった?」
「主人公の子供たちみんな、死んじゃった。……世界も、滅亡して」

「ぼくらの(1)」鬼頭莫宏

 中学生になった夏。ぼくらは林間学校に出かけた。男女合わせて15人のひと夏の経験。大人になればうっすらとしか覚えていないような、ちっぽけな社会生活の縮図。だけどぼくらにとって、その夏は特別なものになってしまった。その後訪れる地獄のような日々の幕が開いたのだ。
 ぼくら・15人の子供たちは、謎の男・ココペリに導かれてゲームを始めた。それは、巨大ロボットを駆り、迫り来る敵から地球を守る体感アクションゲーム。
 のはずだった。しかし限りなくリアリティのあるそのゲームはいつしかぼくらの日常の一部に溶け込んでいた。まったく現実と見分けのつかないほどに。自分の身近な人が、物が、敵によって壊されていく。時に未熟な自分の操縦によって、思いもかけない被害が広がる。自らの一挙一動に人類の命運がかかる。リアルすぎる体感ゲームが徐々にぼくらの理性を壊し、そして思わぬ形で最初の犠牲者が現れた……。

 鬼頭莫宏の手による巨大ロボット・アクションコミック。
 評判の良さに手にとってみたが、どうやらスロースターターな作品のようで、1巻はそれほど面白くなかった。だけど、子供たちのあどけなく微笑ましい日常生活に対比される、それぞれの抱える心の痛みと容赦なく出る被害の落差、今後想定される悲劇の重さが、ページを繰る手を止めない。芋づる式に続巻へと手を伸ばしてしまう危険な作品だ。

パコと魔法の絵本

2008-10-14 20:30:15 | 映画
「パコと魔法の絵本」原作:後藤ひろひと 監督:中島哲也

 緑のタイツを履いた医者、悪魔のような看護婦、子持ちのオカマ、薬中の役者、消防車に轢かれた消防士、銃の暴発で入院中のヤクザ、偏屈な大会社会長とその財産を狙う甥夫婦……。奇人変人ばかりが集う病院の中でも、とびきりの変人・大貫(役所広司)は、胸を患って一線を退いた会社経営者だ。社会から隔絶された疎外感からか、他人を口汚く罵り、意地悪ばかりする嫌な爺になってしまった。
 そんな大貫の前に、絵本を携えた女の子・パコ(アヤカ・ウィルソン)が現れる。いつもの調子で怒鳴り散らし、突き飛ばす大貫だが、パコはびくともせず、ニコニコ笑いながら接してくる。拍子抜けしたと同時に絵本まで読んであげてしまった大貫だが、一連の騒ぎの中で思い出のライターを無くしてしまう。
 どんなに探してもライターは見つからず、翌日となった。昨日と同じ場所でパコと出会った大貫は、初対面のように接してくるパコを奇妙に思いながらタバコを吸おうとしたが、当然ライターはない。すると、満面の笑みを浮かべながらパコが取り出したのは、無くなった大貫のライターだった。盗まれたと早とちりした大貫は、勢い余ってパコをビンタしてしまう。
 交通事故で両親を失い、脳に障害を受け、記憶が1日しかもたない病気にかかっていたパコ。しかし、大貫が頬に触れるとそのことだけは思い出すようになった。そんな奇跡のような出来事が、大貫を変えた。毎日絵本を読んでやり、頬に触れてやることで、なんとかパコの病を治し、自分のことを覚えてほしいと思うようになる。しかし大貫の体調も決して思わしくはない。迫り来るタイムリミットを感じながら、大貫はある決断を下すのだった。それは、絵本を現実のものとすること。「ガマ王子とザリガニ魔人」を病院の皆で演じ、パコの記憶を永遠のものとすること……。
 
 記憶喪失プラス劇中劇とCG。役所以下、個性豊かな面々の描く濃厚なファンタジー。
 想像以上に面白い。ごった煮のようなそれぞれの要素ひとつひとつに手を抜かず、ディティールにこだわった結果、良質なファンタジーに仕上がった。序盤はもたつきもあり、役所の悪行がひどすぎて見るに耐えないが、優しさに目覚めた後半からの一気呵成の展開が良い。心配されていたCGと実写との融合も無理なくこなせている。
 阿部サダヲ、土屋アンナ、加瀬亮、山内圭哉、劇団ひとり、國村隼、小池栄子、上川隆也などなど、個性派勢ぞろいの役者陣も良かった。個々の特徴を生かした濃すぎる演技も、逆に濃すぎるがゆえに絶妙にマッチしている。大人から子供まで満遍なく楽しめる、おすすめの一作。

金融腐蝕列島 呪縛

パイオニアLDC

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これは役所改心の作品。「Shall We Dance?」なんか目じゃない(いや、十分面白いけどね)記憶に残るほどの一作。緒形拳、峰岸徹と立て続けに名優が亡くなる昨今、是非役所広司には長生きしてほしいものだ。