はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

ソードアート・オンライン(2)

2010-02-27 18:24:23 | 小説
ソードアート・オンライン〈2〉アインクラッド (電撃文庫)
川原 礫
アスキーメディアワークス

このアイテムの詳細を見る


「ソードアート・オンライン(2)」川原礫

 キャラの死亡イコールプレイヤー自身の脳死。あげく強制離脱も出来ない仕様の本当の意味でのデスゲーム、ソードアート・オンライン(SAO)。第一巻の結末があんなことになったので、続編は出ないだろうなと思っていたところへまさかの2巻。ただし題材は、攻略組の頂点に達するソロプレイヤー・キリトと、トップ集団KoBの副団長・アスナが最前線を遠く離れた22層に新居を構え、ひとときの安らぎを味わっていた頃が中心。まあそりゃそうかって話だが、作品自体は今回もよく出来ている。
 無闇に強いキリトが全方位に無自覚にフェロモンをまき散らし、アスナのみならずあらゆる女性にモテまくる。ビーストテイマーのシリカ。鍛冶屋のリズベット。かつて全滅した月夜の黒猫団の槍使いサチ。本人が望む望まぬに関わりなく沸き起こる恋の鞘当て……は置いておいて。いやまあ、そういうお話じゃないんで。ダンジョン攻略最前線ではなく一歩引いた下層~中間層をフォーカスすることでゲーム自体の深みを出す狙いは的中。この話を読んだあとに1巻を読むとさらに面白味が増すかも。
 ところで僕自身もFF11なんていうMMOをやっているんですが、作者と同様に、トッププレイヤーではない圧倒的に多い中間層で日々を送りながら、トッププレイヤーたちを「すげー つえー」と眺めています。でも、それがいいんだよね。他のゲームと違って、MMOの主人公はどんな形でも存在できるから。ヘタレでもいいの。「自分がその世界に存在している」感覚がすごく好きなんです。

エデンの檻(3)

2010-02-25 19:16:06 | マンガ
エデンの檻 3 (少年マガジンコミックス)
山田 恵庸
講談社

このアイテムの詳細を見る


「エデンの檻(3)」山田恵傭

 沖合い5キロに浮かんでいるはずの島が蜃気楼だったことで、ひとつの望みを絶たれた一行の前に、暴力無双の矢頼光一が現れた。プラスでたちの悪い不良3人と、まったく歯止めにならない熱血女教師・来栖ちゃんとが付随しているけど、なにより問題なのは矢頼。中学生にして米兵を蹴散らす暴力を持ちながら、なにを考えているかわからない不安定さをもあわせ持つ。武力はまったくといっていいほどない仙石パーティにとって、これはかなりの脅威。
 警戒を強める仙石パーティ。しかし矢頼は意外と思慮深く知識もあり、時折見せる無邪気な笑顔の下には、不良の一言では片づけられない何かが潜んでいた。
 そんな折、来栖ちゃんが倒れる。目が充血し、高熱を発し、挙げ句の果てには死に至る謎の病はやがてパーティ全体に感染する。その魔の手は主人公・仙石ですらもよけきれない。命のタイムリミットが迫る中、仙石は無事にみんなを救うことができるのか?

 絶滅動物たちの巣食うロストワールドに不時着してからしばらく経った仙石パーティを地病が蝕むという流れがとても良い。現代文明を遠く離れた無力な彼らの不安がよく描けている。アルシノウイテリウム(サイのような外見だがゾウの仲間)やエンテロドン(凶暴な豚)など、動物方面は豊作ではなかったけど、その不足分を補ってあまりある展開だった。中でもとくに、後ろから抱きついてきたりおんに、「一緒にいるよ。ずっとさ……」なんていわれた仙石の、現状を打破できず、りおんを残して死なざるをえない絶望と無力に打ちひしがれた表情が良かった。いやあ、熱い漫画です。 

サイレントブラッド(3)

2010-02-24 08:42:11 | マンガ
サイレント・ブラッド 3 (少年チャンピオン・コミックス)
神先 史土
秋田書店

このアイテムの詳細を見る


「サイレントブラッド(3)」漫画:太田正樹 原作:神先史土

 人を操る寄生虫によって支配された潮崗村。その寄生虫を退治にやってきた真壁・鶴田のコンビは、しかし自分たちの預かり知らぬところで包囲網を狭められていく。トンネルを崩されて外界との接触点を絶たれ、共同溝を占拠されて電気・電話を絶たれた。生き残りの集結している江田園病院には寄生虫に操られた放浪者(ロウマー)の群が押し寄せるし、もう八方塞がり。
 そんな中、県職員の与那が、低体温療法中の真壁の弟・アベルを誘拐した。寄生虫たちの最初の1匹を体内に宿すアベルを失ってはならじと真壁は奮闘するが……。

 寄生虫パニック第3巻。
 さすがに放浪者にも見慣れてきたなあ、と思ったところへ新種登場……なんだけど、強くなっただけで見た目そんなに変わらないのがなあ……。ネズミと混じったところで大きさ的には変わらないみたいだし。まあネズミ大の大きさで暴れ回られたらさすがにかなわんだろうが。
 話的には新展開の兆しが見えたのが救いか。潮崗村はダメかもしれんけど。あと、主人公側が完全に人材不足。真壁鶴田にハクレイだけじゃどうにもならん。新キャラくれー。

ヤンデレ彼女(1)

2010-02-22 08:09:32 | マンガ
ヤンデレ彼女 1 (ガンガンコミックスJOKER)

スクウェア・エニックス

このアイテムの詳細を見る


「ヤンデレ彼女(1)」忍

 病んデレ、ではなくヤン(キー)デレ。ばりばりの不良女子高生・竜崎レイナとごく普通の優等生(なんかむかつく響きだな)田中学。一見なんの繋がりもない2人は、一目惚れからつき合うのだが、互いの生息域の違いに苦しむ。
 田中とのつき合いを秘密にしたいレイナは、日々訪れる露見の危機を力ずくで乗り越えながら、繋がりを深めていく。

 ようはそんだけの漫画なんですが、レイナさんの必死さがやたらキュートで素敵です。気の抜けたアカギにしか見えない田中のどこがいいのかは謎ですが、互いのことが大好きな2人の交流は、ただ見ているだけでほんわかするものがあります。世間には秘密の付き合いという後ろめたさも良いですね。 
 田中の妹で真正レズでどMな真夜美、ふつーの委員長・聖、かつては人間凶器と呼ばれ恐れられたレイナのママ、など、脇役も良い。巻を重ねるごとに味の染み出る良作の予感。

狂乱家族日記~壱さつめ~

2010-02-20 13:47:15 | 小説
狂乱家族日記壱さつめ (ファミ通文庫)
日日日
エンターブレイン

このアイテムの詳細を見る


「狂乱家族日記~壱さつめ~」日日日

 ある日、大日本帝国超常現象対策局の対怪異部隊隊長を務める主人公・凰火(おうか)に妻ができた。ついでに家族もたくさんついてきた。自分の預かり知らぬところで、というか政府の政策の一環で。「閻禍の子供たち」と呼ばれる、かつてこの世を蹂躙した破壊神の血を引く子供たちを囲いこんで一元管理するために立案された「なごやか家族作戦」の名のもとに。
 妻:傲岸不遜なネコミミ少女で、名を凶華という。
 子1:最強の陸戦兵器に改造されたコードネーム「黒の13番」こと雹霞。
 子2:褐色皇帝とい呼ばれる伝説のライオンの血を引くライオン・帝架。
 子3:鬼の一族・姫宮家で鬼のようにいじめられいた薄幸の小学生・優歌。
 子4:絶世の美貌のオカマ・銀夏。
 子5:クラゲ。月香。
 超展開にぶっとんだ!
 しかし内容は地味だった!
 こんだけ材料用意しておいて、メインが「いじめからの脱却」ってなんじゃそりゃ。オチもべたすぎて深みもなにもありゃしないし。台本が安っぽすぎる。凶華もまったくかわいくないし。
「アンダカの改造学」も読んだけど、やっぱこの人合わないなあ……。

僕は友達が少ない(2)

2010-02-19 09:31:15 | 小説
僕は友達が少ない 2 (MF文庫J)
平坂読
メディアファクトリー

このアイテムの詳細を見る


「僕は友達が少ない(2)」平坂読

 見た目のせいでヤンキーと恐れられる羽瀬川小鷹。エア友達と戯れる黒髪の美少女・三日月夜空。理事の娘でギャルゲー大好きな金髪の美少女・柏崎星奈。小鷹を敬愛するミスター美少女・楠幸村。友達を切望する4人で構成される隣人部には、今日もいろいろ残念な人たちが群がる。
 学力は高いがおバカな幼女シスター・高山マリア。ブラコン邪気眼中学生の小鳩。理系の天才にして腐女子の志熊理科。揃いも揃ったりな個性的な女の子(一部例外)に囲まれるハーレム状態なのに自覚が足りない小鷹は、でもそれなりに隣人部の活動を楽しんでいた。お笑い研究、リレー小説、バーチャルゲーム、カラオケ……狙いは悪くないのに結果的には間違っている活動の日々は、間違いなくひとつの事実を示していた。

 読みやすくなった。闇鍋ヒロインW嘔吐から始まったむちゃくちゃな第1巻から比べて格段の進歩。ラブ率も上昇。笑いも増えたし、はっきりいっていいことづくめで、すぐにも次巻が読みたい気分。小鷹夜空星奈の三角関係にはまったく進展がなかったけど、モテ期到来な小鷹に送る視線にこめられる嫉妬は確実に増量されていた。ロリコンシスコンレイプマン? 犯罪者扱いされたっていいじゃん、ハーレムじゃん、と思わせる境遇が素敵な小鷹であった。

変ゼミ(1)

2010-02-17 17:57:20 | マンガ
変ゼミ 1 (モーニングKC)
TAGRO
講談社

このアイテムの詳細を見る


「変ゼミ(1)」TAGRO

 彼女に浮気現場を見られて捨てられたい破滅願望の持ち主・田所、同じく浮気現場を見られたいM体質・水越さん、彼女に浮気されたい寝取られフェチ・武蔵、それらを冷徹な視線で撮影する撮影イズム・市河、田所と共依存な関係にある蒔子、彼らゼミ生を導く飯野教授(飯野賢治のような)。彼らに開発されゆく薄幸の純情娘・松隆くん。
 もうここまで書いただけでわかっていただけたと思うが、本書は変態の生態を描いたマンガだ。しかもその変態たちは自分の変態ぶりを人にアピールしたい筋がね入りの強者ばかり。生下着を欲しがったりはまだかわいい。ウンコを喰わせたり尿を飲ませたり精子を飲ませたり、最終的にはワイヤーフックで皮膚を貫いてぶら下がりたいとか、とにかくものすごい人物が出てくる。読む際には相当の覚悟をしておいていただきたい。
「なんだこれ、気持ち悪い」ではなく。
「気持ち悪い。でもなんだろう、どきどきする」ぐらいになる自信のある者のみに、面白さの門戸は開かれている。

ゆうやみ特攻隊(3)

2010-02-15 11:41:29 | マンガ
ゆうやみ特攻隊 3 (シリウスコミックス)
押切 蓮介
講談社

このアイテムの詳細を見る


「ゆうやみ特攻隊(3)」押切蓮甫

 隊長=サンゴ。
 カエ=くるみ。
 翔平=ナオ。
 霊感犬2号=メロス。
 PSの名作「夕闇通り探検隊」をモチーフにした「はず」のガチホラー。いや、まあ、いい意味で期待を裏切ってくれて良かったんだけどね。
 3巻は、翔平の姉の死に関係のある「ミダレガミ」を奉る黒首島に乗り込んだ心霊探偵部の面々が、いよいよその魔の手にさらされる。

「おおつごもり」の儀式の生け贄にされかかった少女・紗由ごと島の支配者・鉄一族にさらわれた翔平。を救うため、白装束に怪しげな面をかぶった数十人の男女と幽霊に真っ向から「素手で」喧嘩を挑んだ隊長は、範馬勇次郎ばりの暴力でこれを制圧。したものの、手を変え品を変え攻めてくる鉄一族の攻勢に、翔平、カエ、紗由が次々と倒され、ついには無敵の隊長までも……。

 二転三転する状況。少年漫画の限界に挑む、と銘打たれた猟奇ぶりにもますます磨きがかかり、本当に、巻を追うごとに面白くなっている。敵の攻撃が正攻法じゃなく、騙し討ちやら神経毒の吹き矢という容赦のなさも好み。さすがに読者は選ぶけど、ハマる人はおおハマりすると思う。
 というか、ゲームでこれやりたいなあ、出ないかなあ。マジで「サイレン」とかより面白いと思うんだけど。あ、隊長はもちろん使用禁止で。

琉球空手、ばか一代

2010-02-14 08:09:28 | 小説
琉球空手、ばか一代 (集英社文庫)
今野 敏
集英社

このアイテムの詳細を見る


「琉球空手、ばか一代」今野敏

「惣角流浪」から2、3作品ほど読んでみた。なんというか、この人はもっとカタい硬質な文章の持ち主だと思ってたのだけど違った。エッセイだからか肩の力がすとんと抜けていて、いい意味で適当で、読みやすく笑えた。
 お題は「空手」。自身で「今野塾」という空手団体を創始した作者が、空手に関する理想や思い出を語っている。
 理想の部分を一言でいうなら、「古流の空手のシンプルさと必然性を取り戻したい」。ということ。時代の変遷とともに競技化された空手を、本来のあるべき姿に戻したい。損得のない「道」へ原点復帰したいということで、琉球空手の成り立ちや、「空手バカ一代」などの劇画によっていかに現代空手が誤解されていったかなど、内容がいちいち興味深い。
 思い出は、まあそのまま今野少年の若かりし頃なんだけど、これがけっこう軟弱で面白い。「痛そう」とか「疲れそう」とか、のちに空手団体を創始するとは思えぬほどに惰弱な理由で、なかなか空手を始めようとしない。茶道やら演劇やら、およそ武道とはまったく関係のないとこから「空手」に憧れている今野少年の視点にはすごく納得いく。格闘技に興味ばりばりなのに「目が悪いから」という理由でいっさい打ち込んでこなかった僕なので、痛いほどによくわかるというか。
 空手の話なのに体育会系な武勇伝があまりないのも好印象。遅くなってから始めたせいで、作者自身がそういったものに触れる機会が少なかったようだ。その代わりというか、体育会系女子編集Oの逸話には凄まじいものがある。あなた女性ですよね? と聞きたくなってしまった。
 とまあ、全体的に面白いのだけど、後半ちょっとだれるかな。社会人になってから今野塾を作るまでの一連の流れが退屈。若さ故の暴走とか無思慮のエッセンスがなくなると「ふつー」になっちゃってダメだね。

エデンの檻(2)

2010-02-12 09:32:27 | マンガ
エデンの檻 2 (少年マガジンコミックス)
山田 恵庸
講談社

このアイテムの詳細を見る


「エデンの檻(2)」山田恵傭

 不時着した飛行機から投げ出された仙石は、CAの大森、秀才・真理谷と共に飛行機へと帰還。添乗員用の仮眠室に隠れていたりおんと再会を果たすも、他の生徒の動向は謎のままだった。
 とりあえずは飛行機を中心に行動しようと決めた矢先、仙石が仮面をかぶった謎の生徒・ハデス(自称)にさらわれる。断崖絶壁に生える木に吊された仙石に、学校の生徒を全員血祭りに上げると宣言するハデス。激しくもみ合ううちになんとか窮地を脱した仙石だが、ハデスのたたえる底知れない人の暗黒面に戸惑う。
 全長6メートル以上の巨大ナマケモノ・メガテリウムの群に襲われる飛行機のところへ急ぎ戻った仙石は、ジェット燃料に火を点けることでこれを退けるものの、代わりに飛行機を全焼させてしまう。心のより所であった飛行機を失った生存者たちは、島の各所でこの光景を眺め、それぞれの決意を胸に固めるのだった……。

 2巻も面白い。いやあ最高にフィーリングの合うシリーズです。
 1巻でもいった通り、絶滅生物のチョイスが良い。メガテリウム、アンブロケタス(肉食種で4足歩行の鯨)、バシロサウルス(全長25メートルに及ぶ鯨、通称「トカゲの王」)なんていう、マイナーどころの、しかし圧倒的な迫力の動物たちが跳梁跋扈する「島」の怖さに痺れる。
 キャラ的には、新たに仙石パーティに加わったなんちゃって不良の左治がいい味出してる。暴力無双の矢頼光一、熱血どじっ娘教師・来栖ちゃん、学園一のマルチプレイヤーにして殺人者の有田幸平と、別枠組みもバラエティ豊かで、いつか遭遇する日が楽しみ。
 大森さんやりおんらの露出はやたら高いし、ホント、かゆい所に手の届く良作です。