あなたにもできる悪いこと (講談社文庫)平 安寿子講談社このアイテムの詳細を見る |
「あなたにもできる悪いこと」平安寿子
38歳になる檜垣は、人に好感の持たれる男前で、弁が立つし倫理感も薄い。まったくセールスマンになるために生まれてきたような男だった。高校時代同級生だった時任の経営する新会社に入ったはいいものの、いきなり当の時任が行方をくらました。
途方に暮れていると、時任の秘書をしていた畑中里奈が声をかけてきた。檜垣と同じく職を失うことになった彼女が檜垣にやらせたい仕事とは……。
年寄りのセクハラ騒ぎ、教師の不倫、NPOの資金着服疑惑、宗教団体のトラブル解決、選挙戦候補者へのゆすりたかり。様々なトラブルの隙間に転がる和解金や慰謝料や口止め料をかすめ取る、小さな悪事の数々。世の偽善と保身の間をくぐって生きる彼らの明日はどっちだ?
徒手空拳で、あるのは見た目とよく回る口だけ、という最低男が、ブレインの指示のもと、ささやかな一儲けを企むピカレスク小説。
悪くない。主人公の檜垣の軽薄なキャラも、小悪党すぎて憎めないものに映るし、ツンな里奈との男女関係も、つかず離れずな距離感が絶妙で微笑ましい。メインとなる悪事パートも、稼ぐのがせいぜい数十万単位の小銭だし、被害者も悪人というケースが多いので、それほど悪いことをした気がしない。悪は悪? まあそうだけども。
別れた女房や子供のこともあるし、続きが読みたいね。