はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

げんしけん(10)二代目の巻

2011-07-31 19:24:22 | マンガ
げんしけん 二代目の壱(10) (アフタヌーンKC)
クリエーター情報なし
講談社


「げんしけん(10)二代目の巻」木尾士目

 おおお、まさかの続編。
 笹原世代が卒業、就職してからの現代視覚文化研究会は新人が獲得できず、その存続を危ぶまれていた。当代を引き継いだ荻上は、なんとかしようと熟慮を重ねた上、自分のもっとも得意とする分野、つまり絵描きで勝負することにした。新歓をかねての公開絵描きで、今回はなんと大量3人もの新人が釣れた。
 リアル男の娘の波戸、屈託のない全開腐女子・吉武、コンプレックスの塊・矢島。三人娘は揃いも揃って腐女子(一部男子)で、部の方向性がずれてきた。
 ものの、それで問題があるかというと、そうでもない。もともとのげんしけん自体、アニ研でも漫研でもない、どっちつかずの同好会だったわけで、方向性は偏るにせよ問題ない。唯一の男子会員朽木君はあんなだし。
 ともあれ、新人獲得に成功したげんしけんは、第二フェーズに移行した。

 んで、今回は新人たちのお話。大学入学したばかりの彼女らが、げんしけんというおかしな人間の集まりにいかに溶け込んでいくかを描いている。
 焦点は波戸君。男の娘の彼女(?)が斑目の部屋で着替えるというシチュエーションをうまいこと利用して、面白おかしく描けている。
 僕自身、大学時代に所属していたTRPGサークルが潰れているので、なんだか気が気ではなかった。あの時自分たちのいた場所がなくなることの辛さ、寂しさは、味わった者にしかわからない。だからこその、荻上さんの努力に乾杯。衆人環視の中で、しかも一般人大多数の完全アウェーでその手の絵を描くなんて、生半可な覚悟じゃできません。僕なんか、新人勧誘のポスター配りすら恥ずかしかったのに。え? そういう絵じゃない? またまたー。 

3月のライオン(6)

2011-07-29 10:44:07 | マンガ
3月のライオン 6 (ジェッツコミックス)
クリエーター情報なし
白泉社


「3月のライオン(6)」羽海野チカ

 大人気将棋漫画第6弾。
 いやあ、待ってた待ってた。楽しみにしていた甲斐のある面白さだった。
 前回のラストから、引き続きひなちゃんのいじめ問題に関して。いじめられていた友達をかばっていたら、その友達が転校してしまって、今度はその標的がひなちゃんになってしまったところから。
 まあ、いきなり大攻勢がかかっているわけでもないのだけど、クラスの中での浮き方や、いわれなき中傷の落書きとか、やばい雰囲気はぷんぷん漂ってきている。ひなちゃんが恐れるのも当然で、それを聞いた零くんの怒りももっとも。ちょっと嬉しい驚きなのは、その激しさ。自分の大事な存在を守ろうという意気込みが、強くてまぶしかった。ずれてる部分はあるけども、自分にできるかぎりまっすぐに向き合おうとする真摯さは素晴らしい。これが恋愛に……はならんだろうね……。
 それと並行して、新人王戦も大詰めになってきていた。ひなちゃんが中退した時の家庭教師の費用のことまで想定して(!)日々の対局に気迫のこもっている零くんと、その情熱を良いほうに解釈している二海堂の2人が、いよいよ準々決勝に進出。これはもしやのライバル対決?
 そこから先はご自分の目で。意外……というわけではなかったのだけども。あ、もう来たのか、とは思った。こりゃあ7巻は激熱だね。

 ところで今回は、零くんの元担任の林田さんの株が大暴騰だった気がするのだけどもどうか。いじめ問題へのスタンスとか、元教え子の境遇への共感とか、かなり熱いものがあった。ひなちゃんの担任がひどい分だけ、良さが光る。僕も、あの頃こういう先生に出会えていたら、人間不信の度が進行しなくて済んだのだろうか……詮無きことを考えます。

のりりん(3)

2011-07-26 14:38:03 | マンガ
のりりん(3) (イブニングKC)
クリエーター情報なし
講談社


「のりりん(3)」鬼頭莫宏

 街乗り(?)自転車漫画第三弾。今回は、いよいよあのいけ好かない等々力との12キロバトル。
 りんママの策略と、昔のモンスターマシンの空力フレーム。「横断歩道は降りて押さなきゃ渡れない」、「信号遵守」などの根本的な道交法のおかげで、なんとかかんとか互角に渡り合っていたのりだが、たかだか一週間漬けの特訓ではそもそもの脚力に大きな隔たりがあって、当然勝てるはずもなく……。
 最後にちょっとしたどんでん返しはあったものの、だいたい予想通りの展開だった。ご都合主義を重ねて無理くり勝たせようとしないところには好感が持てる。
 というか、ここで勝ったらこの漫画終わっちゃうもんね。語りたいところは、この次のパートからでしょ。自転車との付き合い方とか、通しての人と人とのつながりとか。
 あとは、迂闊な発言を繰り返すからももさんが良かった。自分の惚れた男を信じて応援する真摯なまなざしも素敵だった。りんがメインヒロインだと思ってたんだけど……違うのかねえ? まあ、もちろんこっちのほうがストレートで良いのだけども。

エデンの檻(13)

2011-07-23 23:59:51 | マンガ
エデンの檻(13) (少年マガジンコミックス)
クリエーター情報なし
講談社


「エデンの檻(13)」山田恵庸

 スパコンの名残どころか、腐敗しない死体までもが見つかった灯台の頂上。さらに先生の具合までもが思わしくなくなり、さすがの矢頼も焦りを覚える。
 そんな中、仙石パーティーにひさしぶりの合流者が。武藤・社の二人組のおじさん連中だが、こいつらはどうも、錦織という1人の男から逃げ出してきたようで……。

 旧世代の生き物の跳梁跋扈する島サヴァイヴァル13弾。
 さすがにマンネリになってきたせいか、ストーリーの進行に変化あり。島自体の謎の一部と、ラスボスっぽい人間の存在が明らかになった。
 でもなあ……個人的には旧世代の脅威にこそ興味があるわけで、現代の人間の悪意には、さほど引かれるものがない。脅威を出しすぎてマンネリ化したという問題点はたしかにあるんだけどさ……。
 ところで鈴木君、目立ちすぎでしょ。作者どんだけNTR属性なんだよ。

この彼女はフィクションです(1)

2011-07-21 17:44:23 | マンガ
この彼女はフィクションです。(1) (少年マガジンコミックス)
クリエーター情報なし
講談社


「この彼女はフィクションです(1)。」渡辺静

 転校続きで友達も恋人もできなかった葉村裕里は、想像の中の恋人・ミチルの「設定」をノートに描き続ける痛い子になってしまった。黒髪ロングで巨乳で天真爛漫で明るくて、羽村のことをユーリと呼んで慕っていて……。とても正視できない激痛の歴史が、大学ノートに換算して99冊……。
 そんな葉村にも、高校生になって初めて友人が出来、好きな人も出来た。彼女の名は久住風子。現役小説家でみんなの憧れである彼女に少しでも近づくために、彼女の所属している文芸部に唯一の男子部員として入り込んだ。まだまだ恋の花は咲かないが、そろそろ自分の暗部ともおさらばする時が来たのではないか。そう感じた葉村、過去の自分と決別するために、ミチルの絵を、文章を、すべて処分することに決めた。
 スポーツバッグいっぱいに詰め込んだ思い出を携えて葉村が訪れた神社は、偶然にも創作の神様を祀った社で、さらにさらに偶然なことには、そこには憧れの風子先輩もたたずんでいた。
 何気なく会話を重ねるうちに、風子の秘密と傷を知ることになった葉村。ここは自分もと勢い込んで、バッグを広げて見せてみると……。

 妄想彼女が具現化しました、という、とってもありがちなお話。
 と思いながら読んでいたのだけど、途中でそのイメージはがらりと変わった。一番は、葉村のミチルへの想いが終わってしまっていること。もちろん自分の妄想の塊だから、ミチルはかわいくて自分に都合が良い女ではあるのだけど、葉村はもう風子のことが好きで、だから、ミチルにあられもない恰好で抱きつかれればぐらりとしたりはするのだが、それでも本能のままにあらぶったりはしない。女性との接触自体が極めて苦手な草食系だから、二股なんて考えるべくもない。
 それは、ミチルにとってはアイデンティティに関わる重大事項。過去を、つまり自分を捨てて新たな恋に向き合おうとする葉村を振り向かせるために、彼女はとんでもないことを言い出した。
「犯人(好きな人)がいなくなっちゃえば、ユーリはまたわたしのこと好きになってくれますよね(はあと)」
 設定に関する文章が、ミチル誕生のどたばたでなくなってしまっていて、葉村自身は自分がどんな「設定」を決めていたか覚えきれていない(なんせ子供の頃からの幾層もの積み重ねだから)。「設定」していないこと(倫理観とか)はこれからじかに教えなければならない。
 課題が山積みなところで、ミチルは葉村の学校の葉村のクラスへ無理矢理転校してきて、葉村の好きな人を探そうとする。当の風子は一連の騒ぎに立ち会っているので事情は知っているが、風子自身が葉村のことを意識し始めていて、時折いい雰囲気になっちゃうのが危なすぎる。生命の危機的な意味で。
 いやあ、面白かった。妄想彼女ヤンデレ系の、意表をついたいい展開だった。2巻が待ち遠しい。

ひらけ駒! (2)

2011-07-18 02:12:10 | マンガ
ひらけ駒!(2) (モーニングKC)
クリエーター情報なし
講談社


「ひらけ駒! (2)」南Q太
 
 めきめき力を蓄えつつある一人息子の宝に触発され将棋を始めたママさんと、宝の日常を描いたアットホーム将棋漫画第2弾。
 あくまでアットホームなので、駒が光ったり病気で死にそうなライバルがいたりはしない。もちろん、一戦一戦宝は真剣で、楽しく打っているのだが、基本ママ視線なので、細かい勝負の趨勢や執着などは読者にもわからない。そういう肩肘張らなさがこの話のいいところだと思うので、それはそれで良し。
 今回の見どころは、連勝街道を走る宝の初段認可と、ママ初の実戦。動きの少ないこの漫画では、どちらもけっこう大きなイベント。
 しかし、この人たちって父親はいるんかね? ママさんの発言から、いるようなそぶりはあるのだけど、まったくぜんぜん姿を見ないのよね……。将棋会館に来たこともないし……。
 ところで、今回のマイフェイバリットは、ママさんの飲酒シーン。金曜日はワインDayといいながら、チーズ(?)をつまみに酔っぱらってる姿がキュートでした。

つぐもも(6)

2011-07-14 15:04:50 | マンガ
つぐもも(6) (アクションコミックス(コミックハイ!))
クリエーター情報なし
双葉社


「つぐもも(6)」浜田よしかづ

 すなおとの激戦を終えボロボロになったかずやは、手足もまともに動かせないほどの重度の疲労状態。ここぞとばかりに桐葉に「ごほうび」をもらったり、完全に懐いたくくりに食事の世話どころか入浴や下の世話(!)までしてもらう体たらく。
 人間として、男としての大事なものを失いつつも復活を遂げたかずやは、なぜかすなおの家に呼び出される。首をかしげつつ向かってみると、そこには母親の強引な説得の末、かずやと結婚を前提にしたおつき合いを強要されたすなおが待っていて……。

 きました、サービス回。バトル展開の続いたあとの反動か、今回は色々とスレスレの過激なシーンが満載。思わず成年マークを探してきょろきょろするほどのあれなので、なんとも説明しようがない。できない。5巻まで読んできた人ならわかるはず。恐ろしい漫画だ。
 ……しっかし、すなおはいきなりかわいいツンデレ娘になったな。そのうえ二人でけっこういきつくとこまでいってしまうし、このまますなおエンドもあり……なのかねえ……。

神様ゲーム

2011-07-12 16:40:04 | 小説
神様ゲーム (ミステリーランド)
クリエーター情報なし
講談社


「神様ゲーム」麻耶雄嵩

 かつて子供だったあなたと少年少女のための……といううたい文句の作品を、麻耶雄嵩に書かせるのはいかがなものか……。
 まず最初にそう思いながら読んで、読後はさらにその思いを強くした。子供向けの平易な文章に、麻耶雄嵩独特の、あのいやーな雰囲気、驚異のどんでん返し、最後の最後まで悩ませ考えさせながら「そう来るかー!?」とひっくり返るような変化球のオチがついてきて、最高だった。
 いやあ、やっぱり好きだ。麻耶雄嵩。「夏と冬の奏鳴曲」以来、愛してやまない麻耶節が、ミステリーランドという舞台を踏襲しながらもきっちり帰ってきた。

 大好きな両親と、浜田探偵団のみんな、親友の英樹に囲まれて楽しく暮らしていた小学生の芳雄の前に、突如、神様が現れた。正確には、自分を神様だと自称する同級生・鈴木君が現れた。
 驚異の上から目線で世の中を淡々と語る鈴木君は、芳雄たちが探している連続猫殺し事件の犯人をぴたりと当てた。それ以外にも、「どうにもこいつは本物だぞ」と信じざるをえないような発言を連発する鈴木君に、やがて芳雄は全幅の信頼を置くようになる。だが、それは、もうひとつの悲劇の始まりでもあって……。
 何者かに殺されてしまった○○の仇を討とうと走り回る芳雄が、最後に頼ったのは、やはり鈴木君。その万能の能力で、人に「天誅」すら与えることのできる鈴木君は、
「ぼくが天誅を下してあげるよ」
 例の淡々とした口調でそう語り……。

 挿絵の不気味さも相まって、子供が読んだらトラウマ必死。麻耶ファンなら読むべき。そうでない人でも、一度経験しておくのは悪くないと思う。親切設計とは程遠い、突き放すどんでん返しミステリーの神髄は、ここにある。

妖精消失

2011-07-09 09:58:39 | マンガ
妖精消失(リュウコミックス)
クリエーター情報なし
徳間書店


「妖精消失」安堂維子里

 虫の羽を生やして自然素材の服に身を包んだ金髪の少女たち。
 ごくありふれた、古典的といっても過言ではないステレオタイプの妖精が見えてしまう主人公・壮一郎は、とある薬品研究所で働いていた。
 脳腫瘍に悩まされる彼は、痛みと日々の苛立ちが募り、半ば自暴自棄になって、しきりにこちらへコンタクトを試みてくる妖精の指示に従うことにする。言われたとおりに薬品を調合し、装置を整えスイッチを入れて、さあできたものはというと……。

 妖精を製造、というよりは、妖精がこちら側で行動するための憑代を造った、というほうがイメージ的に正しいかもしれない。
 人間世界に顕現した、何もかもに興味津々な妖精・イレーヌと出会い、彼女とのやりとりのひとつひとつが、ささくれ立った心の傷を埋めていく。その様が心地よかった。
 そのぶん、別れはきつい。
 タイトルでもわかる通り、二人には別れが訪れる。意外といえば意外なような、そうでもないような……詳しくはネタばれすぎるので書かないが、妖精の解釈の仕方がどことなくSFチックで、そこが面白かった。向こうの世界とこちらの世界の在り方に、ロマンと切なさがあふれていて、じんときた。自分自身に当てはめてみて、もし自分が幼いころに思い描いた世界との関係性もこうだったら楽しいのになあ、となんだかうらやましかった。僕だったら号泣ものだけども。
 巻末のはやぶさ帰還の話もそうなんだけど、題材への愛おしさが満ち満ちた、良作だった。

「ネクログ(1)」

2011-07-05 12:21:47 | マンガ
ネクログ(1) (アフタヌーンKC)
クリエーター情報なし
講談社


「ネクログ(1)」熊倉隆敏

 物書きの青年・宋(ソン)は、キョンシー化した幼馴染のシュエ姉ちゃんを蘇らせようと、道士の胡(フー)に弟子入りすることに。
 しかしこの胡がとんでもない奴で、見た目は少年なのに、姉ちゃんを使役するわ、その辺の一般人に平気で術をかけるわとやりたい放題。まあ、一般人に関しては、かけられても文句の言えないような柄の悪い奴らなのでいいけども、キョンシー化したとはいえかなり生前の面影を残している(見た目ではそれとわからない)姉ちゃんの体が傷つくのは正視にたえない。
 ということで、頑張る宋なのだ。いやでも……ほとんど何も教えてもらってないように見える。資質がないのか、胡がわざともったいぶってるのか。ほとんど胡の使用人でしかない宋の、明日はどっちだ?

 おお、懐かしい!
 ひさしぶりにキョンシーとか見た。
 今の若い人にはぴんとこないかもしれないけど、昔、僕が子供のころにはキョンシーブームがあった。漫画雑誌で特集が組まれ、映画が何本も公開されていた。とくに人気があったのは登場人物のテンテンとスイカ頭で、ゴールデンハーベスト的身のこなしで画面狭しと暴れまくる彼らの活躍に、小さい胸を焦がしたもの。しみじみ。
 そんな懐古的な視点はさておき、中身はかなり面白い。中国の街並みのごちゃごちゃした感じや、怪力乱神な道士・妖怪たちのバトルなど、見どころが豊富。とくにバトル面に関しては、西洋ファンタジー風な炎メラメラ雷バチバチなんていうのは全然なし。中華的な、というのか、物の在り方を変転させて、それを使って戦うのだけど、いちいち意表をついてくれて楽しい。
 途中、胡の昔なじみの道士仲間・管(チェン)が登場するあたりで話も動き出し、次巻への期待も高まった。文句なしの良品。おすすめ。