はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

ネムルバカ

2008-05-30 05:17:55 | マンガ
「あの人分かってねーな。やりたいことのある人とやりたいことのない人の間に何かしたいけど何が出来るのか分からない人ってカテゴリーがあって、8割方そこに属してると思うんだがね」

「ネムルバカ」石黒正数

 大学の女子寮で同居する鯨井ルカと入巣柚実。先輩の鯨井はプロデビューを目指してバンド活動に打ち込み、後輩の入巣は目的もなくバイトを繰り返す。
 鯨井は夢がかなわないことへの不安。入巣はしたいことがない自分への苛立ち。それぞれに将来を怖れていた。
 入巣の同級生の車を奪っての深夜の逃避行。公園ゴルファーの頭部に直撃させてしまったノーコンキャッチボール。深夜のラーメン屋でビールとラーメンを流し込みながらの妄想コイバナ。「大学生」のぬるま湯に頭まで浸かった2人は、それなりに楽しい日々をおくっていた。
 鯨井が大手プロダクションの目に止まったことで、事態は急変する。ふわふわとした生活との離別と、何より離れ離れになることの寂しさが、澱のように部屋に淀む。
 コンビニで手当たり次第にものを買って食って飲んで騒いで、先に寝てしまった入巣の寝顔を眺めながら、鯨井は浸る。入巣にいえなかったこと。本意ではないソロデビュー。
 鯨井の初コンサートで、2人は再会する。そしてそこで入巣は知るのだ。鯨井の真意と、自らへのメッセージを……。

「それでも町は廻っている」の石黒正数の手による青春ストーリー。
 同作品に比較してギャグ濃度は薄めだが、笑えるシーンは十分ある。統一されたメッセージが作品の底流に流れているので、ひき締まった青春ものとして、読み応えはばっちり。鯨井と入巣の友情も可愛く微笑ましく、おすすめの一冊。

ADAMAS(1)

2008-05-27 21:00:32 | マンガ
「ADAMAS(1)」皆川亮二

 ADAMAS。ダイヤモンドの語源で「何事にも屈しない」という意。
 クリシュナ。宝石使い。さまざまな異名で知られる流崎レイカは、昼はしがないスーパーの店員ながら、ひとたび宝石の流通に携わる闇の組織と出会えば、単身で無数の男どもを蹂躙するスーパーウーマンに変貌する。武器はダイヤモンドを散りばめたカイザーナックルと、宝石たちと意識を交わすことで発動する超知覚。何者かの陰謀により没した流崎グループの再興を目指し、今日も彼女は戦い続ける……。

「スプリガン」の皆川亮二。いわずもがなのアクションの名手が送り出したのは、うら若き乙女が悪党どもをパンチでねじ伏せるバトルアクションだ。かねてより「強い女」の描写に定評のある皆川亮二らしく、荒唐無稽ながらも胸のすくような作品に仕上がっている。「スプリガン」以降の、一連のひょうひょうとした男性主人公に飽きたファンにとってはまさに朗報といえる新作の今後に期待だ。

戦極第2陣

2008-05-25 19:26:58 | 格闘技
2008/05/18戦極第2陣

 古い洋楽とミラーボールと照明で、ディスコ風味を狙った野暮ったい演出で始まった、新格闘技イベント戦極の第2回興行。シャアの声の人も時折混じる抜剣の効果音も、どこかとってつけたようで空回る。ラインナップも華がなく、正直見所に欠ける。解説に高阪・菊田がいることが救いか。
第1試合ライト級
○北岡悟VSイアン・シャファー× 1R1本(フロントチョーク)
 にやにやしながら船木に果たし状を郵送する北岡対、本で寝技の勉強をするシャファー。噛み合わない煽りVに、はなからテンションが下がる。
1R 北岡がタックルから一本背負い。腕を離さずグラウンドに移行し、フロントチョークで1本。その間50秒の、文字通りの秒殺勝利。
 あっさりと終わりすぎて、北岡が強いのかシャファーが弱いのか判別しにくい。

第2試合ウエルター級
○マイク・パイルVSダン・ホーンバックル× 1R1本(三角締め)
1R 名もなきメリケン対決は、マイクが身長差を生かした打撃で優勢。ロングフックと膝が良い。
 ダンたまらずグラウンドにいくも、長い手足できれいに三角に締められる。

第3試合ライト級
○光岡映二VSイ・グァンヒ× 1R1本(チョークスリーパー)
 ミスター金網光岡対韓国の五味(そうか?)
1R 打撃得意のイは右ハイを見せてスタンドを有利に進める。
 光岡、イのフックに合わせてパンチを打ちつつ組み付いてグラウンドへ移行するなど、入り方がうまい。
 極めもタックルから。ハーフガード、マウント、バックマウントときれいにポジションをとって最後はチョークで1本。

第4試合ミドル級
○ジョルジ・サンチアゴVS佐々木有生 3R1本(腕ひしぎ逆十字)
1R 佐々木、出足でのミドルがうまい。しかし一発のあるサンチアゴのカウンターが恐ろしく、素直に優勢には見えない。プレッシャーもサンチアゴのほうが強い。
 佐々木、テイクダウンからグラウンドでサンチアゴのバックをとりチョークに入るも、足が1本しか回せず極めきれない。
 逆襲はサンチアゴのパウンド。クローズガードの佐々木の腹と顔面にパンチを打ち分ける。
2R 本場タイでムエタイを学んだ佐々木。スタンドで押す。サンチアゴにタックルさせ、逆にグラウンドでおしいところまでいくも極めきれない。
3R 一発はあるが連打のないサンチアゴに対し、グラウンドでも優勢の佐々木。いけるかと思われた3R早々、グラウンドであっさり腕ひしぎ極められ負け。

第5試合ヘビー級
○中尾”KISS”芳広VSBIG・ジム・ヨーク× 2RTKO
 色物キャラが定着してしまった中尾。数少ない日本人のヘビー級選手としてがんばってほしい。
1R 前蹴り、大振りの右フックなど、遠間からのスタンド攻防で中尾優勢。尻振りなどのパフォーマンスを出す余裕も見せるが、そんなものよりタックルしろタックル。と会場中の誰もが思っていた。
2R ジムのパンチに合わせて片足タックル……は成就しないが、ジムの立ち上がりに追撃のフックを浴びせダウン→追い込みで勝利……はしたもののすっきりしない。持ち味を生かせよもっと。

第6試合ライトヘビー級
○ケビン・ランデルマンVS川村亮× 判定3-0
 真菌感染症で長いこと戦列を離れていたランデルマン。ひさしぶりの復帰戦。
1R ブランクがあるランデルマン。打撃は単発で連打も怖さもなく、スタンドでの組技もバックから組み付いただけで倒せず、消極的でいいとこなし。
 一方川村は打撃優勢も慎重な試合運びですかっとしない。スタンドでバックにつかれてもランデルマンの腕をとりつつ足を狙うなどたのもしいが、積極的というには程遠い。
2R・3R 川村パンチキックを上下に散らす。ランデルマンスタミナ切れで動きに精彩を欠く。
 しかし判定はランデルマン。なぜだ……。

第7試合
○ホジャー・グレイシーVS近藤有己× 1R1本(チョークスリーパー)
 アブダビ・ムンジアル覇者。しかもアブダビでは無差別級オール1本勝ちと、幻想でない素の強さを誇るグレイシーの最終形ホジャー。総合経験は浅いものの、近藤では……。
1R スタンドの差し合いからホジャーがテイクダウン。ハーフガード→サイドポジション→マウント→バックマウントとよどみなくポジションを変え、すんなりチョーク。近藤なすすべなし。
 あまりにも素直に極められてしまった近藤に、場内唖然。これが見えない強さというものか。解説陣はしきりに関心していたが、素人には難しすぎる。
 
第8試合ヘビー級
○ジョシュ・バーネットVSジェフ・モンソン× 判定3-0
 藤田を破った試合が印象深いモンソン対、戦極の看板にして名勝負製造装置ジョシュ。
1R ジョシュ、間合いを保ってロー。時折後ろ回し蹴り。飛び込んできたら膝と、リーチ差生かした説得力のあるスタンド。
 モンソンは右フックが強烈。しかし距離が遠すぎる。
2R グラウンドでモンソン攻めるも、攻めあぐねる。逆にジョシュに返されるが、ジョシュも極めきれない。
3R 膝がきき、ジョシュはっきりと優勢に。最後ヒールホールドを狙いにいき、極まりかけるも時間切れ。
 記録ではなく記憶に残る試合を、と意気込むジョシュの思いもむなしく、眠たい試合。残念。

おたくの娘さん(1)

2008-05-22 21:21:46 | マンガ
「おたくの娘さん(1)」すたひろ

 守崎耕太。職業漫画アシスタント。おたくばかりが住まうアパート、彼岸荘の住人。恋人も扶養家族もいない独身貴族の生活は、フィギュアと漫画とアニメグッズに囲まれたはらいそだった。そんな耕太のもとを、一人の少女が訪れる。幸村叶、9歳。高校時代、美術部の先輩に逆レイプされてできた、耕太の娘である。
 純真な少女と筋金入りのおたくの二人暮し。慕ってほしい。軽蔑されたくない。ただその一心で七転八倒する耕太と、そんな耕太を信じる娘の愛。個性豊かな店子たちの茶々入れによって、日々は奇妙にけれど暖かく過ぎていくのであった……。

 自分のことをパパと呼ぶ美少女が、いきなり部屋を訪れる。萌えシチュエーションの典型もいいところで、いまさらどうなのと思っていたのだが、存外面白かった。
 パパを想う叶の可愛さもさることながら、耕太の行状に冷静に釘を刺す管理人・妙子(女子高生)の一言が、だらけがちな流れをびしりと引き締めていて、作品に緊張感が生まれている。
 それでも抜けない耕太のおたく癖と、どう折り合いをつけて生活していくのかという軋轢がポイント。2巻以降の展開に注目だ。

レイモンド(2)

2008-05-20 19:22:45 | マンガ
「レイモンド(2)」田丸浩史

 未来から主人公の危機を救いにきたロボットがむっさい海兵隊型だったり、実は悪かった一休さんがタイムマシンに掴まって現代に来てハリウッドに進出したり、橋の下に捨てられたエロ本から巨大な幼虫が出現したり、暴れる狂犬に小学生の男のがアレされたり、巨大コメツキムシと命がけの死闘を繰り広げたり、そんな漫画。
 それが100%誇張なしの事実なのだから凄い。エロくてグロくて、でもギャグ漫画として立派に成立していて、きっちり笑える。「超兄貴」、「アルプス伝説」、「ラブやん」の田丸節炸裂。詳しい説明はいらないだろう。上記のようなギャグを受け入れられる人にはおすすめの一冊。

「パックランドでつかまえて」

2008-05-19 06:48:14 | 小説
「パックランドでつかまえて」田尻智

「ポケットモンスター」の大ヒットで名を馳せたゲームデザイナー田尻智のゲームキッズ時代を描いたエッセイ。インターネットどころか紙媒体での攻略記事すらなかった頃の24時間営業(!)のゲームセンターにあふれていた怪しい雰囲気とゲームに関わる謎に満ち満ちた楽しいエッセイ……。
 を期待していたのだ。本当は。だがページをめくってみるとそこにあるのは「僕」の一人称による短編集。しかもこの「僕」がどうにもきざったらしくて鼻につく。「僕たちの未来に乾杯」なんて真顔でいうガキが好きになれるか? しかもそのガキが今はええおっさんになってる現状を知ってて。
 ワンコインにかける情熱や、ゲームセンターという盛り場での出会いなど、面白い要素があるだけに残念な作品。もっとエッセイっぽくしてもらえればよかったのだが。

DREAM3

2008-05-17 14:27:48 | 格闘技
DREAM3

5/11開催のDREAM3観戦記。ライト、ミドル、ウエルターと実力者同士のグランプリということもあってか、メンバー一人一人がかなりの強豪揃い。カードを並べて見ただけでも見ごたえがある。逆にいうとこれだけのメンバー揃えて面白い興行にならなければDREAM終了、となるのだが……。

第1試合フェザー級ワンマッチ
○山崎剛VS昇侍× 判定3-0
 GRABAKA山崎対パンクラシスト昇侍。打対極の典型的な一戦となった。
1R 飛び膝からガンガン攻める昇侍の打撃を貰いながら片足タックル→テイクダウンに持ち込む山崎。マウントをとり、腕を狙いつつ布石のパウンドを落としていく。立ち上がられてもしつこく食らいつくタックルがいい味出してる。
 昇侍はたびたび立ち上がり打撃。無理な体勢からでもパンチや膝で強引にKOを狙っていくのでかなりスリリングな試合展開。
 終わり際、山崎の腕十字は決まりかけたが惜しくも外れた。
2R 制御しようとする者と破壊しようとする者の白熱した攻防。両者最後まで全力で戦い抜いた。
 山崎それなりにダメージあったと思うが、試合全般の支配力を評価されたか判定勝利。
 
第2試合ミドル級グランプリ1回戦
○ジェイソン・メイヘム・ミラーVS柴田勝頼× 1R7分TKO
 日米狂犬対決。ジェイソン・ミラーのメイヘムとは人体への破壊行為を意味する言葉だとか。煽りVでの邪悪な笑みと、バックに流れていた布袋の「スリル」がマッチしていた。比べると柴田はやや大人しいか。
 ちなみに今日の解説も高阪・須藤コンビなのだが、慣れてきたのか須藤のコメントが面白い。ジェイソン・ミラーの入場シーンを見て、「入場前のダンスは疲れる」とか、シマウマ柄のパンツを見て「気になる」とか言いたい放題。
1R で、肝心の試合のほうはというと、いうまでもないことだがジェイソン・ミラーの圧勝。公開処刑。
 スタンドパンチからグラウンドに持ち込み、マウントをとってカメラにピース!
 あとは猫がネズミを弄ぶようにいたぶり続け、パウンドでTKO。
 試合後のマイクアピールで「ワタシハアクマ!」、「ワタシハバケモノ!」と叫んでいたが、誰の入れ知恵だ? 悪趣味すぎる。

第3試合ミドル級グランプリリザーブマッチ
○メルヴィン・マヌーフVSキム・デウォン× 1R4分TKO
 また出た韓流柔道家。しかしキム・デウォンは丸太のような腕を振り回す打撃得意の変り種。金魚にならなきゃいいが。
1R キム、マヌーフのプレッシャーにびくともしない。どころか逆に気迫と豪腕フックを振り回してマヌーフを下がらせる。
 それを見た解説の高阪が「元気見た?」須藤が「マヌーフが下がるなんて……」と応えたやり取りが印象的。お前ら楽しみすぎ。客か? おもろいけど。
 でも、結果はマヌーフ順当に勝利。パンチの応酬からテイクダウン→スタンド→キムの引き込み→崩れた後頭部へ(いいのか?)の膝とパウンドで勝利。
 ……いいのか?

第4試合ライト級ワンマッチ
○中村大介VSチョン・ブギョン× 2RTKO
 U-FILECAMPからの刺客中村対韓流柔道家。中村の黒いレガースがUっぽくて懐かしい。
1R まずはスタンド。中村はだらりと下げた腕からのフリッカージャブにストレートを織り交ぜた変則スタイル。
 一方のチョンは、力はありそうだがあたらなそうなフックのぶん回し。
 どちらも腕ひしぎを得意とする者同士の一戦ということで、グラウンドは基本的に腕ひしぎ狙い。両者、多少無理な体勢からでも強引に狙いにいくのがどことなくプロレス的で面白い。
 だが得意技ということはその防御方法も知り尽くしている者同士なので極まらない。となると総合経験の長い中村に有利な展開。腕ひしぎ一本ではなく、足関節なども狙いにいき優勢に試合を運ぶ。
2R 中村の腕ひしぎが極まった……と思われたがチョン意地でこらえた。
 決着はスタンドでの中村の打撃。右ストレートがチョンの顎を打ち抜き、倒れたところにパウンドでTKO。
 意地と意地がぶつかり合ういい試合だった。欲をいえばどちらかの腕ひしぎ一本勝ちが見たかったのだが、そううまくはいかないか。

第5試合ウエルター級チャンピオンシップ代表者決定戦
○ニック・ディアスVS井上克也× 1R6分45秒TKO
 五味を倒したグレイシー門下の悪童ニック・ディアス対元パンクラス王者井上。
1R まずは打撃。ニック8cmの身長差とプロボクサー経験もあるパンチで攻める。
 めちゃ当たる。膝、ボディブローも効き、たちまち井上劣勢。
 井上、左はいいのだがガードが……というか距離がニックに有利すぎる。
 いってるそばから井上鼻血。ダメージ蓄積したところでテイクダウン→ハーフガードでがんがんパウンド落とされピンチ。
 からくもスタンドに逃れるが、相変わらず打撃は劣勢。殴られまくって意識朦朧としたところでセコンドからタオル投入。

第6試合ライト級グランプリ2回戦
○川尻達也VSルイス・ブスカペ× 判定3-0
 クラッシャー対岡村さん(にしか見えん)。実力者同士の手に汗握る一戦。
1R テイクダウンしたいブスカペとさせたくない川尻。互いにトップクラスの技術を持っているので試合の流れが非常に面白い。腕一本足一本にそれぞれ意味や布石があるのが良い。
 全体的に流れは川尻。柔術マジシャンのタックルや引き込みを切り続け、パンチ、パウンド、膝と、川尻らしい試合運び。ポジショニングがうまい。
2R 川尻、最後に両足フックされてバックチョークを極められかけたが、なんとか体を回転させ向き合う形で上になってパウンド。
 試合終了。当然川尻勝利。

第7試合ライト級グランプリ2回戦
○エディ・アルバレスVSヨアキム・ハンセン× 判定3-0
 アメリカンナックルスター対北欧の処刑人。熱い。
1R スタンド打撃はエディ優勢。開始30秒、右のストレートでダウン奪い、4分30秒にはカウンター気味の右フックでハンセンの腰が落ちた。
 しかしいずれの場合も追い込みがうまくいかない。というかハンセンがうまい。すかさずグラウンドに引き込みガードする。長い手足を器用に使い、逆に攻める。ブラジリアン柔術ヨーロッパチャンピオンという実績プラス経験がものをいうのか。さすがだ。
2R 変則三角、足で相手をリフト→回転させての腕ひしぎなど、ハンセンの柔術技冴え渡る。中盤ではアームロック→十字→アームロック→十字と連続した流れの中でエディの腕を極めかけるが、エデイここは気合で凌ぐ。会場から拍手。
 チャンスを逃し、気落ちとスタミナ切れが同時にきたハンセン。打撃攻防でピンチに。エディのハイキックなどもらい一瞬意識が飛び……。
 と、ここで時間切れ試合終了。どっちが勝ってもおかしくない内容……だが、最後の数発がイメージ悪かったか、エディの勝利。
 両者とも力を出し切った満足の表情でひざまずいての礼。会場はスタンディングオベーション。クリーンかつ高レベルな試合に賞賛の嵐。DREAMここまでのベストバウト。
 
第8試合ライト級グランプリ2回戦
○宇野薫VS石田光洋× 2Rチョークスリーパー
 2回戦から参加のシード扱いの宇野に、珍しく敵意剥き出しのさわやかタックル小僧石田。セコンドの川尻もガン飛ばしまくり。
1R 打撃は宇野。石田のタックルを切り続け、右アッパーで鼻血を流させる。
 残り3分で石田ようやくテイクダウン。ここからは石田の時間。バックチョーク極まりかけるが宇野すんでのところでするりとかわす。
2R コンマ何秒の隙を宇野がついた。グラウンドでするすると石田の後ろに回り、チョークできゅっと。宇野ってこういう動きが多いよな。小動物的な。
 試合後の川尻の宣戦布告に辟易とする宇野の表情が良かった。

武士道シックスティーン

2008-05-14 20:58:58 | 小説
 過日、オフ会にてI君とK君に再会した。ほぼ同時期にFF11を始めた同郷の彼らは、4年という歳月を経て見違えるように成長していた。若さとは時に頑なで険のあるものだが、彼らの放り込まれた社会が適度に角を取り、丸みを帯びた魅力ある若者へと変貌させていた。
 その姿に過分に喜ぶ自分に驚いた。人の成長が、これほど心を揺さぶるものだとは思わなかった。
 
「武士道シックスティーン」誉田哲也

 伝説の剣豪・新免武蔵を師と仰ぎ、五輪書を読みながらの筋トレを欠かさない、現代の武士を志す女子中学生・磯山香織は、全中2位を誇る剣道エリート。しかしなんの気なしに出場した市民剣道大会で、不思議な中段を使う甲本早苗の前に敗れる。
 内心侮っていた大会だけに、敗戦のショックは大きかった。あまりの悔しさに、磯山は他校からの高校推薦をすべて蹴り、甲本のいると思われる東松高校への進学を決めた。奇しくも、同校には兄を剣道部退部まで追い込んだ仇・岡巧も在籍している。
 敵をまとめてなぎ倒してやると鼻息も荒く高校生活をスタートさせた磯山。しかしライバル甲本(旧姓で、現在は西荻)は日舞出身の驚くほど波のある選手で、勝利への執着も薄い。あっさりとリベンジは果たしたものの、手応えがなさすぎる。
 あの日敗れた西荻は、けっしてこんなものではなかった。こいつには、まだまだ底がある。見せていない地力がある。
 膨れあがったライバル幻想を信じる磯山は、西荻につきまとい彼女の成長を促す。それは、まっすぐ進むことしか知らない磯山らしく頑なで、コミュニケーションなど意にも介さない乱暴なものだった……。

 ガール・ミーツ・ガール。反発しながらも引かれ合う2人の出会いと成長を描いた青春チャンバラストーリー。
 ミシェル・ロドリゲスを彷彿とさせる三白眼の女・磯山と、おっとりとして女の子らしい西荻の対比が面白い。
 とくに磯山。この成分の99%がツンでできている女が、残りの1%のデレに目覚める瞬間が可愛すぎる。といっても男関係ではなく西荻との友情なのだが、剣道を通して認め合い心交し合う仲になった2人がまぶしすぎて悶えた。
 武道のモットーは精神の修養と人格の形成にありとはよくいったもの。勝敗を超えたところにある何かを見つけた彼女らの姿が清々しく、ついつい、自分に娘がいたらなーなんてことを考えてしまった。

六枚のとんかつ

2008-05-12 21:55:08 | 小説
「六枚のとんかつ」蘇部健一
 
  空前絶後のアホバカ・トリックで話題とか、ノベルス版ではあまりに下品だという理由でカットされた「オナニー連盟」もあえて収録したとか、素晴らしい文句が購買意欲をそそらない本作。メフィスト賞の選者のコメントもふるっていて、「たんなるゴミ(笠井潔)」、「作者はバカミスを逃げ口上にしているだけ(村上貴史)」のような罵詈雑言に満ちている。ミステリに対してまじめに取り組んでいる人ほど評価が辛く、エンタメと割り切って肩の力を抜いて楽しめる人ほど高評価、という傾向がある。
 小野由一という名のうだつのあがらない保険調査員が、保険金絡みの犯罪を解いていくというのが基本ライン。そこに迷推理作家の古藤や、百貫デブ(ひさしぶりにこの表現を使った)の早乙女が茶々を入れ、どうにもならないところまで転がしに転がして、最後は奇跡的に解決を見るという方向性。
 生理現象やフェティシズムなど、ミステリの題材になりにくい下品なテーマをあえて取り上げることで、他の「まともな」ミステリとは一線を画する、というと褒めすぎか。
 謎解きレベルは並。自分勝手で救いのないキャラとの小野の絡みはなかなかにユニークで、僕などはそれだけでも十分に楽しめたが、万人受けするとは思えない。真面目なミステリファンにすすめると、付き合い方を考えられるかもしれない。
 蒔田絡みでテレビ化すれば「トリック」や「パズル」風になるだろうし、そうなれば面白いと思うがどうか。

左90度に黒の三角

2008-05-10 08:26:49 | 小説
左90度に黒の三角 (講談社ノベルス ヤM- 4)
矢野 龍王
講談社

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「左90度に黒の三角」矢野龍王

 中学時代、同級生の少女が死んだ。それから数年がたち、鈴木鋼は大学生になっていた。県立の文系で、将来の夢は小説家。彼女はいないけど、日々を平穏無事に過ごしていた。
 崩壊のきっかけは、町で中学時代の同級生と出会ったことだ。不良の丹野と、元彼女の廿楽と。二人とも、ぎこちない歩き方をしていた。操り人形のようにぎくしゃくとした足取りで、一様にどこかを目指していた。どうやら目に見えぬ力で操られているらしい廿楽を止めようとして止められず、どころか自分まで操られ、鋼はとある館にたどり着いた。
 そこは大富豪の老女と少女が住まう館。10人の同級生が地下室に閉じこめられ、何をさせられるかと思えば推理ゲーム。
 男女2人でペアを組み、館で演じられた殺人劇を、証言者と話せるモニターとPCのみが設置された監禁部屋から推理する。正解ならば2人を開放、不正解もしくは残りのメンバーは全員殺害。順番は自由。監禁部屋の様子は映像のみで確認できる。
 鋼は廿楽とペアを組んでこのデスゲームに挑む。順番待ちの時間と先行ペアからの情報の受け取り、後続ペアへの情報の残し方。気がふれた老女と薬物中毒の少女のあやふやな証言をもとに、過酷なるサバイバルに身を投じていく。
 そしてすべての謎は、「左90度に黒の三角」という言葉が握っている。

「極限推理コロシアム」に始まり、「時限絶命マンション」、「箱の中の天国と地獄」とデスゲームもの「しか」書かないことで有名な矢野龍王。今回もご多分に漏れずのデスゲームもの。偏向もここまで来ると立派だ。毎回違うシチュエーションを考えるのは相当な手間だろうに、手を変え品を変え、必ず別物を作ってくる姿勢は驚嘆に値する。
 本作は、一言でいうなら「自由だなお前!」だ。読みながら何度もつっこんでしまった。超能力持ちの一家が念動で人を集め、殺す。しかもその一家は全員頭のねじが飛んでいて、証言自体が信用できないときてる。十戒や二十戒どころか最低限のルールすら無視した展開に、思わずのけぞった。
 文章も微妙だし、キャラも生かしきれていないし、でも毎度毎度一気読みに読んでしまうのは好きだからなんだろう。かといっておすすめできるかといえばできない。本ごとぶん投げる人のほうが多そう。もっと面白くなりそうな素地はあるのだが……。