はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

バタリアン5

2007-05-30 19:02:51 | 映画
「バタリアン5」監督:エロリー・エルカイェム

 うわー懐かしい、ひさしぶり! と思ってパッケージを手にとったらすでに「5」だったバタリアン(いつの間に……)。とくに愛着があるシリーズではないけれど、「Brain(脳みそ~)」というフレーズとともに人を襲うゾンビの姿が見たくなったのでそのままレジに向かった。
 前作バタリアン4(見てない)で、ハイブラテック社からゾンビ化の薬、トライオキシン5のドラム缶をこっそり家に持ち帰ったチャールズ(ピーター・コヨーテ)。怪しげな黒服の連中(実はインターポールの内偵者)に売りつけようとしたところ、隙をつかれてゾンビに後頭部をがぶりとやられて死んでしまう。
 チャールズの甥にして前作の生き残り組みの一人ジュリアン(ジョン・キーフ)は大学生活を満喫するおバカな学生に成り下がっていたが、叔父の遺品の整理中に見つけた隠し部屋でトライオキシン5を発見する。友人でこれまた生き残り組みの科学オタク・コーディー(コリー・ハドリクト)に分析を依頼するが、トライオキシン5のドラッグに似た薬効に気づいたコーディーは、ジュリアンに内緒で一儲けを企み、密売人のスキートと組んで新ドラッグZとして学内にばら撒いてしまう。折しもハロウィンのシーズンに差し掛かった学内はパーティー気分に浮かれていて、レイブパーティーの会場にもZが出回り、大混雑の中でゾンビ化が始まり、そして惨劇の幕が開くのだった……。
 彼氏のあそこに噛み付いたり、チアガールの尻にかぶりついたりとげらげら笑えるシーンが豊富にある。ゾンビ化したネズミというのは恐ろしい素材だし、復活したタールマン(ドラム缶の中に入っていた)などシリーズ通してのファンへの訴求も忘れない。B級とはこうあるべしという見本のような映画だ。
 一番面白かったのはインターポールの二人組。車1台分のゾンビを殺すのにいきなりバズーカ取り出してみたり、混乱の極みにある会場で流れ弾を気にすることなく銃を乱射してみたりとやりたい放題。最後は手に負えなくなったゾンビを始末するのに呼んだ軍のヘリにいいところをさらわれたけど(躊躇なく銃を掃射したあげくミサイル落とした)、非常に良いインパクトを残してくれてた。
 逆にがっかりだったのはタールマン。復活してまもなく二人組に銃撃され、そのまま逃亡。ヒッチハイクするも誰にも乗せてもらえず、そのままいずこへともなく歩いていった。ゾンビ化ネズミとともに大暴れを期待していただけに、肩透かしの寂しさは拭いがたい。
 ともあれよい映画だ。ストーリーは破綻してるし、ツッコミどころも満載だけど、B級らしい脱力感に満ちている。

ワイルドスピード×3 TOKYO DRIFT

2007-05-30 16:12:46 | 映画
 僕らはルールに縛られない。未来も過去も曖昧な、その瞬間の中でのみ走り、息をする。

「ワイルドスピード×3 TOKYO DRIFT」監督:ジャスティン・リン
 
 米国よりも日本で大ヒットを記録したカーアクション「ワイルドスピード」の3作目。そのことを意識してか、今度の舞台は日本となっている。
 車に情熱を傾ける米国の高校生ショーン(ルーカス・ブラック)は、たびたび問題を起こしては少年院に入れられないために引越しを繰り返していた。今回もアメフト選手とその女を巡ってのくだらないいざこざの末に愛車を廃車にし、少年院に入れられる寸前に引越しすることを決意した。今までと違うのは母親がついてきてくれないこと。あまりの息子の無軌道ぶりに愛想を尽かし、遥か昔に別れた夫のいる日本へ放逐した。
 在日米軍の父とのぎこちないコミュニケーションや慣れない日本の高校生活の中でストレスをためたショーンは、同級生のトゥインキー(バウ・ワウ)に誘われ、深夜の立体駐車場へ赴く。そこは若者達の溜まり場になっていて、夜な夜なレースをネタに盛り上がっていた。徹底的にチューニングされた中身、スポコン(スポーツコンパクト)風に飾り立てられた外見、まばゆい車の洪水の中にはこれまた輝くような美女たちが群れている。酔ったような幻惑されたような気分になったショーンは、学校の同級生であるニーラ(ナタリー・ケリー)と一緒にいるところをタカシ(ブライアン・ティー)に見つかる。タカシはDK(ドリフトキング)と呼ばれる走り屋たちの帝王で、ヤクザ(千葉真一)を叔父に持つこともあり、その界隈では誰もが一目置く顔だった。ドリフトのドの字も知らないショーンは、タカシとの戦いに成すすべなく惨敗する。
 ハン(サン・カン)の貸してくれたシルビアをぼこぼこに壊してしまったショーンは、ハンがやっていた借金の取立てを代行して負債を返すことにした。同時にドリフトを習い、タカシに一矢報いようと日々牙を磨いていく。
 最初は金によってのみ結びついていたショーンとハンだが、同じ時を過ごし友情を育み、やがて大切な友人となった。だが世の中何事もうまくはいかない。ハンがタカシに納めていたパチンコ屋のアガリを掠めていたことがバレたところから、一気に話は加速する。夜の渋谷でのカーチェイスの末にハンは事故死し、ショーンはタカシの叔父を調停役にしたタイマンレースに挑む。
 日本発祥のドリフトという技術をピックアップしたこと。スターター役の妻夫木聡や釣り人役(なぜ……)の土屋圭市のスポット出演など個人的にはどうでもいいのだがファンには嬉しい演出も散見されることなど、随所に日本びいきの見受けられる映画だ。しかしそれについては良い部分も悪い部分もあって……。
 前2作と異なる在日外国人の青春ムービー+ドリフトといった内容で、「ワイルドスピード」の名を冠することに疑問が残る。勘違い外国人の偏った日本感もバタ臭いを通り越してはっきりとくどいし、ストーリーも適当。とはいえ根幹を成す「走り」はさすがの出来だ。スピードとスタントだけだった前2作との最大の違いであるドリフトを使ったレースシーンがとにかく素晴らしい。ランエヴォ、フェアレディZ、RX-7にシルビアと、ぎりぎりにチューンされた日本車の奏でるスリップ音が耳に心地よい。見ているだけですっとするような映画なのだ。 

少女ファイト(1)

2007-05-28 10:20:01 | マンガ
 真帆は奇妙な感覚にとらわれていた。定位置を一歩も動くことなく、まったく回転のかかっていないレシーブが返ってくる。それはセッターとしてはやりやすく、喜ばしいことだ。
 小雪は奇妙な感覚にとらわれていた。スパイクするとき左肩を下げない。飴屋中学にはネットから離れた足の長いスパイクを打てばいい。アタッカーとして大事なことを教えてもらった。おかげで調子も上がってきた。
 だけど納得いかない。これはおかしい。二人は思った。
「……あんた、万年補欠だったはずじゃないの?」

「少女ファイト(1)」日本橋ヨヲコ

 溢れんばかりの実力を隠していた。誰より強いバレーボールへの情熱を秘めていた。小学校時代、全国2位のチームのキャプテンを務めていた大石練は、中学に入ってからは凡庸な選手を演じていた。目立たないようにひっそりと、コートの片隅で球拾いをしたりチーム全員のユニフォームの洗濯をしながら過ごしていた。
 狂犬、と呼ばれたことがあるからだ。恵まれた才能と比例した情動があった。自分と同じ事を周囲にも求め、得られなければ激昂した。どこまでものめりこみ視野が狭窄し、気づいたときにはひとりだけになっていた。
 もうあんなことはたくさんだ。その気持ちが彼女の衝動を押し殺した。歯がゆい気持ちでチームメイトの試合を見ながら、誰に見せることもできない牙を研ぎ続けた。
 だがある日、チームメイトの代打で出た試合で、練はその実力を見せてしまう。盛り上がった気持ちのままにコート内を走り回って、結局すべてをぶち壊しにしてしまう。
 退部になった練は自暴自棄になり、姉の墓の前で泣いているところをかつての姉のチームメイトにして現在は母校黒曜谷高校のバレーボール部監督を務める陣内笛子に見られる。彼女は墓前に捧げる花を携えながら練に語りかける。
「そのままではいつか自分に殺されるぞ」
 姉が最後に試合で見た景色を見せてくれるとの陣内の言葉を信じ、練は黒曜谷への進学を決めた。幼馴染の式島シゲル・ミチル兄弟とその家族の暖かい支援を背に、彼女は姉の事故死以来止まっていた次へのステップを踏むのだった。
「G戦場ヘブンズドア」、「極東学園天国」など快作を飛ばす日本橋ヨヲコの新作は、バレーボールに青春を燃やす少女たちの物語だ。他のスポ根バレーボール漫画と一線を画すのは、主人公が最初から才能実力兼ね備えた人間であること。だがそれゆえの周囲の嫉妬や心無い対応に傷つき、怖くて自分を出せなくなった人間であること。資質と反比例する不安定な気持ちの振幅が面白い。
 練に恋する式島兄弟。ライバル心を燃やす千代。憧れを抱く小田切などなど、周囲を固めるキャラクターたちも個性豊かで愉快な良作だ。

2007/05/27

2007-05-27 09:35:48 | 出来事
2007/05/27

今月3日。米国アラバマで巨大豚が仕留められた。体長2.74メートル477キロ。横綱朝青龍に換算して3.2人分。トンカツなら1600枚分に相当するという。それほど巨大な生き物が今まで誰にも発見されず、森の生態系を壊さずに存在してこれた。世の中に不思議は尽きない。
先日近所のレンタルビデオ屋が中古ビデオのセールをしていた。弾丸ランナー、アンラッキーモンキー、金融腐食列島呪縛、ファイトクラブ、グラディエーター、スナッチ、ナチュラルボーンキラーズ、RONIN、8mm。名作佳作合わせて9本が900円。DVDタイトルの拡充に押し出されるようにして生まれたこれらの不良在庫はますます増えていくことだろう。日本中のレンタルビデオ屋に眠る億単位の在庫。それらは一体どこに消えていくのか。世の中に不思議は尽きない。

ハウス・オブ・ザ・デッド2

2007-05-26 11:50:13 | 映画
「ハウス・オブ・ザ・デッド2」監督;マイケル・ハースト

 ゾンビファンの持つ源流に対するオマージュ、というのは一般の視聴者が考えるよりも強く深い。「ジョージ・A・ロメロの作った砂場で遊んでいる」という製作者のコメントが、それを端的に表している。源流から生み出されたゾンビという強烈なキャラクターをどのように生かすのか、どのように脱却するのか、創意工夫のもとに生み出された数々の名作駄作の末に位置する作品のひとつがこの「ハウス・オブ・ザ・デッド2」だ。散々な結果に終わった前作のイメージを払拭するため、監督も方向性も随分と変わっている。
 息子ルディーが連れてきたアリシア(この辺は前作を見ていないと分からない)を復活させるため、キュリアン教授(シド・ヘイグ)は大学の科学実験ラボで秘密の研究を続けていた。それは遺体に特殊な薬品を注射するというものだった。遺体安置所から材料を運び込んだのが大学側にばれたため、やむなく「自ら」遺体を製造したキュリアン教授は、その日もいつものように注射をした。だがこの日に限って実験は成功し、遺体は超人類(ハイパーサピエンス)として復活する。深夜の科学実験ラボから惨劇は始まるのだった。
 超人類に占拠された大学に、対超人類の国際組織AMSと米軍の特殊部隊が乗り込んだ。目的は事の発端である0号ワクチンを採取し、抗ワクチンを作ること。AMS隊員であるアレックス(エマニュエル・ヴォージア)とエリス(エド・クイン)は、特殊部隊と仲違いしながらも徐々に源流に迫る。しかし0号ワクチンを製薬会社に売り渡そうと暗躍する特殊部隊員に裏切られる。すでに身に帯びる寸鉄もなく、途方に暮れたエリスは……。
 大学コメディのように始まったり、超人類の血を媒介する蚊(!)がいたり、超人類の血と臓物を身に帯びてなりすましを謀ったりと、源流に迫りかつ脱却する試みは買う。ストーリーもわりとまとまっているし、特殊メイクもなかなかの出来だ。特殊部隊の有り得ない無用心さや、なんだかんだで傷つかないアレックスとエリスのしぶとさも、B級映画として見る分には問題ない(それがB級)。だけどこれ、「ハウス・オブ・ザ・デッド」である意味がないのではないだろうか。記号や設定こそわずかに生かしているものの、ガンシューティングをもとにした意味をうかがわせるようなものが一切ない。最後の戦闘で使う武器が短剣と手斧なのを見て、ふと悲しい気持ちに襲われたのだった。

ハウス・オブ・ザ・デッド

2007-05-23 21:40:52 | 映画
「ハウス・オブ・ザ・デッド」監督:ウーヴェ・ボル

 音楽・ダンス・酒・ドラッグ。ハッピーでおバカな若者たちで埋め尽くされた会場は、惨劇の舞台と化した。孤島でのパーティーに向かう船に乗り遅れたサイモン(タイロン・レイツォ)ら一行は、港に居合わせたカーク船長(ユルゲン・ブロホノフ)に孤島までの送迎を頼む。しかしそこは狂った神父の住むと呼ばれる呪われた島だった。一行が着いた時にはすでに若者達の姿はなく、島中に不気味な生き物の気配が立ちこめていた……。
 詳しい説明はいらないだろう。平穏→突然の襲撃→混乱→死闘と典型的な流れを見せるゾンビ物だ。通常と異なるのは「アローン・イン・ザ・ダーク」で「やらかした」ウーヴェ・ボルが監督だということ。同じホラーゲームを題材としていても、もとがガンシューティングであるということだ。
 以前の失敗のことを思い出し、暗澹とした気分での鑑賞となった。たしかに悪い点はあったが、改善できそうな部分も見られた。ダメな部分は変わらない。人物描写も盛り上げ方も中途半端で、見るからに「無駄」が多い。良いところは原作に影響を受けたガンシューティングの部分。島に隠されていた大量の重火器を手にした一行が、ゲームさながらのドンパチを繰り広げるシーン。デザートイーグル、短機関銃、焼夷弾に手榴弾に古風なカトラスまで。多彩な武器を手にした一行が圧倒的な火力でもってゾンビの群れを駆逐する姿はなかなかに気持ちがいい。邦画「ヴァーサス」を思わせるような(あれよりは遥かにレベルが低いけれど)展開が見られたことが嬉しかった。
 しかし、さすがはウーヴェ・ボル。やっぱり最後は息切れする。ガンシューティングパートが終わったあとは「え? なにそれ?」と叫んでしまうほどの勢いでストーリーを畳んでしまう。申し訳程度にゲームへの繋がりを思わせるようなラストを付け足しはするものの、時すでに遅し。「バイオハザード」や「サイレントヒル」のような一線級には及びもつかぬB級ぶりをアピールしてしまったのだった。

Q&A

2007-05-21 16:52:03 | 小説
「Q&A」恩田陸

「6番目の小夜子」、「ドミノ」以来ひさしぶりの恩田陸は、叙述トリックに傾倒した実験的作品だ。
 舞台は郊外のショッピングセンターM。衣類、食料品、飲食店、家電と様々なテナントの入った店内には、祝日ということもあって客が溢れていた。集合店舗の利便性もあって、近所の大型団地からだけではなく遠隔地からも家族連れが訪れ、ごった返していた。そこで事件が起こる。百数十人にも及ぶ死傷者を出したその事件は、しかし犯人のわからぬまま幕を閉じた。火事、有毒物質の散布、集団ヒステリーに政府の陰謀説や宇通人の実験説など、まっとうな推論と愚にもつかない噂が混ざり合って流れ、結局どれが正しいのかあるいはどれも正しくないのかわからなかった。当事者にもそれ以外の者にも。ただいえるのは、多くの人間が一ヶ所に集中して殺到したため、押し合いへし合いの末に事故としては信じられない規模の被害が出たということだけ。
 本作は、その事件に何らかの形で関わった回答者と事件を追及する質問者の会話で成り立っている。それ以外の描写は一切存在しない。個人を表す固有名詞もほとんど登場しない潔さ。題名どおり、まさにQ&Aだ。
 Mの外にいたマスコミ関係者、買い物に訪れた老人、謎の万引き夫婦を目撃した主婦、事件の担当から降りた弁護士、異臭のする液体を撒く怪しい男を目撃した野球少女、被害者救出に駆けつけた消防士などなど。様々な角度から事件を検討するため、質問者は多くの回答者に質問していく。一見平凡そうでいながら内に澱んだものを秘めた回答者たち。彼らと接触するうちに、事件の異常性を知るうちに、質問者の心のうちにも徐々に軋みが生じ始め、ついには質問者(事件を追及していた)がいなくなる。それでもQ&Aは続く。誰だかわからぬ者同士の会話の中に、不気味な事件の全貌が姿を現すのであった……。
 叙述トリックというのは作品の登場人物ではなく読者へのミスリードのために用いられるものだが、これほど集中的に用いられた例を他に知らない。またそれが効果的なのだから面白い。オチがわかりやすいのが残念ではあるが、斬新かつ歪みを孕んだ恩田ワールドを楽しめる良作である。

2007/5/20

2007-05-20 09:19:55 | 出来事
2007/5/20

 70年代、犯罪の凶悪化に伴い極秘裏に設立されたSAT。「六機の特殊」と呼ばれ、警察最後の切り札として存在した特殊急襲部隊。情報公開された今も、その内情は謎のままだ。構成員は身体能力に優れた精鋭で、家族にすらも職務を明らかにすることはできない。明らかにしてよいのは殉職した時だけ……。
 愛知県長久手市の元暴力団組員篭城事件で殉職した愛知県警機動隊の林一歩巡査部長(二階級特進により警部となった。23歳)は、県警察学校を主席で卒業し、柔道を始めて3年で3段に昇段し、そして持ち前の職務遂行への強い意志で将来を嘱望されていた。妻(24歳)と生後11ヶ月になろうとする長女に恵まれ、順風満帆の未来図を描いていたところだった。
 事件当日、先に銃撃され負傷したまま放置されていた大本巡査部長の救出に向かった警察官の支援をしていた林警部の首筋を、元暴力団組員の銃弾がとらえた。防護マフラーと防弾チョッキの合間に潜り込む、最悪の一撃だった。
「家に来た時は職務上、仕事の話はほとんどしなかった。SATになったのも事件で知った」
「機動隊となればこういう事件もあり得るが、まさか一歩が……という思い。志願した仕事だったので、ご苦労さまと言ってあげたい」
 これは林警部の父、千代和(51歳)さんの言葉だ。自分の息子が実はSATの一員で、殉職したなんてことを聞かされ動揺しながらも、しっかりと現状を見つめ、報道陣に答えてくれた。
 29時間にも及ぶ長期戦。大本巡査部長の救出に要した5時間。発砲行為と二次被害を恐れる警察組織としての行動力に疑問の声が上がった。
 これが仮に映画や漫画の世界ならば、誰か仲間思いの無鉄砲者がいて、危険をおしてでも突入することだろう。命がけの攻防の末に大本巡査部長の身柄を確保し、勝利を高らかに歌うことだろう。だが、これは現実なのだ。誰が味方のために命を賭ける?自分が撃たれるかもしれないのに。自分が撃たれなかったとしても、人質が殺されてしまうかもしれないのに。どんな結果であれ、被害が出れば責任をとらなければならない。それが他人の命か、自分の命なのかはわからないにしても、贖わなければならない者は確実に出る。その認識が刃を鈍らせる。臆病が足を竦ませる。それが当然だと思うし、そのことで誰を責めようとも思わない。慎重策だってひとつの正解には違いないのだし、強攻策に出て被害を広げる可能性はおおいにあった。だが結果として、ひとりの有望な警察官が命を落とした。事件現場に献花に訪れる人の姿は、今も絶えることがない。

サイレン

2007-05-18 21:51:53 | 映画
サイレンが鳴ったら家から出てはいけない。
サイレンのある丘の上の鉄塔に近づいてはならない。

「サイレン」監督:堤幸彦

かつて、たった一人の生存者を残し、島民全員が消息を絶ったという忌まわしき過去の残る夜美島。事件から29年経った今も、その傷跡は決して消えていない。島のそこここに点在する廃屋。惨劇の記憶を残す血の跡……。
天本由貴(市川由衣)は、病弱な弟・英夫(西山潤)の転地療養のため、夜美島を訪れた。何十年も人の住んでいなかった廃屋を住めるように掃除し、英夫の面倒を見、仕事以外に気の回らない父・真一(森本レオ)の身の回りの世話をし。気のいい青年医師南田(田中直樹)にも助けられ、どうにかこうにか島での暮らしに慣れてきた頃、事件は起こった。夜行性動物の撮影に出かけた父が帰ってこなかったのだ……。
島中に鳴り響くサイレンの音が印象的な本作は、そのあまりの怖さ、不気味さによってCM放映が中止されたという伝説のゲーム「サイレン」の第2作目を原作にしたホラームービーである。メガホンをとったのは「ケイゾク」、「トリック」、「IWGP」などで名を馳せた堤幸彦。キャスト陣も主演を除いてはクセ者揃いで、個人的にかなり期待していた作品だった。だった。過去形。打ち砕かれたというニュアンスをこめた。正直とてもつまらない作品だった。かつて「トイレの花子さん」で異彩を放った堤幸彦だから、きっとホラーも大丈夫だろうと油断していたらこの体たらく。非常に不愉快な気持ちにさせられた。
ひっぱりすぎた。由貴が島民に襲われるまで時間がかかりすぎ、だれてしまった。しかもいざ襲ってみてもあまり怖くない。画一的な「ゾンビアクション」は子供だましの域を越えていない。オチもひどい。ひと昔前のサイコスリラーのようだ。「視線の行方と小道具により暗示していた真相」で観客を驚かせるつもりだったのだろうが、驚くよりも先に唖然としてしまった。世の中にはつけていいオチと悪いオチがある。
森本レオや嶋田久作のゾンビアクションなんてこの先一生見られないだろうから、希少性という意味で見るのはよいかもしれない。すくなくとも話のタネにはなる。それ以外の目的での鑑賞はお勧めできない。

藤原伊織

2007-05-17 17:45:40 | 出来事
藤原伊織

今日、大事な人が死んだ。午前10時14分。都内の病院で息を引き取った。治療不能の食道癌との闘病。それがどれほどの苦闘なのか知らない。だが、最後まで明るさを失わなかったという話を聞いて嬉しく思った。彼の小説の主人公のような孤独な死に様は、悲しすぎるから……。