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はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

レスラー

2012-06-15 19:22:48 | 映画
レスラー スペシャル・エディション [DVD]
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NIKKATSU CORPORATION(NK)(D)


「レスラー」

 花形レスラーランディも今は老いた。過去の栄光のおかげで弱小団体の地方巡業のトリを飾り、スーパーのバイトで食いつなぎながらなんとか生き延びている。プロレスにしがみつけている。妻子とは別れ、男やもめの一人暮らし。体のほうにはとっくにガタがきていて、あちこち故障や古傷だらけ。肌にハリがないのは、ステロイド中毒のせい。中身もボロボロなのだ。
 そんな折、試合後のロッカールームでアンディは突然倒れる。心臓が悲鳴を上げた。一命はとりとめたが、もう、リングには上がれない。ジョギングすることすらできはしない。
 そうなってみると、ランディの寄る辺は家族しかなかった。勇気を出して娘に会ってみたものの、彼女の心は冷たい氷で閉ざされていた。
 行きつけのバーのダンサーのアドバイスでもって娘に何度なくアタックし、なんとか仲直りに成功。スーパーのバイトをフルタイムにして生計を建て直し、第二の人生、再始動。
 と、思ったものの、そこから彼の転落は再び始まった……。
 ……おや? 再帰の話じゃなかったのか?
 脳裏に疑問符を浮かべながら見続けたものの、どうにもおかしい。
 約束を破ったことから再び娘と不仲になり、勢いでスーパーを辞め、マネージャーを騙して上がったリングの上で、彼の視界は急速に赤くなり……。

 プロレスに賭ける情熱やファンの盛り上がり。アングルだらけの舞台裏。ロートルレスラーの悲哀……様々な理由をつけてはいるものの、「リングの上でしか生きられなかったバカが死んだ」だけ。
 それが腹立たしくてしょうがない。
 どうして娘ともう一度やり直そうと思わないのか。スーパーで頑張ろうと思わないのか。昔のようなパフォーマンスを期待できない体でなんでリングの上に上がったのか。
 見ていてこんなにイライラする映画はひさしぶりだった。
 でも、このランディへの腹立たしさは、たぶん僕が彼のレスラー生活を知らないからだ。
 必殺技も、かつての戦友たちとの思い出も。彼を形成する様々な物事を知らないからだ。
 僕自身はプロレスが好きだ。とくに三沢が好きだった。社長であり、現役レスラーでもあった彼がリングの上で死んだときは、もちろん悲しかったのだけど、ぶっちゃけ泣いたのだけど、でも不思議と腑に落ちた。僕は三沢に社長なんかやってほしくなかった。リングの上の英雄は、やはりリングの上にいてほしかった。死んでほしいなんて思ったことはないけど、老いていく彼を見たいとも思わなかった。
 もしランディが三沢だったら。
 そんなことを思う。
 再びリングの上に上がる彼を止められただろうか。死に行く後ろ姿をあざ笑うことができただろうか。家庭関係や生活基盤がボロボロになって自棄になる彼をバカにできただろうか。
 ランディへの感情移入度。
 それが、この映画の出来不出来の分岐点なのだと思う。
 あとはそうだな、男子であること。差別をするわけではないけれど、これはアメリカの男の子の映画なのだ。

28週後…

2011-12-29 13:16:41 | 映画
28週後... (特別編) [DVD]
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20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


「28週後…」監督:ファン・カルロス・フレスナディージョ


 人間が狂暴化するRAGEウイルスの流行からしばらくして、ドンとアリスは、郊外のとある老夫婦の家に他の生存者と隠れていた。昼間でも目張りをした中での暗い生活。そこへ、一人の男の子が逃げてきた。自分の両親に襲われたという子供は、しかし同時に大量の感染者にも追われていて……。
 感染者の群れに蹂躙される家。生存者は一人また一人と犠牲になり、襲撃に加わり、ドンは、救出不能となったアリスを見捨てて一人ボートで脱出するのだった。
 それから28週後、飢餓により感染者が死滅したという安全宣言が出されたロンドンでは、米軍主導のNATO軍の保護下で都市の復興が進んでいた。逃げ延びたドンは、スペインに旅行中で助かったタミーとアンディを迎え、新たな暮らしを送ろうとする。
 そんな中、軍の警告を無視して安全区域外の自宅に帰ったタミーとアンディは、そこでなんとアリスを発見する。遺伝的にRAGEウイルスに免疫のあったアリスは、感染しながらも生きていたのだ。ただし、保菌者として……。
 街に溢れ返る感染者の数の多さに、NATO軍は選別しての処理や救出を断念。封じ込めとせん滅を決断した。軍隊が市民も感染者も見境なく打ち殺す地獄の中、ドイル軍曹は持ち場を離脱。たまたま目に入ったアンディを救おうと、屋上から地上に降りる。アリスの免疫を遺伝しているかもしれないという理由でアンディを保護していたスカーレット医療隊長と合流。街からの脱出を図るのだが……。

 名作「28日後」の続編。あれからしばらくして、さぞや世界中に感染者は広まっているのだろうなあと思ったら、意外と統制がとれていた。感染者って飢餓で死ぬんだなあと変な感動を覚えながら見た。
 さすがに重厚な作りで、人間ドラマも手が込んでいて、どっしりと落ち着いて見れた。ドンの遣る瀬無い感じが良かった。子供たちと、アリスと、自分の愛している人間たちに向けられる軽蔑の眼差し。あれは怖い。
 感染者が溢れかえったあとの各個人の行動にはさまざまな矛盾点があったけど、まあそのへんはしょうがないのかな。ゾンビ映画だし。
 一番好きな死にざまは地下鉄のホームで死んだあの人。あんな死に方だけはしたくないよねえ……。え?「好きな」じゃないのかって? まあほら、そこはゾンビ映画フリークにはよくあることなんで。
 しかし最後のあれはどういうことなんだ? なんでアンディが? と思ったら、Wikiを見て納得。そういう理由だったのね。
 ともあれ、ゾンビ映画でこの重さはなかなか出せない。素晴らしいと思います。おすすめ。

涼宮ハルヒの消失

2011-01-27 19:48:46 | 映画
涼宮ハルヒの消失 通常版 [DVD]
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角川映画


「涼宮ハルヒの消失」

 12月も半ば。クリスマスを間近に控えたハルヒはいつにも増して盛り上がっていた。朝比奈・古泉・長門・キョンら団員にそれぞれ役割を振って、楽しいパーティを開くために。グチり、苦笑しながらも従順にその命令に従うキョン。そんな、いつもの光景。
 18日の朝、すべては変わっていた。全校中に、昨日までは流行っていなかった風邪が流行しており、友人との会話が食い違い、そしてなにより、涼宮ハルヒがいなくなっていた。風邪で休校とか、そんな生やさしいレベルではない。ハルヒの席には当然のようにあの朝倉が着席し、ハルヒ自身が最初からいなかったものとして扱われているのだ。
 誰得な世界の改変なんだよ、と思いながら、仲間を探すキョン。しかし、朝比奈と長門はキョンのことを覚えておらず、古泉に至ってはクラスごと無かったことにされていた。
 文芸部(元SOS団部室)で孤独に本を読み続ける長門に入部を薦められ、とりあえずの居場所を確保したキョンだが、世界を元通りにする方法については皆目検討もつかない。このまま、ハルヒのいない世界で暮らすことになってしまうのか? こんな、火の消えたような灰色の世界で……。

 懐かしい仲間に久しぶりに再会した、そんな気分になった。自分の中で、この作品がそれほど大きなものになっていることに、今更ながら驚いた。ハルヒ好きじゃないんだけど、なんでかな……?
 ともあれ、良い出来でした。仲間を奪われ、八方塞がりなキョンが、死にものぐるいに奔走し、かつての絆を違った形で取り戻していく過程がどきどきした。こっちの世界でのハルヒを見つけたときの歓喜が、画面越しにもわかった。
 結末は、ある程度知ってしまっていたのでそれほど驚きはしなかった。できれば、知っていたくなかったかな。そうすれば、変わってしまった世界を、あの人が望んだ現実の姿を新鮮な気持ちで眺めることができただろうから。まあ、あの人が誰か、なんて見てればすぐにわかることだけど。だって、こんなことができるのは、そして、これによって得するのは、あの人しかいないもの。だからこそ、寂しく切ない。ありえたかもしれない現実の中のあの人が、とても可憐だったから。望みを絶ち切る形になるのは、キョンならずとも心苦しかったはず。
 うん、面白かった。もう一度見てみたいと思わせてくれた、ひさしぶりのアニメ映画でした。

チョコレート・ファイター

2010-08-02 07:40:56 | 映画
チョコレート・ファイター [DVD]

東宝

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「チョコレート・ファイター」監督:ブラッチャヤー・ピンゲーオ

「マッハ!!!!!!」「トム・ヤム・クン!」により全世界に名を馳せた、ブラッチャヤー・ピンゲーオ監督の手になる作品の第三弾。今度の主人公は、ななななんとの女の子。
 日本人のヤクザ・マサシ(阿部寛)とジン(アマラー・シリポン)との間に生まれた子・ゼン(ジージャー・ヤーニン)は、生まれつき脳の発達障害を患っていた。幼馴染のムン(タポン・ポップワンディー)のフォローがなければ満足に日常生活を送れないほどで、それがジンの頭痛の種だった。
 なんとかかんとか成長し思春期を迎え、驚くべき反射神経と動態視力と運動神経を開花させたゼン。白血病に苦しむジンの薬代を稼ぐために、ムンとコンビであらゆる方向から飛んでくるボールをキャッチする大道芸を始めた。しかし芸の質の割にのわずかなおひねり代では当然やっていけず、ムンはジンの秘密の貸付帳を勝手に持ち出し、債権を徴収しに回るのだが……。

 なんてストーリーはどうでもいいね。今回は像や仏像ではなく借金を巡っての争いだってだけで、肝心なのはその戦いぶり。主役が男じゃないことで、アクションの質が低下するのではとの心配を抱く人が多いと思うが、それははっきりいって杞憂。
 なにしろゼン役の女の子の動きがすさまじい。タイのテコンドー強化選手という経歴に嘘偽り無く、本格的なテコンドー技で男どもを蹴り倒し、ヨガでもやってんのかってくらいに柔軟な身体で狭いとこに入り込む(しかもそこで戦う。これは身体の小さい女の子ならでは)。当然のごとくのノースタント、ノーワイヤで、見てるほうが青ざめるくらいのことを平気な顔でやってのける。基礎トレに4年、撮影に2年もかけたというのは伊達じゃない。
 実際に僕が視聴したのは年末で、忘年会の宅飲みの席でのことだったのだが、この映画を見ている時だけは、酔っぱらいどもの目が完全に醒めていた。みんな完全に「マジかよ……」と度肝を抜かれた表情だった。こんなにイノセントな顔つきの少女(なんと26歳! こんなに童顔なのに……)がこんなことを……と誰しもが思わされた。
 序盤のもたつきやストーリーの整合性に目を瞑ることさえできれば、なかなかこれほどのアクション映画にお目にかかることはあるまい。当然のおすすめ。

REC

2010-07-06 14:40:38 | 映画
REC/レック スペシャル・エディション [DVD]

Happinet(SB)(D)

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「REC」監督:ジャウマ・バラゲロ/パコ・プラサ

 TV局の女性レポーター・アンヘラ(マニュエラ・ヴェラスコ)は、街の消防士への密着取材中、出動に随行してとあるアパートを訪れた。
 アパートの1階には、不安げな人々が所在無くたむろしていた。聞けば、2階に独居する老婆が暴れているらしい。それではということで、消防士、警官らが取り押さえようとするが、老婆は逆に警官に噛み付いてしまう。
 なんとか襲われた警官を助け出し、 手当てのためにアパートの外に出ようとすると、出入り口はなぜか警察によって封鎖されていた。検疫のために封鎖されてしまったというのだが……。
 果たしてこのアパートに何があったのか? そしてアンヘラたちが回し続けるカメラには、どんなおぞましいものが映ることになるのか?

 全編ビデオカメラを用いた主観撮影によるドキュメンタリー作品。ようは「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」みたいな映画。
 ゾンビ症を発症した人がどんどん数を増していき、対する人間には1丁の拳銃以外の武器は棒きれぐらいしかなく、さらに閉ざされた空間で、アンヘラたちには内部構造すらよくわからない……。
 限定条件を重ねたことで、恐さがうまいこと積み重なった。ファインダー越しにしか見えないことで、見ているほうも「何が映るかわからない」緊張感が常にあった。「逃げ場が少ないこと」も恐ろしいさの一因。4階建て? ぐらいのアパートメントには、各部屋以外には階段と踊り場と1階のホールぐらいしかスペースが無い。どんなに早く走っても登っても、必ず行き止まる。部屋に閉じこもっても、ドアは必ず破られる。「どうすりゃいいんだ!?」切羽詰ったこの恐怖!
 低予算で最大限に面白さを出すことに成功している。続編は、「最後のあの瞬間」からスタートするらしいので楽しみ。

AVATAR

2009-12-31 10:20:02 | 映画
「AVATAR」監督:ジェームズ・キャメロン

 とある未来の人類は、5年の月日をかけて惑星パンドラに到着した。その地に眠る有益な鉱物を手に入れんと早速入植を開始した人類だが、自然と供に生きる原住民ナヴィとの間に諍いが起こる。その解決策を模索する為に編み出された手法は、なんとナヴィに模して造られたアバターの脳に人間の意識をリンクして同じ目線で懐柔・教化するというもので……。
 アバター適合者として選ばれた主人公ジェイク(サム・ワーシントン)は、戦傷で車椅子生活を余儀なくされた海兵隊員。他の適合者のような文化的探求心からではなく、純然たる高給の為にリンクを始めるのだが、アクシデントから仲間とはぐれたところをナヴィの女ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)に救われ、霊的存在エイワにも認められ、成り行き上ナヴィの中で暮らすことになる。
 力に満ちたナヴィの肉体と、自然を尊重する健やかな精神性、豊かなパンドラの大地に魅せられたジェイクは、やがて人間とナヴィの間をたゆたう自らの矛盾に苛まれるようになる。どこまでいっても足の不自由な落伍者にすぎない自分。強き者として尊重し受け入れられている自分。どれほど望んでも越えらぬ種族の壁。迫る人間とナヴィの衝突の時。苦悩の末に彼がたどり着いた答えとは……?

 文句なく傑作。陳腐な表現だが、映画表現におけるひとつの革命であると断言できる。
 肌の質感。熱帯の海のように色彩豊かな大地の広がり。個性豊かな動物たち。たくましく走り回るナヴィ。それらすべてが先進の3D表現により、実際に目の前にあるように見える。自分が今まさにそこにいるように感じることができる。夢のような臨場感に、僕は酔いしれた。
「ありがち」、と切って捨てられがちなストーリーは、まあたしかにいかにもジェームズ・キャメロン風で無難な出来に終始している。ネイティブ・アメリカンの宇宙版にしか見えないナヴィの風俗も、想像の域を出ない。
 反面、人間ドラマはよく描けていた。主人公の苦悩がしっかりと描かれていた。まるでネトゲにハマるゲーマーのような悩みを抱えるジェイクに共感できるという人は少なくあるまい。ご都合主義でも、考えなしでも、彼が選び戦い抜いた戦争と出会いは、多くの視聴者の心をとらえるはずだ。敵役のマイルズ・クオリッチ(スティーヴン・ラング)大佐の奮闘ぶりも素晴らしい。
 2Dで見たらどうなるのか、という疑問はあるものの、しかしいったん3Dで観てしまうととても2Dを観る気にはならず、翻って考えてみると、これは映画館で観るしかない作品なのだ。ちょっとでも興味のある方は、いまのうちに是非に。

20世紀少年最終章~僕らの旗~

2009-12-29 08:05:29 | 映画
20世紀少年 <最終章> ぼくらの旗 豪華版 (本編DVD1枚 特典ディスクDVD1枚)※生産限定

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「20世紀少年最終章~僕らの旗~」浦沢直樹

「MASTERキートン」と「パイナップルARMY」は間違いなく傑作だった。「YAWARA!」も嫌いじゃない。基本的には好きな作家なのだけど、天才肌というのか、時にわけのわからない作品を作る傾向にある。「MONSTER」や、この「20世紀少年」がそうだった。出だしの面白さは抜群。その後の展開についていけず、どちらも途中で追うのを諦めてしまった。
 今回わざわざ映画館まで足を運ぶことになったのは、A君のせいだ。2人の記念日に何か映画を観ようということになって、A君は「しんぼる」、僕は「サマーウォーズ」と、意見が対立した。折衷案が、同時期に1、2章をテレビ放送していた「20世紀少年」だった。
 内容は、もう説明するまでもないような気がするが、幼少の頃、秘密基地を作って遊んでいたグループのリーダー格・ケンジ(唐沢利明)が戯れに作った「よげんのしょ」通りの事件が現代に起こる。果たして犯人は誰なのか? というもの。過ぎ去った年月の中でねじ曲がった思い出と、バイオテロとか新興宗教とか現実に起こる事件のえぐさの狭間にある真実。そのあまりの「あり得なさ」に、僕はずっと拒否反応を起こしていた。今回の一気の視聴でも、その印象はあまり変わらない。一応整合性はある。けど、「やっぱりそりゃねえよ」。そう思った。登場人物の行動もいちいち嘘くさい。「ともだち」の正体も見た目でばればれだし。バカ作品として扱うならそれでいいのかもしれないけど、うーん……。
 わかんなくもないんだよね。これはケンジが相手していた「もの」の正体のことをいってるんだけど。でも、それってあまりにも曖昧すぎないか? そんなものが人を殺すか?
 ぼかしただけなのかな? わからない。なんかね。すっきりできなかった。とりあえずA君は満足そうだったんでよかったかな。人前で満面の笑みを浮かべながら「ともだち」ポーズをとるのは勘弁してほしいのだけど。
 あ、マンガと映画の比較は、僕自身の記憶が薄れているのでできない。あんな荒唐無稽な話をよく実写にできたな、という意味では褒めるべき。張りっぱなしの伏線とかもあるけど。
 オールドスクールなロックはうまいこと効いてた。誰の中にもある「あの頃への憧憬」も印象的。ひさしぶりに同窓会をやりたくなった。
 配役は、ケンジ役は適任だったね。唐沢利明以外にゃできない、あれは。歌の巧拙はこの際無視で。他はまあ……同級生に見えなすぎる同級生たちがきつかったかな。実年齢はどうなってるんだ? 意外に近かったりして。ないか。カンナ役の娘は、誰なのこの娘? 目の光が強くて、ものすごいインパクトがあった。この娘主体のエピローグが欲しかったなあ。ケンジ復活後は空気になっちゃったから。そこが残念。

ブリック~消された暗号~

2009-08-11 17:29:34 | 映画
BRICK‐ブリック‐ [DVD]

video maker(VC/DAS)(D)

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「ブリック~消された暗号~」監督:ライアン・ジョンソン

 舞台は南カリフォルニア郊外のハイスクール。人とつるむのが嫌いなブレンダン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は今日も1人。ある日、元彼女エミリー(エミリー・デ・レイヴィン)からひさしぶりの電話を受ける。電話越しのエミリーは切迫した声音で「ブリック」、「タグ」、「ピン」と謎の言葉を残して行方をくらました。
 エミリーの消息を追うブレンダンは、一癖も二癖もある登場人物の間をかいくぐりながらようやく再会を果たすのだが、程なくしてエミリーは何者かに殺害される。うら寂しい排水坑の前でうつぶせに倒れ伏すエミリーを眺めながら、ブレンダンは静かに復讐を誓うのだった……。

 高校生ハードボイルドということで、なんのひねりもない直球なストーリーが逆に売り。
 エミリーの死の謎を追って学園内の裏に蔓延る組織と徒手空拳でたった一人で戦うブレンダンがかっこいい。ちょっとヨン様似の風貌があれだけど、バイオレンスの匂いなど欠片も感じられない彼がエミリーの為に振るう拳には、重い意味が乗っかっている。
 問題があるとすれば、いわゆる「愛の記憶」語りがほとんどないところ。わずかな写真と会話とハグだけでは、命懸けの説得力が足りない。孤独な彼が愛した彼女との日々って、絶対重要なはずで、その一枚一枚のピースを集める儀式が欲しかった。ラストまで見れば、なるほどとうなずける部分はたしかにある。そりゃあ命懸けにもなるよね、無理もないと思えるのだが、途中まで見ただけだといまいちね……。「なんでもないことに命懸け」がハードボイルドだといわれりゃそれまでなのだけども。
 あとはまあ、ハードボイルドだけに、作品全体に虚無的な空気が濃い。いい話だとは思うけど人を選ぶ、かな。

ALWAYS 続・三丁目の夕日

2009-02-28 20:26:57 | 映画
ALWAYS 続・三丁目の夕日[DVD通常版]

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「ALWAYS 続・三丁目の夕日」監督:山崎貴

 タイトル通り、2005年に公開し大ヒットを生んだ「ALWAYS 三丁目の夕日」の続編。
 東京タワーや特急こだま、ストリップ劇場などの娯楽の場、銭湯や下町の町並みなど、現代の庶民の目から見てもわかりやすい、そしてどこか郷愁を誘うような風景を再現したCGは圧巻で、これだけでも見る価値がある。
 一方、前作でも好評だったストーリー部分は相変わらずの浪花節で、ベタベタのコテコテ。
 去っていったヒロミ(小雪)を思うブンガクこと茶川竜之介(吉岡秀隆)は、相変わらず小説家としては泣かず飛ばずで、淳之介(須賀健太)と2人分の家計すら苦しい。淳之介の実父、川渕(小日向文世)はブンガクの甲斐性のなさを攻め、淳之介を返せというし、同窓会の席では同級生に陰口を叩かれまくりの見下げられまくり、ようやく見つけたヒロミはヒロミでストリップ劇場で金持ちの男に愛想を振りまいてるしと、精神的にもうボロボロ。それでもなんとか持ち直し、一念発起で芥川賞へチャレンジする。
 一方、完全に馴染んだ六子(堀北真希)を交えた鈴木則文(堤真一)率いる鈴木オート一家は、商いに失敗した親戚のわがまま娘・鈴木美加(小池彩夢)に振り回されまくる。
 前作から4ヵ月後、それぞれの見る夕日は果たしてどんな色に染まっているのか……。

 ブンガクの芥川賞挑戦と、鈴木則文の男らしさ、鈴木トモエ(薬師丸ひろ子)の母親ぶり、子供から大人への過渡期にある六子の可憐さ、淳之介の憧憬のまなざし、それぞれのキャラにそれぞれの見せ所があって、しかもそれがいちいち決まっているから本当に気分が良い。前作が好きだった人には文句なしのおすすめ。未見の人は是非前作から見ていただきたい。絶対損はない。

舞妓Haaaan!!!

2009-01-19 17:27:49 | 映画
舞妓Haaaan!!! [DVD]

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「舞妓 Haaaan!!!」監督:水田伸生 脚本:宮藤官九郎

 鬼塚公彦(阿部サダヲ)は、修学旅行の時の出会いから、重度の舞妓フェチになってしまった。好きのあまりホームページを立ち上げ、好きでもないのに京都出身というだけの理由で藤子(柴崎コウ)と付き合うほどに。
 そんな公彦だから、仕事は常に中途半端。すべてを趣味のために捧げ尽くしたために、京都支社へ左遷の憂き目に遭う。
 他の社員なら悲しむべきところを、公彦は大喜び。赴任早々、単独での夢川町突入を試みる。ところが公彦は忘れていた。高級なスーツも分厚い財布も、一見さんお断りの規則の前には歯が立たない。
 なんとか知り合いを見つけなければと目を血走らせる公彦の目に止まったのは、所属会社の社長(伊東史朗)。連れていって欲しければ結果を出せと突き放された公彦は、すさまじい集中力で売り上げを上げ、即座に結果を出す。
 念願かなって店に入れた公彦は、そこでプロ野球選手の内藤貴一郎(堤真一)に遭遇する。かつて公彦のホームページを荒らし、今また目の前で金にものをいわせた傍若無人な遊び方をするライバルの登場に、公彦は嫉妬の炎を燃やす。それこそが、公彦の太く短い人生の始まりだった……。

 ドラマ「ぼくの魔法使い」のコンビが贈る、阿部サダヲ・ザ・ムービー。
 いま最も「濃ゆい」俳優・阿部サダヲが、画面狭しと跳ね回る。「うるさい」とか、「行いがひどすぎる」とか、「なんであんたが幸せになれるの?」なんて感想も、「す、すごいですね。よかったですね……」と上書きしてしまうほど強引に押し出してくる。堤真一の怪演も、柴崎コウの美貌も、京の町並みの楚々としたたたずまいすらも飲み込むような怒濤の勢いに押されっぱなしの2時間だった。
「好き」は強い。「好き」は最強。自分の趣味嗜好を隠しながら生きるなんてなんてもったいない! と思わされた。でもあそこまでごり押しはしたくないけどね……。