はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

運命に挑んだ男達

2007-07-12 13:46:00 | 会社
今日は下のお話だ。男性特有の、伸びたり縮んだり柔らかくなったり硬くなったりするアレの話なので、賢明なる紳士淑女の皆様方におかれましては、見物をご遠慮願いたい。








さても人間とは不思議な生き物で、ないとわかれば欲しくなる。その傾向は金や異性などという即物的なものだけに止まらない。顔の出来不出来や肉の多いの少ないの。はては特定器官の大小に至るまで不満を述べる。愚痴を漏らす。生まれついてのものだからと涙を飲むのが大半だが、世の中には豪の者がいるもので……。
過日、元不良番長K兄ィとM兄貴の三人で話していた時のことであった。
K兄ィに関しては当ブログ内でたびたび触れたことがあるのでご存知の向きもあるだろうからあえて触れない。M兄貴はこれまたK兄ィに輪をかけたような元ヤンである。ではあるが多くを語らない。武勇伝や力をひけらかしたことなど一度もない。本人もいたって温厚なのにも関わらず、皆の一目置き方が尋常ではない。まさに三舎を避けるといった感じで、ただ首を振り「あの人はヤバイ」と繰り返すのみ。
そんなM兄貴が、一度だけ過去の過ちについて話してくれたことがある。
アレについてのことだ。アレの良さは(相手方にとって)、太さや長さではなく、傘の大きさで決まる。カエシが強ければ強いほど満足感がある。真珠などを入れるのはそういう意味があるそうだ。真珠では硬すぎる場合はシリコンボールで代替する。
きわめて合理的な説明に、ふんふんと頷いていると、さらなる驚愕の事例が展開されていった。
まずお値段の問題。真珠にしろシリコンボールにしろ、手術して装着しようとするとかなりお高い。費用対効果を考えると、二の足を踏んで当然という額であった。
ところがよくしたもので、これにはヤンキー独特の解決方法があった。自分で入れるのである。手術どころかまっとうな器具も使わずに、皮に穴を開けオプションを投入し、あとは自然治癒を待つという実に野蛮な、もとい男らしい手段に思わず感動してしまった。 しかも話はそれだけに終わらない。M兄貴はこう続ける。素材として最も適当なのは歯ブラシの柄であると。飽和ポリエステル樹脂とかポリプロピレンなんぞというものを熱で溶かして成型し、穴から突っ込むという蛮行を平然とした顔で語った。痛みが数日ひかなかったのでやっぱり引き抜いたという後日談もあるらしいが、実物を見たことがないのでなんともいえない。しかし人体の生成というどうにもならぬ宿命に立ち向かった男の、唇に人差し指をあて照れ臭そうに笑うのを見て、同じ男として畏敬の念を禁じ得なかった。

2007/06/19

2007-06-19 17:41:07 | 会社
2007/06/19

 朝会社から帰ってきた。夜には出勤しなければならぬのだが正午からダンスの練習があった。本来ならば午前中に空手の練習もあるのだが、そちらは休ませてもらった。なにせ指が痛い。先日裂けた右足の薬指の裏の傷が思ったより深く、ぱっくり裂けて肉が見えていた。ダンスはステップを軽くし構成を体に叩き込むだけという流し方ができるのだが、空手のほうはそうもいかない。常に全力で踏み込み、捻転伸縮させては指がもげかねないので大事をとった。
 ダンスは進歩が見られた。自分よりも練習時間が少ない人に教えられるくらいにはなった。テーピングを巻いても指は痛かったが、それとてなんともならないわけではない。
 ダンスのあとに郵便局へいった。オークションの落札代金を出品者に振り込んでから洗車へいった。手洗い洗車+ワックスを注文し、コーヒーを飲みながら本を読み、車屋に電話した。保険関係のことであった。もうすぐ満期を迎える東京海上日動の更新と、それに個人賠償責任保険を加えようと考えているのでパンフレットが欲しいと告げた。
 簡単にいうと、個人賠償責任保険とは、日常生活の中で第三者に怪我を負わせたりその所有物に損害を与え訴訟を起こされた時に適用される範囲の広い便利な保険のことだ。単品でどこかの保険会社に注文してもいいのだが、東京海上日動の車両保険には特約でつけることができるらしい。
 正直言って、いままで車以外のまともな保険に入ったことがない。生命保険も医療保険も、特段必要性を感じなかった。最近になって興味を持ち始めたのは、やはり自分だけではなく自分と自分以外の誰かのために生きようと思い始めたからだ。そのために何かに縛られ自由を失うことになるかもしれない。いいたいことをいえず、辞めたいときに会社を辞められなくなるかもしれない。いままでのような根無し草の人生には戻れない。それでも……そんな痛みにはすぐ慣れるだろう。薬指の鈍痛のように、いつか忘れ自然に体に馴染むようになるだろう。そう思えた。そんなことを考えながら、洗車の終わるのを待っていた。

2007/06/17

2007-06-17 19:42:54 | 会社
2007/06/17

 日曜日。町の体育施設は混んでいた。サッカーやテニス、社交ダンスに少林寺。老若男女で溢れかえる中、広さ20畳ほどの研修室を借りることに成功した。折り畳みの机を壁際に並べ、コンセントからノートPCの電源をとり、DVDの映像を流した。肌も露な美男美女たちが踊り狂う様を参考にしながら、同僚5名とともにダンスの特訓を行った。断じて趣味ではない。切っても切れぬ渡世の義理のせいだ。
 筋トレ、空手と普段から鍛えているので体力には自信があった。しかしリノリウム張りの床の上を素足で飛び回るという荒行が膝に負担をかけ、前後でも旋回でもない横への衝撃が足指の付け根の皮膚を裂いた。
 血の滲んだ足を抱えながら、しかしどこか納得している自分に気づいた。予想以上にダンスの進行がうまくいったからだ。個人個人の慣れ不慣れはともかくとして、最初から最後までの通しての振り付けは、素人なりに頑張ったほうなのではないだろうか。皆で無い知恵を絞り合いひとつのものを作り上げたという自己満足に、今日はどっぷりと浸っていた。

2007/06/15

2007-06-15 12:32:42 | 会社
2007/06/15

 Mから見せられたDVDには、金髪アフロにサングラスをかけた肌の浅黒い男が歌い踊り狂う映像が映っていた。ホスト風なのや髪を編みこんだの、肌も露な無数の女たちとともにステップを踏み、うねり絡み合う様はまったく感心するほど楽しそうだ。
他でもない自分がそのダンスを躍らされることになると知った時の僕の第一声は「カスタネット担当とかないすかね」だったが、これはまったく無視された。日頃世話になっている人の結婚式の余興だと駄目を押されては、ぐうの音も出ない。
 感慨深いものだ。結婚式が、ではない。ダンスのことだ。金髪やピアスなどとともに「ちゃらいもの箱」にしまい込み遠ざけていたダンスを踊らなければならない。空手やサッカーなど、いずれやるときがくるかもしれぬとぼんやり夢想していたものとは違う。完全に対岸にあったものが、今やこなたにある。
 多忙な日程の合間を縫ってしなければならぬ練習。その恥ずかしさのことを思うと、暗澹たる気持ちになるのだった。

2007/5/16

2007-05-16 21:59:34 | 会社
2007/5/16

K兄ぃの特徴をあげるとするなら、まずは目だ。細い切れ目の中からのぞくそれは、ひとつところに定まって揺らぎがない。次に拳。人差し指と中指の骨がほぼ平行になった、人を殴るのに順応した形になっている。最後は髪型。びしりとオールバックの生え際に、剃りこみの名残がある。
更生したヤンキーである彼は、まだ年若いが仕事ができる。一本気のあまり時に暴走することもあるが、年上には礼儀正しく、年下は教え導き、大体において尊敬できる人柄だ。尊敬に値しないのは酒が入っている時で、とにかく相手構わず喧嘩を売る。度が過ぎて警察沙汰になったこともあるほどだ。
普段は温和な彼が荒れ狂う様を見る時、その経歴を思い出す。暴力野球部という漫画の中にしか存在していないようなところにいた伝説のヤンキー。同校の6年下の後輩の代にまで逸話が残っているというのだから半端じゃない。
しかし、そんな彼にも弱点はある。ギャンブル癖と女癖の悪さ。勝ち目の薄いスロットに給料を注ぎ込んでは借金を重ね、結婚まで考えた彼女がいながら元彼女の涙に心を動かされる。
格好いい男のダメ男ぶりを見ながら、今日は心を和ませていた。ほのかな風に吹かれながら、程度の低いシンパシーを感じていた。

2007/5/15

2007-05-15 21:26:56 | 会社
2007/5/15

世間が福島の母殺害首切り事件などで騒いでいたこの日。埼玉で雹の降った日。僕は不甲斐なくも朦朧とした状態で勤務についていた。
基本24時間仕事だ。間に休みを挟むことを前提に組まれた勤務体制だが、それはあくまで建て前。前後に残業がつくことで、たやすく日常は崩壊する。この日はすでに38時間連続勤務(休憩挟むも)のさ中にあり、たとえ仏陀に渇を入れられても覚醒できぬようなまどろみとともに席についていた。
普段あまり一緒に働くことのないI女史が、しきりに僕の身を案じるようなことをいってくれた。しかしその口調がどこか楽しげな、面白がるような響きを帯びていたことを俺は見逃さなかった。だがむっとするような気力もなかった。適度に日常会話に加わりながら、心無き所作を受け入れた。
I女史との会話は職場の上司や同僚の悪口が多かったが、仕事そのものに対することは一言もなかった。I女史は生真面目な性格で、仕事を嫌ってはいない。仕事を軽視する人を嫌っている。つまり僕は微妙な立ち位置にいるのだ。どんどん下がっていく評価と戦いながら、ひたすら今日の終わりを待っていたのだった。

ライアー・ライアー

2006-09-04 05:29:34 | 会社
M公園の野外ステージに、夏の最後の陽が降り注いでいた。アマチュアバンドのライブを聞きにきた人たちの影が、くっきりとアスファルトに落ちている。風が吹いているのが救いで、暑さはさほど厳しくない。
適度にビールを含んだ肉体が、しきりに眠りを求めていた。猛爆ドラムも、うねるようなギターソロも、絶唱ボーカルもすべては子守唄のようにしか聞こえず、僕はひたすら船を漕いでいた。
隣の席の女の子が声をかけてきた。
「大丈夫ですか?」

会社の同僚と5人、アマチュアバンドの野外ライブにいった。本来ならばA君とデートする予定だったのだが、参加ロックバンドのギタリストの一人がやはり同僚であったため、「たくさんいってあげたほうが喜ぶよ」とのAの意見に従った結果だった。
僕とA君は会社の同僚で、それ以上の関係ではない。
建前では、そういうことになっている。
なるべく親しくしないように一定の距離をとって。でもまったくの無視はしない。
バランス感覚が問われる日だった。

嘘をつくのが好きではない。
A君との関係を皆に隠すのも、心理的にプレッシャーになっている。
だからといって打ち明けてしまうわけにもいかないのが辛いところ。
でもきっと、人生の中でこういう時期ってそう多くはないのではないだろうか。人によりはするのだろうけど、僕だってせいぜい2回目。
しかも、今回は本気だ。
将来、二人で老後を迎えながら、しみじみと回想するのだ。この絶妙な時期を。
だから僕は、笑顔で嘘をつく。

Iと同質のW

2006-08-01 20:57:05 | 会社
三人部屋に三人で住んでいる。同じような部屋が下の階にもあって、そっちには新人たち三人が住んでいる。
そのうちの一人に、Iという男がいる。人と争うことを好まない穏やかな性格で、空をたゆたう雲のように、ぷかぷかと漂うように生きている。攻撃的な職場の人間関係の中ではその性格は格好の標的で、Iはいつも周りの人間にいじられながら生きていた。
夢も野望もなく、決まった趣味も持たないIの休日は、とてものんびりとしたものだ。
車で5分のところにある書店で何時間も立ち読みし、寮の前にあるセブンイレブンを同室のWと二人で日に5回うろつき、その同室のWの部屋でテレビを見て、それでも暇ならダイニングにある足踏み機で足踏みし、そのよさを同室のWに宣伝して踏ませ、最終的には二人で入れ替わるように散歩に出かける……日課に散歩のある19歳の青年たちは、世間にそう多くはあるまい。
そんな生活を周囲からからかわれるIにも、ようやく趣味といえるような趣味ができた。ドライブだ。
中古で買ったシルバーのヴィッツを駆って、縦横無尽に旅をする。だいたいの場合一人だが、時に同室のWを連れていくことがある。
今度二人してメンズエステに行くことを楽しげに語るIを見ながら、ふと思い出す。こういう関係をなんと言うかを。その気恥ずかしい響きも含めて。

信じる人たち信じない人たち

2006-07-13 04:27:47 | 会社
KBという後輩がいる。なんの用語とも一切関連はなく、ただ本名を記号化しているだけだ。だからもちろん日本人で、八戸なまりがすこしある。
そのKBに恋人ができた。地元の住民で、駅前のスーパーでレジ打ちをしているらしい。らしい、というのはまだ見たことがないからだ。仕事が忙しい、という以上に二人が付き合い始めてまだ一週間程度だから、純粋に機会がなかった。
普段、同僚の男同士での女の話題にも付き合わないようなKBだから、彼女ができた、と聞いた時は驚いた。こいつにもそういう部分があるんだな、と感心した。新たな発見をした学者の気分がわかった。興味深い。
しばらくは順調だったのだ。KBは嬉々としてのろけ話をしていたし、不埒にも仕事中にメールを交わしたりしていた。30分メールが帰ってこないだけでイライラしたりすねたりする姿は、ある種の動物を連想させた。
その二人の仲が、いきなり崩壊した。
ある日、KBが仕事帰りのコンビニ前で待ち伏せていた。「ちょっと部屋に行っていいですか」と、なんだか思いつめたような表情で近寄ってきた。
部屋に入るなり、PCを指差して言った。
「ちょっと調べてもらいたいことがあるんですが。いいですか」
「いいけど何?」
「宗教のことで」
「……マジすか」

僕の祖母は、とある宗教団体に入っていた。かなり有名な団体で、政界にも多くの人間を送り込んでいた。
小さい頃から信心を叩き込まれた。学校に行く前に、行った後に、仏壇に手を合わせお経を唱えるように教えられた。それがお前を救うからと、お前のためなのだからと。
幸い、というべきか。僕は無神論者だった。神に救われたことなどないし、まして何かにすがって生きようなどと考えたこともなかった。人は己の足で立つべきだ、というのが僕なりの宗教だった。それは小学生の頃からで、ずっと今も続いている。
だから、手を合わせお経を唱えても俺の心は仏の元にはなかった。ある種の親孝行だと思い、その「行為」を行っていた。僕の一家では祖母のみが宗教にはまっていたが、家族の冷ややかな視線を浴びる祖母を見て、ずっとかわいそうだと思っていた。団体の活動のビデオを見せられた時も、成人して選挙の時に特定の人物・党に投票しなさいといわれた時も、心の中は同じような感情で満たされていた。
その祖母が他界したのは去年の3月のことだ。葬儀に出席する人たちの中に、団体の関係者や地域の導師がいた。
「ある意味楽だったね」
後になって、両親は団体のことをそう評した。彼らは信者の葬儀のために尽力してくれた。広報活動、といった意味合いもあったのかもしれないが、それはそれで感謝こそすれ文句をいう筋合いではない。祖母亡き今、団体との付き合いは一切ないが、悪い印象はなかった。

「彼女に勧誘されたんですよ」
青ざめた表情のKBに、俺の経験を聞かせた。元葬儀屋をやっていたという隣の部屋のWも加わり、団体に関して色々と話した。
俺としては団体に対してマイナスイメージがないし、後輩に幸せになってもらいたかったから、宗教というだけで拒否するのは勧めなかった。
だが、結果はおそらく破局だ。
試しに開いてみたネットの記事に、「実弾」とか「右翼」とかの、団体に関しての黒い情報が書かれていた。KBの拒絶反応はピークに達した。
「色々聞けて良かったですよ。ありがとうございます」
そういいながら帰っていった。表情に、間一髪だったというような安堵の表情があった。

モバゲータウン

2006-06-28 05:34:34 | 会社
モバゲーなるものが流行っている。上司を含まない職場の同僚のほとんどがはまっている。
ゲー、というくらいだからゲームだ。オクをつければオークションになる。つまりは定冠詞みたいなものだ。
さらにこのモバなんちゃらにはアバターと呼ばれるシステムがある。ユーザー一人一人がアバターというミニキャラを所持し、ブログを書いたりメールをやり取りしたり、サークルという名のメールグループに入ったりできる。
面白いのは、他アバターのプロフィールを見ると、自分の足跡が残ること。誰がどこをのぞいたかが一目瞭然なのだ。だから、足跡を残した人は伝言板に一言残していくのがマナーになっているし、それが縁で友達になったりすることもある。
職場の同僚のうち20人ほどがすでにアバター化しているため、状況は本当に錯綜している。友達の友達がのぞきにきたり、友達の友達のそのまた友達と友達になったり。
別にそういう友達が欲しいわけではないので、僕は基本的に職場の人間としかやり取りしないが、それでも十分に楽しい。普段それほど話さない人がブログでは饒舌になっていたり、冷たそうな人が、伝言板には温かいメッセージを残していたり。彼女と喧嘩して落ち込んでいる後輩をみんなで慰めたこともある。
また、上司を含まない、というのもポイントだ。愚痴や悪口や、正面きってはいえないことも、モバゲータウンではわいわい言い合える。今のところみんなの格好のストレスのはけ口になってくれている。
多分Sも、モバゲータウンに参加していればすこしは違う目が見えたのではないだろうか。今さらだけど。