はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

青春少年マガジン(1978~1983)

2010-08-30 08:21:16 | マンガ
青春少年マガジン1978~1983 (KCデラックス)
小林 まこと
講談社

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 3日や4日寝ないのは当たり前。
 20時間くらい何も食わないのも当たり前。
 たばこは呼吸のように1日7箱。
 缶コーヒーは1日10本以上。
 締め切りのストレスで胃はボロボロ。
 逃亡したこと数回……

「青春少年マガジン(1978~1983)」小林まこと

「週間少年マガジン」創立50周年企画として描かれた、小林まことによる回顧録。新潟から漫画家になることを夢見て上京して来てみたものの、なかなか芽が出ず死にかけていた19歳の頃から、出世作「1・2の三四郎」が終わるまでの5年間。彼には仲の良すぎるほど仲の良いライバルが2人いた。合わせて「新人3バカトリオ」と呼ばれることになる彼らとの切磋琢磨の日々。その日々は楽しくおかしく、しかし壮絶で濃密すぎるあまり、たったの5年間で終焉を迎えることになってしまった……。 

 なんという恐ろしい生活……。
 漫画家が、とりわけ週間誌の漫画家が厳しい職業だとは聞いていたが、まさかこれほどのものだったとは……。
 指が動かなくなり、足が動かなくなり、常に自殺の衝動と戦い続け、そこまでしても、人気がなくなれば打ち切り、田舎へ敗戦帰国することになる。生と死のぎりぎりの境目に自分をおいてまで執筆し続ける彼らの覚悟と漫画への情熱には、思わず頭が下がる。楽しくおかしい漫画というメディアの裏側にあるからこそ、凄みがある。
 一足先に旅立たれたお2人に対する作者の想いが紙面から伝わってきて、最後はほろりとさせられた。漫画を愛するすべての人に、読んでいただきたい。

漂流ネットカフェ(4)

2010-08-28 18:16:16 | マンガ
漂流ネットカフェ(4)(アクションコミックス)
押見 修造
双葉社

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「漂流ネットカフェ(4)」押見修造

 蠅が一匹もたからない死体。食用に適した魚。飲み水に適量の降雨。保ちの良すぎる非常電源……。
 まるで、誰かに飼われているかのようなおかしな閉鎖世界。その秘密の鍵は、遠野さんが握っている?

 と、なんだかうさんくさい話の方向に進んでいくのがとても心配なシリーズ第4巻。
 主人公と遠野さんの関係性以外は性と暴力しかないので、このうえセカイ系に行くのはやめてほしいんだが……まっすぐいっちゃってるよねえ……。遠野さん好きなんで、あんまり変な方向にいってほしくないんだけどなあ……はあ……。

進撃の巨人(1)

2010-08-27 19:43:44 | マンガ
進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)
諫山 創
講談社

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「進撃の巨人(1)」諫山創

 巨人に捕食されるのみの無力な人間は、街を壁で囲って閉じこもることにした。100年弱続いた安息の時代。仮の平和は、50メートルの壁をも超える大型の登場でぶち壊された。
 エレンと血の繋がらない姉(?)ミカサは、幼い頃、目の前で母を喰い殺された。それから5年、成長した彼らは自衛団に入団し、新人の中でも上位10人に選ばれるほど強くなった。祝杯の翌日、彼らの前に再びあの大型が現れる……。
 
 なにかと話題の対巨人アクション。
 いや……これは……怖い。
 人間をそのまま巨体にしてバランスを崩したような巨人の容貌と、人間を食べるときの歓喜の表情がひたすら怖い。しかも人間はあまりにも無力で、強そうなキャラも片っ端からやられまくる。それは主人公も例外ではなくて……。
 ……え? あれ? これ、主人公死んでないか? それとも主人公はミカサだった? なんだこの引き? どうなってるの?
 まああの状況で生きてるとは思えないけど、とりあえず2巻も買いますかね……。しかし怖いね。生理的に怖いマンガだ。

僕は友達が少ない(3)

2010-08-25 08:27:50 | 小説
僕は友達が少ない〈3〉 (MF文庫J)
平坂 読
メディアファクトリー

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「僕は友達が少ない(3)」平坂読

 友達作りを目的とした残念な部『隣人部』の誕生から一ヶ月。どこか間違った努力の賜物で、見た目ヤンキーの羽瀬川小鷹には友達ができない。それは隣人部の他の面々も同様だ。黒髪美少女の三日月夜空にも、金髪巨乳お嬢様の柏崎星奈にも、等しく同様に、友達はいない。
 いやおまえら自身がとっくに友達だろ。という野暮なツッコミはなし。そこは大人の余裕で堪えて忍んで、彼らの過ごす日常をにやにやと微笑みながら味わっていただきたい。みんなでプールに行ったり、別荘で合宿して海水浴をしたり肝試しをしたり、縁日でたこ焼きを食べたり花火をしたり、リア充を呪いながらリア充になることを望む彼らの夏休みは、まばゆいだけでなくどこかいびつに歪んでいるのだけど、とてもとても楽しそうだ。
 イベントの合間合間に挟み込まれる恋愛パートも見逃せない。父親が友達同士の小鷹が星奈の家にお呼ばれし、あまつさえお泊まりし、なおかつ星奈の父親に娘をよろしく頼むとお願いされてしまい、星奈圧倒的優勢と思われた矢先にとある事件がきっかけで小鷹と夜空が急接近したり、と、いろいろあって非常~に面白い巻だった。
 日常パートもイベントも恋愛関係もギャグも、すべてが好みのこのシリーズ。作者があの「ホーンテッド」の人なことが唯一の気がかりなのだが……。

恋忍

2010-08-23 18:57:29 | マンガ
恋忍(1) (ワイドKC)
高本 ヨネコ
講談社

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「恋忍」高本ヨネコ

 いつ何時でもたとえ人前でも自慰行為ができるスーパー変態中学生・栗乃花薫のもとに、恋華と名乗るロリ少女が現れた。妹を自称する恋華。その嘘を即座に見破った薫は、しかし母を籠絡され、無理矢理の同居生活を強いられる。
 クノイチの頭領の命により、薫を落とすことを目的とする恋華のベタな誘惑は、ロリ属性の無い薫の心には届かない。恋華の弟で、ナチュラル「魅了」アビリティを持つ男の娘・咲耶姫の誘惑も意に介さず、薫は変態紳士の道をひたすらに邁進する。
 そんな状況に業を煮やしたクノイチの最上級階位「十二宮」は、薫を落とすため、新たなロリ少女の派遣を決定し……。

 変態漫画。
「お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ」とか、最近思い切った変態漫画が多いけど、これもなかなかにはっちゃけている。
 登場人物たちの年齢のせいか性的ドキドキが皆無で、下ネタに寄った構成のせいでギャグ要素が濃い。ちょっと前に、薫の母親が薫の所持する大量のエロ本を「汚物は消毒」といいながら焼くシーンがネットで流れたが(正確にはその直前のシーン)、そういうネタが大量に散りばめられている。
 表紙があれなのでちょっと買いづらいが、なかなかに興味深い一冊なので、是非ご一読を。

それでも町は廻っている(7)

2010-08-22 17:24:29 | マンガ
それでも町は廻っている 7 (ヤングキングコミックス)
石黒 正数
少年画報社

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 さっき……10年後に残るとか残らないとかいってたけどさ~
 例えば、共通のゲームを通じてできた友達と、10年以上つき合いが続くかもしれないじゃん。
 
「それでも町は廻っている(7)」石黒正数
 
 待ってましたの「それ町」第7巻。
 高校野球を応援したり、相撲大会に出たり、紺先輩を夏祭りに連れ出したり、カードゲーム勝負に挑む弟にレアカードを買ってやったり、調理実習で作った弁当を紺先輩に食べさせたり、町内会の旅行でスキーをしたり、なにかといろいろ楽しそうな歩鳥。脱力系の彼女がうろうろちょこまかしてる様には、相変わらず癒される。
 個人的にご贔屓な紺先輩の登場シーンが少なく、エビちゃんにいたっては目次にしか登場しなかったのが残念だったけど、今回も水準以上に面白かった。
 とくに印象に残ったのは猛がカードゲームで隣の組の強い男の子と戦友みたいになる話。上記に上げた静姉さんのセリフに思わず「だよね~」としみじみ相づちを打ってしまった。
 というのも、僕自身にそういう友達がいるから。大学の頃からやっていたマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームで出来た友人は、いまでも大切な友人だから。そういう出会いってあるよね。この世の中に、無駄なことなんて何一つない。きっとね。

ソードアート・オンライン(4)フェアリィ・ダンス

2010-08-20 08:12:08 | 小説
ソードアート・オンライン〈4〉フェアリィ・ダンス (電撃文庫)
川原 礫
アスキーメディアワークス

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「ソードアート・オンライン(4)フェアリィ・ダンス」川原礫

 祖父の部下にして婚約者の須郷の策略により、空を飛び交う妖精たちをプレイヤーキャラクターに据えたVRMMO『アルヴヘイム・オンライン』の世界に囚われの身となったアスナを救うべく、キリトは再びナーヴギアを被る。多数の死者を出したことで封印された「アインクラッド」の悪夢を振り切って、再び仮想世界に降り立った。
 目的はただひとつ、現実世界でいまだ目覚めぬアスナを救う事。そのためだったらなんでもする。アインクラッドから引き継いだパラメータと、卓抜したプレイヤースキル。そして類希なるど根性でもって、目指すは『世界樹』。広大無辺に連なる枝のどこかに吊されている、囚われの姫の箱……。

 うーん、熱い。基本キリト無双で、最後もちょっとごり押しすぎる感は否めないものの、面白いからいいじゃないかと割り切らせる力がある。
 キリトが兄だとは知らずに協力している直葉=リーファとの道中や、互いの正体を知った時の動揺など、直葉がらみのイベントは、どれも切なくていい味出してる。アスナのことしか見ていないキリトより、どちらかというと直葉の物語だったような気すらするくらい、そのキャラクター性は立っていた。
 大団円後の各自の処理も良い。アインクラッド事件に巻き込まれた学生たちだけを集めた学校なんてめちゃめちゃ楽しそうだし(そりゃあ軋轢もあるだろうけど)、キリトの女たらしぶりや、絶妙な直葉のポジション取り(そうするしかないよね)まで、実に痒いところに手の届く仕上がりとなっている。

星降り山荘の殺人

2010-08-18 20:25:11 | 小説
星降り山荘の殺人 (講談社文庫)
倉知 淳
講談社

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「星降り山荘の殺人」倉知淳

 広告会社勤めの杉下和夫は、後輩を守るために上司を突き飛ばしてしまい、失意のどん底にあった。尊敬する社長の下で働きたいので退職したくはないが、いたらいたでいづらい。さんざん去就を迷ったあげく、会社に残る決断をするのだが、やっぱりただでは済まなかった。会社の芸能部門に異動させられ、スターウォッチャーとかいう怪しげな肩書きの文化人タレント星園詩郎のつき人をさせられることに。
 あまりにも畑違いな仕事に戸惑う暇もなく、いきなり埼玉秩父の山奥に旅行に行かされる杉下。聞けば、日本人離れした顔立ちと歯の浮くようなセリフで主婦層の支持の厚い星園が、彼をイメージキャラにしてキャンプ場を盛り上げようと画策する不動産会社の社長に招かれているのだという。
 わかったようなわからないような気分で現地についた杉下を待っていたものは、うら寂れたキャンプ場と一面の雪。UFO研究家や売れっ子女流作家、ミーハー女子大生などなどの癖のある人物たち。
 そして第一の殺人が起こる。電気も電話もなく、雪崩で下界との接点が絶たれた冬のキャンプ場を、血の赤が染めあげる……。
 
 なんともベタな設定の、「閉ざされた山荘」もの。登場人物が変な人ばかりなのが売りといえばいえるのだけど、変ぶりもそこまで発揮されていなかった。どんでん返しは意外性があって面白かったが、それ以外はどこまでも地味。杉下と女流作家の秘書の恋は、まあぼちぼちだっただろうか。でも淡泊にすぎるかなあ。うーん。

遊戯

2010-08-17 08:15:21 | 小説
遊戯 (講談社文庫)
藤原 伊織
講談社

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「ねえ、さっき横道にラブホテルがあった。はいってみる気にならないか」
「いいけど、わたしヴァージンですよ」

「遊戯」藤原伊織

 jamriceのハンドルでネットゲームに興じることが唯一の趣味の寂しい三十路男・本間透は、ある日ネット上のビリヤードゲームでparistexasと対戦した。ネットストーカーに追われているという彼女と古めかしい映画のタイトルで盛り上がった3日後、彼女は意図的に本間を探して接触してきた。今日会社を辞めたところだが、仕事を紹介してくれないかと頼む彼女に興味を持った本間は、直接生身で会ってみることにする。
 騙されてもともと、会えれば面白いかな、くらいに思っていた本間は、実際に会ってみたparistexasこと朝川みのりのユニークなキャラぶりに驚く。180くらいの高身長ですらりと細くて、顔には化粧気がなく、走るのが早く美しく、笑顔は無防備。でも礼儀はきちんとしていた。
 自分の勤める人材派遣会社を紹介した本間は、帰り際に興がのって、とある蛮行に出た。ビンタの一発も覚悟していたのだが、しかしみのりはまったく怒った素振りもみせずに凄まじい返答を返してきた。
 そして、そんなことがあった後も2人の関係はぎくしゃくもせずに普通に続いた。派遣スタッフとして順調に働くみのりは毎日せっせと本間にメールを送り、本間は10回に1回ぐらい返事を返す。
 そんな最中、みのりが興味半分に受けたCMモデルのオーディションに合格する。あっと言う間にスターダムを駆けあがるみのり。相変わらずの本間。そんな2人に、ストーカーの魔手が迫る……

 こいつでいよいよ最後。マイフェイバリットな作家・藤原伊織の遺作。
「最後の謎。作家は何を企んでいたのか。」
 の帯通り、未完の作品。未完の表題作の他に短編が1作。
 短編が平凡な反面、表題作が面白そうだった。あくまで「そう」なのが悔やまれてならない。
 ネットゲームなんていう現代っ子なお題を、ハードボイルド小説の旗手であった藤原伊織がどう裁くのか。もっとも興味深い一点は、まあまずまず無難にこなしていたと思われる。ウイルスやストーカーに、得意の業界話と銃器の話題を振りかけて、完成予想は「いつも通りの藤原伊織」だが、逝去寸前までの傾向を見るに、どっちに転ぶかはわからない。わからないまま、逝ってしまわれた。
 はあ……、悔しいね。

幇間探偵しゃろく(1)

2010-08-16 05:14:58 | マンガ
幇間探偵しゃろく 1 桜 (ビッグコミックス)
青木 朋,上 季一郎
小学館

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「幇間探偵しゃろく(1)」原作:上季一郎 作画:青木明

 昭和2年。東京は向島。明治頃から発展した花街に、舎六という名の幇間()ほうかんがいた。ほうかん、つまり旦那衆の座敷遊びを助け盛り上げるのが役目の太鼓持ちのはずなのだが、この舎六はひと味違う。みずから酒を飲みまくって楽しんで、野暮な客がいれば悪口雑言の限り。とくれば即座に干されておしまいのような気もするのだが、遊び人の和田宗の若旦那の弱みを握っているので、不自由はしない。若旦那のほうでも、意外と鋭い舎六の名推理のおかげで助けられる部分もあり、持ちつ持たれつな良好な関係を築けていた。

 いかにもビッグコミック、といった感じの大人の探偵漫画。昭和初期の花街の風俗がゆっくり楽しめる。死人は出るけど、跡継ぎ選びとか母親探しとかエロ親父を懲らしめろだとか、基本人情味あふれる話が多い構成なので、殺伐とした気持ちにはまったくならない。それでは物足りない人もいるだろうけれど、雰囲気的には合ってる。良作。