はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

「チェーン・ポイズン」

2012-02-26 14:44:35 | 小説
チェーン・ポイズン (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社


「チェーン・ポイズン」本多孝好

「本当に死ぬ気なら、一年待ちませんか?」
 音を失ったバイオリニスト。陰惨な事件で家族を失った男。真面目だけが取り柄の三十路のOL。三人に共通して訪れた、ある毒薬による自殺に不審を抱いた週刊誌記者・原田は、まだ事件として覚知されていない事件の向こう側に、死のセールスマンの存在を嗅ぐ。果たして、死のセールスマンの狙いとは? 被害者それぞれの、最後の一年間の過ごし方とは?

 うおお、面白いっ。
 暗いOLの一人称から始まるストーリーは、陰鬱で、救いがなくて、最後の一年間に突入しても目立った希望は見えてこない。特段絶望するほどの状況でもないが、すでに彼女は覚悟を決めているわけだし、やっぱりこのまま死ぬしかない。暗すぎる重すぎる……。
 どうしようかと思っていたら、中盤以降に一気のマクリがあった。女が仕事を辞め、身寄りのない子供を引き取って育てる施設のボランティアになり、子どもたちからおばちゃんと呼ばれ、馬乗りになられたり、蹴られたりしながらも愛を育み、いつの間にか存続の危うい施設のために立ち上がっている姿が熱かった。しかも施設を救うための方法が、自殺志願者にのみ許される例のアレときては……。
 誰かのために生きる。
 命を燃焼し尽くす。
 ヘタするとチープにしか聞こえない言葉が、万言の重みとともにのしかかってきた。
 迫るタイムリミットと。
 やっぱり死にたくないという気持ちと。
 でもやっぱり死ぬしかないという諦観と。
 危うい境界線上にあるいくつものことが、色鮮やかに描かれていてまぶしかった。
 涙が出たのはきっとそのせいで……。
 最後のどんでんがえしもお見事の一言。ファンになりました。おススメ!

妹先生 渚 (1)

2012-02-23 19:46:53 | マンガ
妹先生 渚 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
クリエーター情報なし
小学館


「妹先生 渚 (1)」村枝賢一

 むかーしむかしのことでした。潮風香る港町に、金髪の教師が赴任してきました。染めてるわけじゃなく、純粋で、遺伝故の金髪で。彼の名前は光路郎といいました。彼は生来の明るさと外国産故の破天荒さで、問題生徒ばかりの学校を変えました。彼には親の異なる妹がいました。彼女の名前は渚。純粋な日本人で、剣道小町で、兄に対して素直になれない娘でした。憧れや、尊敬も……。

 まさかの「光路郎」セカンド。まさかすぎて、表紙見たときにはぶっとんだ。まさかあの渚が教師になって、あの港町に赴任してくるとは……。え? 前作のラストで語られてた? 覚えてるか! 20年前の漫画だぞ!?
 個人的にはモロ青春時代とかぶってて、「俺たちのフィールド」含めて大好きなシリーズなんだけど、なんというか、いまさらというか、誰が望んだのだ……?
 いやだってさー、熱血教師モノなんて今日日流行らないだろ? もう掘り尽くされたジャンルじゃないか。原とか藤井とか三影とか吉永先生とか(吉永先生の美しさは変わらず、今も教師として働いている)、楽しいやつらは今もいるけど、だって……ねえ?
 内容も、まあその、ごくごくふつーの教師モノです。光路郎にしたって、変な外人バリバリの光路郎が主役だから面白かったからで、渚って、よくも悪くも普通なんだよね……。
 光路郎が出てくる2巻までは読んでみるけど、それ以降は微妙かなあ。同窓会気分の懐かしさでどこまで追えるか……うーむ……。


つきロボ

2012-02-19 19:39:03 | マンガ
つきロボ 1 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)
クリエーター情報なし
集英社


「つきロボ」中平正彦

 おお「破壊魔定光」の人か、懐かしいな。と思わず手に取った。女の子とロボの組み合わせとかベタすぎて、普通だったら興味ももたないんだけど、この人の作品は好きなので。
 肝心の中身は、というと。
 人類が月で生活するようになった未来。ロボットアニメが、とくに「月面魔神グラドゥルス」が大好きな山本つきひは、ルナホッパーという特殊車両を使った競技で無理くりアームをぶん回しては悦に浸る危ない女の子。そんなつきひは、ある日「本物の等身大の」グラドゥルスが月面に実在することを知った。半信半疑でその場に向かってみると、大量のコンテナに埋もれるようにしてそれはそこにあり、しかもよくよく聞いてみると、造ったのは技術者である父親だという……。

 元気いっぱいのつきひがとにかくかわいい。ロボットに対する愛、賑やかな友達関係、大人とのうまい付き合い方、あふれる冒険心と行動力。小さな体にみなぎるパワーを見ているだけで、なんだか気持ちよくなってしまう。思えばこの人女の子書くのがうまかったよね。萌えとかじゃない、純粋なかわいさがある。
 ストーリーのほうは、リアルに存在する月面生活と、ファンタジーなロボの世界をいかに融合させていくのかが見所なのかな。敵はいないけど、それはそれでリアルでいいかも。そのうち出すとは思うけどね。
 夢の持てない世の中で、できる範囲でどれだけ夢を見れるか、冒険できるか。たとえば現代に生きる僕たちにって、それはどういうものなのか。いろいろ考えさせられました。いい題材だと思います。次巻も当然の買いで。

ギフテッド

2012-02-16 04:11:45 | 小説
ギフテッド (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキーメディアワークス


「ギフテッド」二丸修一

「ここから飛び降りてください。以上が試験内容です」
 それが、この世界最高の、一国の総予算以上の収益を上げるほどの大企業・天子峰(てしみね)の幹部候補試験の始まりの合図だった。命綱もなく、なんのヒントもない。そんな中での高層ビルからの飛び降りというクレイジーな一次試験を突破した数十名の中に、弥助はいた。ある事情から死をまったく恐れなくなっていた彼は、11歳の天才少女・エルと共に、企業主催という前代未聞のデスゲームに挑む。
 暴力無双の教官に、品行方正なはずの後輩に、暴走族のリーダー(?)に、最高エリートに、オタクに、ナルシストに、天子峰側のスパイまでが入り混じった昇格ゲームの勝者が誰か?

 あらすじを見て「お」と思い、内容を読んで「おおっ」とうなった。
 粗さは残るものの、デスゲーム界に新星が登場したのは疑いない。
 ゲームの勝利条件が具体的に示されていない、というのがとくに良かった。自衛権と、月一万円の支給以外に何らの安全も保障されていないというところも良い。自分がゲームに生き抜き勝ち抜くために何をすべきか、候補生たちが自分で考えなければならないので、最初から最後までハラハラしきりだった。
 ギフテッド。というタイトル通り、良い意味でも悪い意味でも天才だらけなので、敵としては手ごわく、仲間としては頼もしく、交渉次第でどっちに傾くかわからないというシチュエーションに燃えた。
 キャラも良い。感情の薄い主人公と朗らかなエルのコンビは見てて和むし、ヒロイン(?)の綾芽の裏の顔は、近年稀に見る秀逸さ。続編も出せるような引きだったし、キャラ相関的にも今後に大いに期待できる。
 惜しむらくは一次選抜の試験内容か。たしかに引きはいいけど「ウソだろ?」と思わずにいられなかった。主人公、疑り深いのが売りのくせに、あっさり他人に命を委ねてしまうのはどうなの? いかにも「作者が飛ばせた」臭がして嫌だった。他にも、随所に「作者の都合による行動」が多かった。このキャラがこの状況でこんなことしないだろ、というのが頻発した。ささいなことではあるのだけど、無視していいことでもないので、適宜修正していってもらいたい。

マホロミ(1)

2012-02-13 14:22:48 | マンガ
マホロミ 1 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
クリエーター情報なし
小学館


「マホロミ(1)」冬目景 

 高名な建築士だった祖父の孫にして、やはり建築の道を志す土神(にわ)くんは、建築家の1年生。ひさーしぶりに再会した幼馴染の卯(あきら)との、ちょっと濃い友達関係以外はとくに変哲のない大学生活をおくっていた。のだが……。
 卯に誘われて出かけた取り壊し寸前の洋館で、土神はなぜか古めかしいドアノブに心惹かれる。真鍮製の、レリーフが美しいそのドアノブに触れた瞬間、目の前に幻の扉が現れた。
 扉はすぐに消え、他の誰に説明することもできず、まあしょうがないか、あれは気の迷いだったのだと片付けようとしていた矢先、土神は謎の美女と出会う。祖父の隠し持っていた古い写真に写っていた少女に瓜二つの彼女は、真百合という名で、奇しくも土神と同じ現象を体験できる能力を持っていた……。

 古い建物に残された記憶をミステリアスな美女と一緒に探偵するという、いかにも冬目景っぽいお話。登場人物の配置も、祖父の代から受け継がれている愛憎関係なんかも当然お得意の分野で、だからこそ目新しくはないが安定して楽しんで読める。冬目作品の雰囲気が好きな人だったら文句なしのおすすめ。
 個人的には卯が好きかな。近代建築マニアで、実家が剣道場で、暴力も辞さないシスコン兄貴どもに過保護に守られてて、土神のことを気にしていて、言葉には出さないけどもいつかきっと……な雰囲気を持っている彼女が可愛いい。冬目作品的には当然の当て馬なのだけども、頑張ってほしい。土神と幼馴染といっても小学生の時のサマースクールでだけの関係らしいのだけど、そのへんも良いよね。そういうちょっとした、ほのかで淡い繋がりに憧れます。

このお姉さんはフィクションです!?(1)

2012-02-10 19:29:57 | マンガ
このお姉さんはフィクションです!?(1) (アクションコミックス(コミックハイ!))
クリエーター情報なし
双葉社


「このお姉さんはフィクションです!?(1) 」むつきつとむ

 漫画家の母と運送業でほとんど家にいつかない父の間に生まれた隼は、成績、運動、精神的にも大人に比肩しうる、隙のない良い子に育った。酒好きで家事は出来ず、漫画家という因果な商売の母を手伝い、家事全般をこなしながらの高校生活が、彼を成長させたのだ。
 ある夜、翌日の食事の用意のために外出した隼は、河原で半裸の女性に出会う。半裸な挙句泥酔状態な彼女は成海という名で、紆余曲折の末に隼の家に住み込みのアシスタントとして居つくことになった。
 彼女は一見知的で有能なのだが、実はとんだ見かけ倒しで、職もスキルもない三十路間近の残念美女だったのだ……。

 年の差美人との同居コメディ。タイトルから「僕の彼女はフィクションです」を思わせるが、まったくそんなことはなかったので、注意するべき人は注意。
 成海さんは三十路間近にして処女という設定で、大人の色香で隼を誘惑しながらもいざとなるとヘタれるのだが、はた目にはそうは見えなくて、隼のちんまい幼馴染の大貫さんが事あるごとに過剰反応するのがポイント……なんだろうけど、全然盛り上がらなかった。問題ははっきりしてて、隼が成海さんを異性として、というか恋愛対象になりうる女性として見ていないからなのだ。AV女優に興奮はしても恋はしないのと同じだと思う。当て馬であるところのロリーな大貫さんはしょうがないんだけど、このままだと辛いかな。一応ラストの方で成海さんが性的な意味でもノースキルなことが判明したので、そこから展開できるか。
 まあ2巻次第かな。

BIG‐4ぼくの名前は山田。目覚めたら四天王になってました。

2012-02-08 12:22:27 | 小説

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BIG‐4 ぼくの名前は山田。目覚めたら四天王になってました。 (富士見ファンタジア文庫)
クリエーター情 報なし
富士見書房


「BIG‐4 ぼくの名前は山田。目覚めたら四天王になってました。」大楽 絢太

 雷のアーデンブルグ:ガキ大将気質の魔族の少女。アディ。ツンデレ。
 雪のヴォルフォルカ:気が小さく、いつもおどおど、胸はでかい。自殺願望(?)が強く、いつも大騒ぎしては面倒がられている。ユキ。
 焔のイグナレス:見た目は美男子、たぶん女。無口で、常にコインを持ち歩き、なんでもコインで解決しようとする。ゲーマー。
 知の山田:人間。無能力者。他の3人をフリーザレベルとしたら、銃を持った人間レベル。謎の雀のになんの前置きもなく魔界に連れて来られ、説明 も不十分なままに四天王をやらされる。魔王を復活させ、その瞬間に打倒すために、人類殲滅計画を主導するようにとはいうが……。

 でも僕、人間ですよ?
 というお話。四天王の中に紛れ込んだ山田が、魔族のフリをしながら人間打倒のフリをする。複雑なようでシンプルなお話。
 基本的に皆享楽的なので、人類殲滅計画は遅々として進まない。いくら山田が口を酸っぱくしても梨の礫。逆に、キメラの恋愛相談(!)に乗った り、レトロゲーに興じたりと、もめごとというかどうでもいいことにばかりつき合わされる。アディとデート(?)したり、女風呂に忍び込んだりとい う定番なイベントもあるし、ベタな日常系ラブコメなので、そこが楽しめれば勝ちかな。
 各自キャラが立っていて、ボケもツッコミも程よかったので、僕は楽しめました。
 ラブ方面ではいまんとこアディがメインヒロインな感じかな。他のメンバーもスレてなくてウブい感じなので、続巻が出たら楽しめそう。
 ……しかしなんというか、文中の挿絵、ひどすぎないか? こりゃ表紙詐欺だよ。

魔術士オーフェンはぐれ旅 約束の地で

2012-02-04 17:04:35 | 小説
魔術士オーフェンはぐれ旅 約束の地で
クリエーター情報なし
ティー・オーエンタテインメント


「魔術士オーフェンはぐれ旅 約束の地で」秋田禎信

 折込みのイラストは、やんちゃさを残しつつ大人になったオーフェンと、すっかり母親の顔になったクリーオウのツーショット。庭先で談笑する2人の傍らをレキが走り回り、その様子を物陰から子供たちが覗いているという、夢のような光景が広がっている。
 あれから20年。オーフェンもクリーオウも、四捨五入すれば40、という年齢になっていた。クリーオウがレキの大ジャンプでオーフェンの乗船する船に無理矢理追いついてから、やっぱりいろんなことがありました。オーフェンにも、開拓民たちにも。オーフェンたちとカーロッタ派の抗争があったり。神人種族や、その恩恵に預かり巨大化した人間たちの大暴れによって、街そのものが壊滅するほどの災害が起こったり。キエヒサルマ島の常識が通用しないような数々の生まれたての脅威を退け、ともあれ人間たちは原大陸に橋頭保を築いていた。
 結果的にオーフェンは魔王として魔術師たちを束ね、反魔術師派やカーロッタ派、その他利権の絡んだあらゆる層から憎まれ、恐れられていた。
 そんな中、牙の塔からある一団が原大陸に渡る。メンバーの一人は、どうやら今シリーズの主人公らしいマヨール・マクレディ。名前からもわかる通りレティシャの子供で、真面目な堅物タイプ。奔放な妹のベイジットがついてきたことを苦々しく思いつつも、同行したプルートー教師の手前、我を忘れるわけにはいかないのでストレスがたまっている。そんな彼に、次々と原大陸の洗礼が与えられる。オーフェンの長女にしてのんびり毒舌家のラッツベイン(クリーオウ似?)、次女にしてハイパー好戦的なエッジ(オーフェン似?)、謎の3女ラチェットなどの濃厚なキャラたちの接待(?)。そして、巨大化した人間たちの襲撃……。

  少し補足すると、巨大化、といっても闇雲に巨人になるわけではない。「進撃の巨人」とか想像しないように。具体的には身体能力や構造骨格までもが劇的に変化を遂げることを指す。それは精神にまで影響を及ぼし、周囲の人間をも取り込んでどこまでも成長するため、巨大化した人間はどうあれ殺すしかない。だが強すぎるし回復力も桁違いすぎるので通常の魔術で倒すことはできない。そこで登場するのが魔王術。通常の魔術とは異なる成り立ちのこの術式は、とある筋からオーフェンに伝えられ、オーフェンはそれを魔術戦士たちに伝えた。存在そのものを記憶からも消し去ることで対処するのだが、完全に何もかもを忘れてしまうと復活するらしいので、石碑とかに名や倒した者の名を刻んだりする。このへんはまわりくどいけど、いかにもこの人らしい設定だよね。
 というわけで新オーフェン第2巻。というか、厳密には前巻のキエヒサルマの終端はプロローグというかエピローグみたいなものなので、これを1巻とカウントすべきかな。
 相変わらずの情報量で、読むのが大変だった。もともと勧善懲悪なシリーズではなかったけど、ここまで敵味方が入り乱れると疲れる。見せ方がうまいので全然見れるけど。
 しかしまあ、まさかの展開ばかりだった。最初から最後まで驚かされっぱなし。細かなことはいわないけども、まさかあの娘がねえ……歴史は繰り返すのかな。しみじみ。
 マヨール君は、キャラ的にはさほど魅力を感じなかった。実は現時点で次巻を読んでいるので、それで化けることがわかっているのでいいんだけど、この巻だけだとほとんど脇役だよね。
 個人的には、クリーオウがレキに乗って大ジャンプ、後の展開を読みたかった。魔王の片腕と呼ばれていたり、カーロッタの片腕を切り落としたりとか、興味深すぎる。オーフェンのプロポーズだって見てみたいし。秋田先生、お願いします!

私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(1)

2012-02-01 07:23:30 | マンガ
私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(1) (ガンガンコミックスONLINE)
クリエーター情報なし
スクウェア・エニックス


「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(1)」谷川ニコ

 喪女。
 男性との交際経験が皆無。
 告白されたことがない人。
 純潔であること。

 喪女でネガティブ思考で自虐的な黒木智子は、もうすぐ訪れる春に希望を抱いていた。
 女子高生。女が一生でもっともモテる時期。なにもしなくてもただ女子高生であるだけでちやほやされ、性の花咲き乱れる3年間。
 そう、とうとう私も高校デビューを果たすのだ……!
 と、思ってた時期がありました。
 だが実際には、高校に進学しても何もなかった。気が付けば2カ月になるというのにクラスでは友人も出来ず、当然恋人もおらず、昼は本を片手の孤独な食事。中学時代はまだしも喪女友達がいたが、その子は他の高校に進学しちゃってて……え? なに、彼氏がいる? 見た目もそんなに変わっちゃって……。 じゃ、じゃあ弟よ、姉と会話しよう! え……なにその嫌そうな感じ。ちょっと前までは一緒にウイイレやってくれてたじゃ……。
 ……なんだこれは、人生のハードル上がりすぎじゃないか……?
 
 というお話。喪女の辛い青春の一幕。
 いやー面白かった。
 主人公の黒木が好き。ちびで根暗で目の下にクマがセットで、化粧はしたことないし、下着すらも母親に買ってもらい、先生へのあいさつもまともにできない。そんな彼女が世間から受ける打撃の数々は、周りからするとたいしたことないんだけど、本人にはいちいち背景に特殊効果を使うほどの衝撃で……そんな折々の、黒木の呪いの言葉が良いのです。「これは願望だけど、この学校テロリストに占拠されないかなー」とか「私の寿命一年減らしていいから、あいつら事故死しねーかな……」とかね。
 個人的ヒットは制服姿。ブレザーなんだけど、基本ちびで残念な幼児体型をしているものだからまったくセクシャリティがない。胸は地平線のようだし、足だって棒みたいで肉がない。そんな彼女が背負えるタイプの手提げの学生鞄を背負って歩いている姿を見て、なんだか昔を思い出しました。今どきのって死語だけど、うら若い乙女たちとは違う、少女って感じのたたずまいが良いです。
 次は夏か、当然の買いで。