はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

月見月理解の探偵殺人(5)

2012-01-28 00:41:04 | 小説
月見月理解の探偵殺人 5 (GA文庫)
クリエーター情報なし
ソフトバンククリエイティブ


「月見月理解の探偵殺人(5)」明月千里

 妹・遥香との諍いにひと段落ついた初の日常は、ちょっとだけ落ち着いた。迫るクリスマスに向けて、放送部でハーレムメンバーと和やかに談笑する余裕もあったりする。
 というのはもちろん欺瞞。表面化で近づきつつある「それ」の存在に誰もが気が付いていて、どうしようもないこともわかっていて、だからこその仮初めの平和だった。
 ある日目覚めてみると、初は月見月家の所有豪華客船の船室にいた。
 溜息とともに理解する。2人の少女と共に、自分はこれから最後の戦いに挑むのだと……。

 んで、行われるのが人狼の決勝ラウンドというのが非常に残念。ゲーム自体は面白いのだけどね。だって、それ他人が創ったゲームじゃん。ちょっと変化を与えてはいるけど、もろぱくりじゃん。既成の作品におんぶにだっこ、というのが相変わらず気に食わない。3巻ではそこんとこうまくできてたのになあ……。「嘘食い」とか見習えよ。
 まあでも、解法は良かった。ドッペルゲンガーを乗っ取ったグラウンドゼロと、理解の無数に扉のある高座をパクッた連理。一般ピーポーとは一線を画する2人の強敵をどう出し抜くか、というのが非常に興味深かった。
 キャラ的には、久遠とか真理とかメイドさんがちょい役すぎて泣けた。真理とかいい味出してるんだけどなあ。
 遥香:前巻で役割終了。
 京先輩:この人も生かせなかったなあ……。
 宮越さん:この人もいいキャラだった。個人的にはイスカに匹敵していた。でも能力なし子さんなので話に絡み切れず、残念。
 イスカ:可愛く健気な無口キャラという最強の存在。とくにデレてからの一挙一動はやばすぎた。初の袖を引く、というだけの動作に何度悶死させられたことか。ドッペルゲンガーとの軋轢もうまいこと消化してくれた。あっけないといえばあっけないけども。
 理解:彼女の過去がいまいちぴんとこなかった。描写自体が少ないことが原因かな。ほんのちょっとの回想や心象風景だけで済ませてしまうには、彼女のキャラは異質すぎた。ぶっとんでて好きでした。
 初:理解とかの強キャラ達に振り回されつつも決めるとこは決めてた。精神的にもタフだし、主人公っぽくて良い。
 なんだかんだで面白かった。楽しめた。もっとオリジナリティが欲しいという気持ちは変わらないけども、能力者たちによる変化球的デスゲームモノとしては有り。この人が次のシリーズ書き出したら、買ってみようかなとは思います。


 

つぐもも(7)

2012-01-23 02:08:08 | マンガ
つぐもも(7) (アクションコミックス(コミックハイ!))
クリエーター情報なし
双葉社


「つぐもも(7)」浜田よしかづ

 一連の不可解な現象が自らの存在に起因することを悟ったかずやは、怪異を率先して鎮めることを決意し、学校の仲間たちと「お悩み相談室」を立ち上げることに。メンバーは、メガネっ娘委員長のちさと、イケメンだけど軽薄すぎてモテないしろう、がり勉メガネのおさむ、かつてかずやが祓ったことのある奈中井ななこに只田ただたかの2人、かずやと転入してきた(!)桐葉も加えた7人のメンバーは、様々な怪異から学園を、みんなを守ることができるのか!?

 な、なんと、7巻まできてまさかの学園編。
 いやだってさ、普通こういう展開って第1巻でやるものじゃないか? まあいいんだけど、いまさら出してくるあたりがこのシリーズっぽいといえばぽいし。
 んで、桐葉入学プラスかずやと同じクラスとなると、出てくるのがヒューヒュー展開。当然ありますやらせます。「一緒に住んでるの?」とか、「2人はどういう関係?」とかクラスメイトからの質問が殺到して、そこから弾劾裁判(バカテスみたいなあれ。ここでは「2年2組健全男子の会破廉恥裁判」)が開廷する流れが一番面白かった。なんせエロが売りのシリーズでもあるので、乳を揉みしだいたり乳首を吸い転がしたりアナルに指をつっこんだり、という他のラブコメでは出てくるはずもないキレっキレの言葉が飛び交っていて、皆のリアクションが強烈で、思わず笑ってしまって、A君に不審がられました。
 ともかく。
 相変わらずの圧倒的な描き込みは健在。様々な形態に変化する桐葉の可愛さ怪しさも巻が進むごとにレベルが上がっていて、画集としてだけでも金のとれるレベルだと思います。
 楽しみにしていた戦闘シーンはちょいと少なめだけど、展開的に次巻に持ち越しな感じですかね。
 あとは遅筆でさえなければよいのだけど……8巻が待ち遠しい。

別れる理由を述べなさい!

2012-01-19 23:39:09 | 小説
別れる理由を述べなさい! (一迅社文庫)
クリエーター情報なし
一迅社


「別れる理由を述べなさい!」太田僚

 変態どM道を究め、今や同級生からは師父とまで呼ばれている高校生・皆元雪人は、学校一のスーパー美少女・坂巻秋乃に告白され、付き合うこととなった。しかも秋乃はどSなので、相手としても丁度良い。というかむしろ、いつでもご褒美をもらえるベストカップル。
 と思いきや、そうでもなかった。現実世界と鏡の関係にある「裏」世界からやって来た、恋人いない北川先生や、ぷよよん美少女・平良聖が、口々に秋乃と付き合うことの危険性を述べ立ててくる。なんでも、秋乃は裏世界から来た少女で、雪人とは裏表になる関係で、2人が結ばれると世界が滅ぶらしくて……?

 どMとどSで順風満帆だった2人の、別れ話こじらせストーリー。
 こういう話は嫌いじゃない……んだけど、なんだか乗れなかった。主に雪人が嫌い。なんかね、ベタすぎない?「ありがとうございます!」とか「ブヒ」とかいってよろこんでりゃMなの? お手軽すぎるだろ。この手の分野ってのはすでに掘り尽くされてるんで、かなり奇抜じゃないと面白くない。GS美神の横島くんとかさ、あれくらいのレベルには達してないと。恥を捨ててかからないと。
 秋乃もね。時折顔赤らめたりして、ツンデレ成分見せちゃったりしてさ、安っぽすぎると思うんです。まあそれを言い出したら最近のラノベはなんだってそうなんだけど……。でもSとMに焦点合わせるんなら、究めなけりゃだめでしょう。
 話のパンチももちろんないです。あらすじ見りゃわかると思うけど、伏線含めて雑。おすすめしません。
 

カンピオーネ!(11)ふたつめの物語

2012-01-14 16:55:52 | 小説
カンピオーネ! 11 ふたつめの物語 (カンピオーネ! シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
クリエーター情報なし
集英社


「カンピオーネ!(11)ふたつめの物語」丈月城

 戦神ウルスラグナとの激闘の末、人の身でありながらこれを見事に打ち破り、権能を奪取した草薙護堂。自身の成し遂げたことの偉大さも、力の強大さもわからぬ彼は、エリカ・ブランデッリの助言でもって身の処し方を知る。
 だがもちろん、すぐにすべてを理解したわけではない。力だって全然使いこなせていない。そこへ現れたのが、メルカルト。フェニキア人の神は、今度はカンピオーネとなった護堂に狙いを定めてきた。
 自称平和主義者の護堂でも、さすがに神様たちのわがままには逆らえない。しかたなく宣戦布告を受けるのだが、さてどうやって戦えば……ん? 剣の権能? 相手の由来を知ることで、力そのものを切り裂く刃? でも残念、僕は相手のことをよく知らないんだ? え? 経口でインスタントに口伝できる……?

 初めての儀式を行う護堂とエリカのカップルの初々しさが最高。本編ではあれほどの魔性ぶりを発揮した彼女が、心ならずも(?)と護堂とキスをし、それからまっしぐらにデレていく様が可愛すぎた。少女が大人の女へと変わっていく瞬間の美しさが、まざまざと描かれていた。
 いやもちろんね、越えてはいけない一線を越えてはいないんですけども、心の純潔というか、大人スイッチというか、そういったものの入る音が聞こえましたよ、ええ。
 エリカ以外の女性陣はほとんど出番なし。リリアナ・クラニチャールがコミカルに登場してたけど、さすがに今回はエリカ本。エリカ・ビギニングなので、勝ち目はなかった。これを踏まえると、本編でもエリカがぶっちぎりそうなんだが、そのへんどうなのかね?
 あとまあ、バトル的にはサルバトーレ・ドニが強すぎた。最強の攻撃力と防御力を兼ね備えているとかどんだけチートなの。知略に知略を重ねて退けた護堂はもっとすごいんだけどね。

修羅場な俺と乙女禁猟区

2012-01-11 02:57:04 | 小説
修羅場な俺と乙女禁猟区 (ファミ通文庫)
クリエーター情報なし
エンターブレイン


「修羅場な俺と乙女禁猟区」田代裕彦

 世界に名だたる大財閥・遠々原家の長にして義父である十慈郎は、妖怪とか怪物とか呼ばれる類の偉人だ。犯罪に近いことを繰り返し、時には犯罪そのものも行い、無数の人の血と涙の上に財成した。恨んでいる人間は多い。節自身も含めて。
 十慈郎は、節のことを気に入っているという。彼の反抗心とリアクションとプライドを、煽ってくすぐって弄ぶことを楽しみとしている。今回の件も、その遊びのひとつに違いない。
 ある時、十慈郎が嫁候補を連れてきた。ずらりと並んだ候補者数名。この中から、正しい一人を選び出せ。選び出せなければ、正しくない一人に遠々原家の財も力もいいように扱われ、おそらく十慈郎も節も死ぬ。あるいは死ぬより苦しい目に合わされる。正しい一人は、節を心の底から愛している人間。正しくない残りは節を心の底から嫌っている人間。
 節は、彼女らと暮らす中で、その人の本音を探り出さねばならない。まだ高校生なのに、自分に向けられる好意の裏を嗅ぎ取らねばならない。かくて、彼の人間不信は深刻の度を極めるのだった……。

 おお、これはナイスなアンチラブコメ+デスゲーム。
 傍から見たらハーレムなんだけど、実はそうじゃなく、しかも誰一人として信用できないという設定が最高。いい、いいよこれ。
 引率先生キャラな、しっかり者の天海崎。ゆるふわお嬢の羽入田。元気炸裂スポーツ少女の伊堂寺。無表情キャラの蝦夷木。和風おかっぱおどおど少女の奥有楽。節の専属メイドの睦月。普通のラブコメならなんだまたかレベルのステレオタイプなキャラばかりなのに、どうしても裏を想像してしまうから気が抜けず、新鮮で楽しい。信じられるかい? 風呂場で遭遇とか布団に忍び込みとか、ラッキースケベ展開がまったく嬉しくないんだぜ?
 本巻で誰に焦点が当たったか書くとものすごいネタバレになるので書かないが、彼女との虚実交えたバトルは緊張感があった。腹の探り合いに読みごたえがあった。もちろん最後は「逆に好きになってしまった」な展開で、そこがどうもなあと思うのだけど、それすらも嘘かもしれんと思うと、ね。
 とにかくおすすめ。読むべきですよ。

煩悩寺(2)

2012-01-09 19:01:36 | マンガ
煩悩寺 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
クリエーター情報なし
メディアファクトリー


「煩悩寺(2)」秋☆枝

 紆余曲折の末にめでたく恋人同士となった、小山田くんと小沢さん。ちょっとしたメールのやり取りや、島ぽんも含めた煩悩寺での日々の中にいちいちデレ要素が満載で、紙面いっぱいに幸せ臭が漂っていた。
 20代後半という微妙にトウのたったカップル故か、初Hまでの道のりがやたらに遠く、もどかしい部分はあったものの、その辺も含めてきっちり解決できたのが良かった。
 本当にさ、歳とってくると、Hひとつにも理由とか状況の重なり合いが必要なのよね。若いころはそんなこと考えずにいけたのにね……。
 ……あれ、書くこと他にないな……。
 まあ基本まったりなシリーズだし、煩悩寺の目新しさも減っちゃったし、カップルのラブラブイチャイチャぶりを祝えればそれでいいのだと思う。もともと話の盛り上がりなんて関係ないシリーズだし、酒飲み女子な小沢さんの可愛さは相変わらずだったし、それだけで、今後も楽しんで読んでいけると思う。

軍靴のバルツァー(2)

2012-01-05 19:21:36 | マンガ
軍靴のバルツァー 2 (BUNCH COMICS)
クリエーター情報なし
新潮社


「軍靴のバルツァー(2)」中島三千恒

 バルツァーは、軍事大国ヴァイセンから同盟国のバーゼルラントに軍事顧問兼教官として派遣されてやってきた。そこでバーゼルラントの軍事面での後進ぶりに唖然とする。旧態然としたやり口に意を唱えたところ、第二王子にして王立士官学校訓練長ライナーの不興を買い、囚人たち相手の実弾実戦訓練を行うことに……。
 多くの死者(囚人)を出した訓練に合格し、ライナーの信頼を得たバルツァーだが、生徒たちの指導のほうはなかなかうまくいかない。軍国の教官到来ということで、市民感情も嫌な方向に高ぶりを見せている。
 そんな折、市街地の巡視中に、かつての親友にして不倶戴天の敵・ルドルフと遭遇したヴァイセンは、言い知れぬ不安を覚える。ルドルフは天性のアジテーターで、ヴァイセン時代にもクーデター騒ぎを起こした前科があった。
 果たしてその不安は敵中し、バーゼルラント市民が軍国化する体制への不満を露わにし、武装蜂起する。裏にはもちろんルドルフの影。バルツァーは、騎兵科の生徒を引き連れ戦闘の渦中に飛び込むのだが……。

 おお、きな臭いきな臭い。
 ライナーの信頼を得たところで、近づくものは血と硝煙。立場、情勢、もろもろを踏まえてそんなことは重々承知で、やりたくないけどやらなければならないのはたしかなのだけど……。
 割り切れない苦い思いを抱きながらも騎馬を駆るバルツァーの後ろ姿がとても皮肉だった。銃を持った人間の心理について張っていた伏線が綺麗にはまっていて恰好よかったけども。
 ところで表紙を見た瞬間、あれ、と思ったのは僕だけじゃないはず。こいつもしや……と思ったら案の定、だった。浮いたところのまったくない話の中に咲いた一輪の花……とはうまいこといかないだろうけども、殺伐としていく一方の話に異なったベクトルを加えてほしい。戦争ものは嫌いじゃないんだけどね、この話は鬱すぎる……。

魔術士オーフェンはぐれ旅 キエヒサルマの終端

2012-01-02 03:03:17 | 小説
魔術士オーフェンはぐれ旅 キエサルヒマの終端
クリエーター情報なし
ティー・オーエンタテインメント


「魔術士オーフェンはぐれ旅 キエヒサルマの終端」秋田禎信

 んー、懐かしいですね。
 思えば「スレイヤーズ」と「オーフェン」がバイブルだった時代がありました。それが去年最終巻後の話の存在を知って、さらにさらにの新章復活と聞いて、もういてもたってもいられませんでした。ありがとう、カムバック。
 といいつつも、話の細かな内容はほとんど覚えていません。優秀な魔術の素養のあったオーフェンが、姉として慕っていたアザリーが化け物化して飛び立って、それを追って旅に出て、それからいろいろあって、アザリーに会うことはできたけど、状況はもうそれどころではなくなっていて、彼は苦渋の決断を強いられつつも、なんとかかんとかその場を納めて……。
 すげえ、全然覚えてない!
 まあでも面白いシリーズだったことはたしかです。今から全巻再読する勇気はないけど、若い人は読むべき。そんじょそこらのラノベじゃ太刀打ちできないほど、黒くてバトルしてます。戦闘シーンのえぐさに関しては、今でもこの人を超える人はでてきてないはず。綺麗なものを表現する時にあえて汚い部分をクローズアップさせる手法も、この人以外では見たことありません。

 本巻は、最終巻のその後のお話になります。結界が消滅し、貴族連盟と魔術士同盟の争いが表面化し、各自治都市では軍備を拡充し……ときな臭いことこの上ない状況。そんな中で、いまや「魔王」と呼ばれることになったオーフェンは、外の大陸へ難民を逃がしつつ新天地を探すための中心的な役割を担っています。コギーやメッチェンやサルアなんかの懐かしい面々に混じって奮闘しています(なんとコギー、結婚してます!)
 少し時間軸をずらしてクリーオウは、オーフェンを追うためにレティシャから一年間の特訓を受けます(レティシャは妊娠してます!)。魔術的素養はなかったはずなので、兵士としての、というか生き延びるための訓練なんでしょうけども。いつも側にいたディープドラゴンのレキは今も側にいるのですけど、あれから目覚めていないようで、もう「レキ、やっちゃいなさい!」ドカーン。は使えません。それが結果的に彼女の成長を促したのでしょうか。いままで常に誰かしらの庇護下にいた彼女は自らの身を守るために、オーフェンの側にいるために強くなりました。あの天真爛漫さは陰をひそめ、まるで本当の兵士のように思考する彼女の姿に寂しさを覚えたのは僕だけではないはず。
 変化すること。それが、この巻のテーマです。望むと望まざるとに関わらず、そうならなければならないからそうなる。情勢も、人も。オーフェンは魔王として。クリーオウは、その側にいるために。
 最後のシーン、全力で自分のもとにたどり着いたクリーオウを見てオーフェンが浮かべた表情を、ぜひ見ていただきたい。あの頃「オーフェン」に熱くなったあなたに。