はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

ショートソング②

2008-02-27 08:58:20 | マンガ
ショートソング 2 (2) (ジャンプコミックスデラックス)
枡野 浩一,小手川 ゆあ
集英社

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「ショートソング②」原作:枡野浩一 画:小手川ゆあ

 ハーフで美形で腰が低くて素直だけど童貞で英語が話せなくてファッションセンスのない大学生・国友克夫が、彼の短歌を作る才能に嫉妬した伊賀寛介に弄ばれる異色の短歌・ラブコメディ。
 国友の意中の人・舞子といちゃついたり、美女たちを次々ととっかえたり、挙句の果てには国友の妹とデートしたり……国友が苦しむことに性的興奮を覚えるド変態・伊賀の行動はエスカレートを続ける。
 国友は辛いながらも涙をこらえ、今自分にできる精一杯のことをやろうと短歌を詠みまくる。賞金200万と歌集出版の特典付きの大賞に応募し、それまで培ったことを形にしようとするが……。
 一方伊賀は、生来の人付き合いのルーズさが裏目に出たのか、別れた女に身に覚えのないストーカー扱いを受け、舞子にも振られ、会社での立場も危うくなる。土壇場で己の愚かさに気づき、らしくない地道な努力で這い上がろうとするが……。

 既存の土地を開拓しきったことで、微に入り細を穿つしかなくなった漫画業界。中でも短歌というジャンルは目新しく、これからに期待していたのだが、このたび無念の打ち切りと相成った。
 当然予想はされていた運命の逆転も、訪れるのが早すぎてしっくりこない。メイン2人にそれなりのラストは与えたつもりだろうが、広げた風呂敷は回収しきれず、不自然さが際立った。
 しかしこのジャンルの面白さは、登場人物のやり取りを見ていればわかる。ただの日常会話でなく、五七五七七のフレームに切り取られた想いをぶつけ合うことで、より凝縮された自身の有り様を表現しようとする姿がまぶしく鮮烈だ。
 キャラクターとしても、国友をいたぶる伊賀が良かっただけに残念。衆目をはばからずバレンタインのチョコを渡す伊賀とそれを受け取った時の国友の表情は秀逸だったし、これが見れなくなるのは悲しい。作者の次回作に期待したい。

オー・マイ・ガアッ!

2008-02-25 09:04:54 | 小説
オー・マイ・ガアッ!
浅田 次郎
集英社

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 ギャンブラーなんてろくなもんじゃない。金を時間を食い潰し、手元に残るのはわずかな欲の欠片。周囲の期待を裏切り続け、気づけば1人孤独な風の中。寝酒と共に見る夢は、胴元相手の一発勝負。億万長者(ミリオネア)かくすぶりか、行き着く先はただ賽の目のみぞ知る。

「オー・マイ・ガアッ!」浅田次郎

 共同経営者が残した莫大な借金に追われ恋人に逃げられた大前剛。
 一部上場企業のヤンエグから立ちんぼ娼婦に堕ちた梶野理沙。
 シルバースターに輝いたベトナム戦争の栄光にすがって生きる失業者ジョン・キングスレイ。 
 アメリカン・ドリームの都ラスベガスのカジノ「バリ・ハイ」を訪れたのはいずれ劣らぬ人生のくすぶり3人。フルベットで30ドルもの投資が必要なハイリミット・スロットマシン「ダイナマイト・ミリオン・バックス」が抱え込む5400万ドルの賞金を狙う彼らの前で、3匹のライオンが揃って火を噴き、ラスベガス史上最高の大当たり(ジャックポット)が飛び出した。
 大前が座っていたマシンにジョンが投資したところを理沙がレバーを引いたという込み入った状況の中、なんとか話し合いで解決を見た3人。しかしスロットネットワークの管理会社に5400万ドルもの大金を支払う能力はなく、代わりに送られたのは伝説のヒットマン「山賊(バンデット)」ジョー……。

 こんなコメディ全開の筋立てからハードボイルドを描いてみせるところはさすが浅田次郎。ラスベガスの歴史や日本の戦後、アメリカ人の精神といったお堅い背景も柔らかく調理し、「プリズンホテル」や「王妃の館」を思わせる良質のコメディに仕上げた。
 キャラクターのユニークさ、設定の巧み。それ以上に心に残るのはラスベガスという場所の大きさだ。巨大なホテル。奇抜な演出。24時間営業のギャンブル・サンクチュアリ。非常識であることや非日常であることをあっさりと許容する懐の深さ。ラスベガスに魅入られて「おかしくなって」しまった人々の行く末を思いながら、いつしか米ドルを握り締めて空港のエントランスに立つ我が身を想像して怖気を振るった。危ない。危ない。

花と泳ぐ①

2008-02-22 21:05:24 | マンガ
花と泳ぐ 1 (1) (まんがタイムコミックス)
口八丁 ぐりぐら
芳文社

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 この時僕は どうして普通に「また」と答えたのだろうか 次があるなんて保証はどこにもなかったのに
 やっぱり幽霊にとってもクリスマスは楽しいもんです またこんな楽しい日が来るといいな
 菊子はごく普通の生活をふみちゃんに送って欲しかったんだろう それは自分が送れなかった人生のやり直しを託す事 今ならそれがよくわかるのに
 ふみちゃんはあの日知った真実を僕に話さなかった それはしばらく経ってから僕を少し怒らせる原因になる わかっていたら菊子があんな目に遭う事もなかったのに 今となってはもう遅いのだけれど
 僕たちはこんなに狭い世界ですれ違い続けていた でも今ならすれ違いの理由が解る気がする 僕はきっとそれに気付かないようにしていたんだ

「花と泳ぐ①」口八丁ぐりぐら

 口八丁ぐりと口八丁ぐらのコンビによる、幽霊との共同生活をテーマにした本作品は、日常、ブラックユーモア、エロ、オタク……基本的にドラマ性のない4コマ漫画の世界に殴りこんだ意欲作だ。
 人より霊感の強い大学生・笹川幸太と、幸太の部屋に転がり込んだ料理好きで記憶喪失のとぼけた幽霊・菊子。菊子を追って隣の部屋に住み着いた見習い霊媒師の女子高生・下田ふみと、幸太の親友で海より深い寛容さを持つが霊感ゼロのフリーター・梅ちゃん。黒猫の会長も含めた4人と1匹をメインとしたシュールギャグ。というのが基本だが、そこに冒頭に上げたような「取り返しのつかない結末の暗示」が時折ノイズのように混じり、なんともいえない物悲しさを生み出している。それは幸太たちの日常が楽しければ楽しいほど効果的に響くのだ。

魔界の塔

2008-02-19 20:18:06 | 小説
魔界の塔
山田 悠介
幻冬舎

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「魔界の塔」山田悠介

 ニートだが天才的ゲーマー・嵩典の2人の後輩が植物状態になり病院に運ばれた。別々の日付、別々の部屋で発見されたのにも関わらず、彼らには多くの共通事項があった。共に白目を剥いていた。同じタイトルのゲームをしていた。同様に最後のボスに引導を渡され、「お前も、石にしてやるわ」というメッセージが画面に表示されていた。
 最後のボスを倒せないゲームが存在する。数年前にプレステ2で発売された「魔界の塔」という名のRPGに付随するある噂の真偽を確かめるため、彼らは病院送りになった。いまだ快復の兆しは見えず、家族は深い困惑と悲しみに包まれている。
 半信半疑のまま「魔界の塔」に挑戦した嵩典もまた、最後のボスにはかなわなかった。死亡寸前にリセットボタンを押したことで、最悪植物状態になることはまぬがれたものの、ゲームの謎を解くことはできなかった。自キャラを最高レベルに鍛え上げてもダメ。薬品類を満タンに装備してもダメ。途中の町をすべて回ってもダメ。「逃げる」コマンドを選択しても逃げられない……。
 完全にお手上げ状態となった嵩典の前にいきなり開けた社会復帰の道、それは叔父に紹介されたゲームメーカーの社員というものだった。慣れない社会人としての生活に四苦八苦しながらも徐々に成長していく嵩典。あのゲームのこともいつか遠い記憶になろうとしていたその時、彼は気づいた。同じゲーム会社に勤める上司が、かつて「魔界の塔」の製作に携わっていた者の1人であったことに。

 年齢制限マークや「ゲームステーション2」のプリントが施された装丁のおかげでまるっきり攻略本にしか見えない本作は、「リアル鬼ごっこ」の山田悠介の手によるゲーム・ホラー。
 山田悠介らしいというか、文章は相変わらず下手。デビュー作「リアル鬼ごっこ」の時と比べればさすがに成長しているものの、まだまだ文章だけで読者を楽しませる域には達していない。
 主人公の嵩典が性格悪すぎて感情移入できなかった。周りの人間に対する態度も、後輩を救うためというよりはゲームをクリアしたいという欲求だけのプレイ動機も気に食わない。そのくせ就職はうまくやろうというのだから虫が良すぎ。恋人のメイドガール・絵里香を生かせばもう少し話が膨らんだと思うのだが、けっきょく投げっぱなしになってしまった。
 ゲームソフト・魔界の塔自体に興味が抱けなかったのもマイナス点。プレステ2のゲームという設定のくせに、ビヨビヨ(なんの略だったかすら覚えていない)クラスのチープさ。いっそスーファミくらいに落とせばよかった。攻略方法も無理矢理すぎて釈然としない。
 後味も悪い。それはホラーだからとかいう以前の問題で、やりたいことがわからない筋の甘さが要因。

ツマヌダ格闘街③

2008-02-18 03:08:34 | マンガ
ツマヌダ格闘街 3 (3) (ヤングコミックコミックス)
上山 道郎
少年画報社

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「ツマヌダ格闘街③」上山道郎

 町おこしの一環で、路上での格闘技の試合と興業が合法化されている格闘技特区・妻沼田。文科系100%の温厚男・八重樫ミツルはイラストレーターを目指して上京したものの、メイド服の格闘美少女ドラエさんに鍛え上げられ、ストリートファイターになってしまう。
 紆余曲折はあったものの、それまでの人生の中でまったく殴り合いをしたことのなかったミツルも、今やストリートファイトで17勝をあげるアマ・エリート。本巻冒頭ではキックボクサーを一蹴。太極拳の使い手・ジロー王と組んでのレスラーとのタッグマッチでは息の合ったシンクロ攻撃を見せ、元プロ野球選手の格闘技選手というどこかで聞いたような経歴のフィジカル・エリートを足場の悪さを利用してあっさり退け、累計20勝でついにプロへの階段を登りきったのだった。
 しかしミツルは強い。投げに歩法に打撃を加え、強くなりすぎて正直つまらない。書き方の問題でもあるのだろうが、あまりにもあっさりと敵を退けすぎて物足りない。カタルシスに欠ける。プロ編の次巻以降になれば少しは変わるかもしれないが、変わらなかったらこの作品の未来が不安だ。少女たちのメイド姿なんてものは蛇足。根幹であるところの格闘で、もう少しドキドキさせてほしい。レスラーとのタッグマッチやトンファー使いの少女・羽鳥心とドラエさんの戦いなど、掘り下げれば面白くなりそうな要素はある。次にどんな技を繰り出すのだろう、どんな方法で凌ぎきるのだろう、そういった期待感を抱かせてほしい。

夜明けの街で

2008-02-15 09:55:38 | 小説
夜明けの街で
東野 圭吾
角川書店

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 不倫するやつなんて馬鹿だと思っていた。
 ところが僕は、その台詞を自分に対して発しなければならなくなる。
 ただし、その言葉の後に、こう続ける。
 でも、どうしようもない時もある。

「夜明けの街で」東野圭吾

 主人公・渡部は某建設会社の電気課主任。30代後半で妻も子もいて、職場でもそれなりの待遇を受けている。下からの突き上げはあまりなく、上司からの圧力もほどほどで、今の生活に不満はなかった。
 大学時代のワンゲル部の男友達3人と居酒屋で飲んでいるとき、こんな話が出た。
「俺たちは親父。男ですらない」
 その話は、特別老いを意識したことのない渡部にもショックだった。人生の折り返しを迎え、出世、子供の成長、孫の誕生、退職、老後という目の前に敷かれたレールがとてつもなく巨大なもののように見えた。
 居酒屋の帰り、ふとしたきっかけから立ち寄ったバッティングセンターで、渡部は自分の課の派遣社員・仲西秋葉(あきは)を見かける。普段はクールな彼女が一心不乱にピッチングマシーンに向かい、打ち損じたら「ええいクソッ」と吐き捨てる様を呆然と見つめた。合流し、カラオケで痛飲した秋葉が渡部の肩にゲロを吐いたところから恋は始まる。
 最初は一定の距離を保っていた。恋人とも友達ともいえないような微妙な距離。頭がよく活動的な彼女の行動には刺激を受けるが、それ以上近づく気は毛頭ない。自分には家庭がある。
 だが、こちらを親父だとなめきっている彼女の「渡部さん、行きますか。それとも逃げますか」なんて挑発的な言葉に火がついた渡部は、ついついデートを重ねる。やがてある夜、彼女の決定的に弱い部分に触れてしまった渡部は、越えてはならない一線を越えてしまう。
「この夜のことは一時の気の迷いと割り切ったとする。だけど本当にそれで済むだろうか。境界線の向こう側に、目眩がしそうなほど甘美な世界があると知っていて、これから永遠に踏み越えずにいられるだろうか。境界線の上には壁などなく、ひょいと一跨ぎすればいいだけのことと知ってしまった今となっては、それは非現実的なほど不可能に思えた」
 甘い甘い地獄の沼に足をとられてしまった渡部は、ずぶずぶとはまり続ける。若い秋葉との逢瀬を重ね、頭まですっぽり飲み込まれるまでに、それほど時間はかからなかった。しかもその沼には、犯人不明の殺人事件の容疑者というおまけまでついてきて……。

 東野圭吾の新境地にして最高傑作、という看板に偽りなし。不倫と、まもなく時効を迎える殺人事件という二つのストーリーラインを組み合わせて、ミステリのような恋愛小説のような不思議な世界を作り上げた。どんでん返しの連発と、後味激悪の終わり方にうならされた。
 流されまくる心の弱い主人公・渡部にシンパシーを感じた。意地っ張りな秋葉との交際に入り込めた。彼女の一挙手一投足に動揺する渡部の心の動きが手にとるようにわかって、なんだか怖かった。2人が近づけばドキドキしたし、離れればつらかった。入り込みすぎたせいか、最後のシーンなど泣きそうになってしまい、あわてて本を閉じて空を見つめた。
 不倫は悪いことだ。いいかえてもいい。浮気は悪いことだ。好きな相手がいるのに他の相手を愛するのは死ぬほど辛い。周りにも迷惑がかかるし、自分たち自身大きな傷を残す。でも、どうしようもない時もある。甘い甘い地獄からの呼び声が、微かな理性を突き崩す。その瞬間のえもいわれぬ衝撃を、僕は今も覚えている。だからこそ、この本をパートナーにはすすめられない。願わくばこの文章を読んだあなたにも。そいつが身のためだ。

H20/2/9~H20/2/10

2008-02-12 21:05:31 | 出来事
H20/2/9~H20/2/10
霙のち雨。
 07:20帰宅。セブンイレブンで購入したチキンサラダパスタとシーチキンおにぎりと牛乳での飯、風呂に入り、洗濯。
 再購入したメモリを挿入し、サブPC起動するも立ち上がらず。
 以前使用していた環境(512MB2本)に戻すもダメ。
 メモリ逆差しで完璧に壊してしまったらしいサブPCを後部座席に突っ込み、洗い終わった洗濯物をコインランドリーの乾燥機へ。
 傷心のまま大手N店へ。信頼度の高いイベント日、プラス3連休初日ということもあってかパチンコは本当に1台も空いてない(パチンコ優良店)。仕方ないのでスロット新世紀エヴァンゲリオン(新しいほう)へ。2台移動。決して悪くはなかったが、隣の台が明らかに他とは違う出方をし出したところで終了。プラス8500円。
 20:00。A君の親戚の家の近くでA君と待ち合わせ、合流したところで車で1時間半ほどの距離にある漁港へ。予約してあった宿へチェックインを済ませ、夕食をと思ったが、時間も時間なので近くの中華料理店しか選択肢がなく。まずいわけではなかったが侘しい食事になった。
 そのまま宿へ1泊。増築を重ねた回廊状で、中心に日本庭園(風)を見下ろす2階(?)建ての宿だが、急な予約でとった安い宿(1泊朝食付き1人5400円)だ。そのせいか、やたらと寒い。廊下だけなく部屋も寒い。風呂も温泉ではない。子供連れの団体客が多いせいで賑やかで、なんだか青年の家のようなたたずまい。でも2人とも疲れきっていたので気にせずぐっすり眠る。
 翌朝は08:10起床。準日本風和朝食をとり、朝風呂入ってチェックアウト。
 近くの大型市場を冷やかし、大型家具店をうろつき、大型書店で本を9冊買ってからファミレスG店で昼食。14:00~18:00まで演劇のワークショップに参加するA君を市民会館に降ろし、中古買取り専門店Hへ。サブPC売り払う。最悪引き取り料とられるかと思ったが、部品取りに使うとのことで5000円で買い取ってもらう。浮いた金で新PC用のマウス、キーボード購入し、デパートS店の屋外駐車場にてPSPの「英雄伝説~空の軌跡~SFC」プレイしながら待つ。飽きっぽい性格のせいで、このゲームがちっとも進まない。3ヶ月かかってまだ1章。いったいいつになったら終わるのか。
 18:00ジャストにA君からメール。ワークショップ終了とのことにて、犬のように馳せ参じる。
 パスタ屋で夕食とり、ワークショップの感想など聞きながら帰路につく。「演劇に一生を費やす」決意を固めたという彼女の寝顔を横目に見ながら、夜の街を疾走した。僕には思い切りが足りない。

僕の小規模な生活①

2008-02-09 13:25:33 | マンガ
僕の小規模な生活 1 (1) (モーニングKC)
福満 しげゆき
講談社

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「僕の小規模な生活①」福満しげゆき

 生まれてこのかた、くすぶり続けているかけだしの漫画家の主人公・僕。
 不甲斐ない僕の代わりに家計を支える、5歳年下の妻。元金髪。
 東京の片隅でささやかに暮らす2人の日々を描いた日記漫画。被害妄想で自意識過剰で小心者で嫉妬深く根性が足りない、つまりは本当にどうしようもない僕が、一般ピーポーや漫画業界の押しの強い人たちに翻弄されゆくという流れ。
 バイトすら満足に勤め上げられない僕、地下鉄に1人で乗れない僕、妻の逆鱗に触れて殴る蹴るの暴行を受ける僕の姿は哀れの一言。でもなんだかんだで漫画を描いて糊口を凌いでいたり、なんだかんだで5年間も不甲斐ない自分を支え続けてくれる妻がいたりと、辛さの中に希望が見える展開は悪くない。
 常に目の下に隈のある僕が、「このクソブタ!」と罵られながら妻に詰め寄られるシーンはこの漫画最大の見所。普段笑い顔の妻の豹変ぶりと僕のびびりっぷりにはどこか被虐的な味わいがあり、正直これだけでも見る価値があるかもしれない。

H20/02/05

2008-02-07 14:02:09 | 出来事
H20/02/05
晴れ。朝8時起床。
入浴、洗濯しながらネット徘徊。ブログ1本仕上げる。
10時外出。コインランドリーに立ち寄り隣町の県立O病院へ。なかなか治らない腰痛を見てもらうため整形外科へ。
時間が時間だったためか、待ち時間長し。結局終わったのは午後2時で、ハードカバー丸々一冊読み切る。ヘルニアの心配もレントゲン撮影結果も問題なかった。痛み止めのロキソニンと胃薬、腰部帯ベルトもらう。
そのままおとなしく……はもちろん帰らずパチンコ。大手N店へ。エヴァの新台には座れず、イベント中の宇宙戦艦ヤマトへ。投資1万円で230回転、200回転とムラはあるが回る。23500円投資したところで単発……も昇格してワンセット。時短中に引き戻して数珠連して8箱積み上げプラス2万円。
洗濯もの回収し、ついでにロト6とナンバーズ4も購入。
帰宅。サブPCから512MBのメモリ2本抜き、先日コジマで購入したバッファローの256MBと差し替える。まったくの初期状態でなくても、それに近い状態に戻せばいいというネット情報にすがり、リカバリリトライ……と思いきや、電源入れると焦げ臭い……?
やっちまった!
と思ったときには遅かった。あわれ逆挿しでメモリはロスト。悲しいビープ音が鳴り響いたのだった……。

月館の殺人・上下

2008-02-05 10:00:15 | マンガ
月館の殺人 上 IKKI COMICS
佐々木 倫子,綾辻 行人
小学館

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月館の殺人 (下)??
佐々木 倫子,綾辻 行人
小学館

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「月館の殺人・上下」漫画・佐々木倫子 原作:綾辻行人

 雁ヶ谷空海(かりがやそらみ)は電車に乗ったことがない。いくら沖縄だって、18歳になるまでいくらでも乗る機会はあったはずなのに、なぜか母・みずほが邪魔をする。いかにもさりげない風を装って空海の行く手を阻む。ただの意地悪のようにも見えたし、重大な理由があるようにも見えた。だがみずほが電車を嫌っているのはたしかで、だから空海は電車に乗ったことがなかった。みずほが死ぬまで。
 早くに父を亡くし、今また母を亡くした空海。まだ進学するか就職するかすら決まっていなかった女子高生にはその孤独は荷が重い。安アパートで一人打ちひしがれる彼女のもとを、弁護士・中在家が訪ねてきた。中在家はいう。自分はみずほの父、つまり空海の祖父の使いである。財産相続について話したいことがあると聞かされた空海は、誰かにすがりたい一心で北海道へ飛ぶんだ。
 稚瀬布発月館行の列車・幻夜号の切符を手に真冬の北海道を行くセルシオ。眼前に飛び出したアライグマに驚いて運転を誤った中在家はセルシオをクラッシュさせてしまう。幻夜号の発車は20:40。日本の列車は定時運行。このままでは時間に間に合わない……。
 困りきった2人の前に現れた救世主はスマートなイケメン探偵・日置健太郎。セルシオにこだわる中在家をその場に残し、やはり幻夜に乗る予定だった日置と共に稚瀬布に到着した空海。改札口を抜けると、そこには蒸気をあげる列車が待っていた。
 その列車がオリエント急行で、しかもD51に引っ張られているんだと説明されてもいまいちぴんとこない空海。だが初めて乗る列車の豪華さと重々しさには感動した。しかし新鮮な気持ちで車内を見ていると、目に付くのはおかしな乗客ばかり。車内の寸法を測っていたり、時刻表を片手にぶつぶつ呟いていたり、灰皿を盗もうとしていたり、女連れの日置を見て驚愕していたり……そう、幻夜はキング・オブ・テツ(鉄道オタク)の空海の祖父が、その年他人が驚くような功績を残したテツを招待して走る特別列車だったのだ。
 乗客7人で囲むディナーのテーブル。祖父から貰ったドレスを着て、タキシードを着た日置のエスコートを受けて、うきうきしていた空海の気分は、いきなりのバッシングで地に沈んだ。何せ招待客はテツばかり。生まれてこの方一度も列車に乗ったことのない天然空海の発言に、いちいち激しいツッコミが飛ぶ。苦境に立たされた自分をフォローしてくれる日置にときめきいたりしながらも、空海はやはり楽しめなかった。まだ見ぬ祖父のことや、祖父を嫌っていた母のことが脳裏から離れない。自分が置かれている状況も、これからのことにも不安が一杯だった。
 走行中の車内に乗り込んでくる老婆の霊の話で決定的に気分が悪くなった空海は、自室にひきもり、眠れないので睡眠薬を飲んだ。悪夢にうなされ、夜中に起きると、何もかもが悲しくなった。一人廊下で泣いていると、不意に外へと通じるドアが開いた……。

 綾辻行人原作の連続殺人事件を「おたんこナース」の佐々木倫子が漫画化したもの。
 コレクションテツ、撮りテツ、乗りテツ、時刻表テツ、模型テツ、鉄道考古学テツ。様々なオタクが自分本位に車内を歩き回り騒ぎまくる様が面白い。せっかくの寝台車なんだから寝たいけど寝るのはもったいない、とか。このために寝ダメしてきた、とか。アルコール飲んだら眠くなるから飲まない、とか。全力でこの一夜を楽しもうとする姿勢に好感がもてる。
 そのテツたちに振り回される主人公・空海もなかなかユニーク。すぐ泣き、妄想癖がある。このテツたちが自分に用意された結婚相手なんだと誤解するシーンは笑える。
 トリックとしては特別なものは何もない。ただ状況設定がよく、下巻から始まる怒涛の展開には読みごたえがある。佐々木倫子の描くキャラも粒だっていて飽きない。
 以前、テツをメインにしたドラマで「特急田中3号」というのがあった。それを見たときにテツメインの話ってつまらんのかなと思ったのだが、さにあらず。見せ方の差。